土壌汚染対策の環境モニタリングは、土壌汚染の早期発見や影響の評価において重要な役割を果たします。定期的なモニタリングによって、汚染源や汚染の程度を把握し、適切な対策を講じることが可能となります。今回は土壌汚染の環境モニタリングについてご紹介します。

土壌汚染対策の環境モニタリングについて

環境モニタリングとは、土壌汚染の措置等を実施する際の周辺環境への影響を把握するための調査です。土壌汚染に遭遇した場合、敷地境界外もしくは安全対策への特定有害物質汚染拡散状況の監視、措置の効果の確認、汚染の除去等の措置施工中の周辺環境及び作業環境の監視のため、地盤中、大気中の特定有害物質のモニタリングを行わなければなりません。また、遭遇した地盤汚染が土壌汚染対策法の適用を受ける場合には、土壌汚染対策法で定められたモニタリングを行います。 

土壌サンプリング

地盤中の特定有害物質の濃度を測定する最も一般的な方法です。特定の深さから土壌試料を採取し、試料中の有害物質の濃度を分析することで行われます。地盤中の濃度は、汚染の程度や広がりをみるために重要です。

地下水環境モニタリング

地下水中の特定有害物質の濃度を評価するために、地下水環境モニタリングが行われます。これは地下水を採取して試料を分析することで、有害物質の濃度を測定します。地下水中の濃度は、地下水の品質や周辺地域への影響を評価するために重要です。

大気環境モニタリング

大気中の特定有害物質の濃度を測定するために、大気モニタリングが行われます。これには大気中の微粒子や揮発性有機化合物(VOC)などの有害物質を測定するためのセンサーやモニタリング装置が使用されます。大気中の濃度は、周辺地域の環境への影響や、作業員の健康と安全のために重要です。

環境モニタリングの目的は3つに分かれます。

①措置範囲内から敷地境界外もしくは保全対象に特定有害物質が達しているかどうかを確認

→特定の土地や敷地内で行われている土壌汚染の調査や対策において、汚染物質が敷地の境界を超えて周辺環境に影響を及ぼしていないかどうかを調査します。 

 

②措置の効果を確認するため地盤中における特定有害物質の挙動を把握

土壌汚染の対策や除去等を行った後、対策の効果を評価するために、地盤中の特定有害物質の挙動を調査します。この作業は、土壌汚染対策の効果を評価し、必要に応じて追加の措置を検討するために重要です。

 

③措置施工中における労働災害発生防止のため、大気中の揮発性有害物質の濃度や特定有害物質が付着する土粒子等の濃度を監視

土壌汚染の措置や除去作業が行われる際に、作業員の健康と安全を保護するために、大気中における有害物質の濃度や土粒子の濃度を定期的に監視し、適切な防護措置を講じることです。この作業は、労働災害や作業員の健康被害を防ぐために重要です。

 

実施時期は土壌汚染に遭遇してすぐの応急処置、土壌汚染の調査段階、土壌汚染の対策段階に行います。

労働災害を防止するための作業環境のモニタリングは、労働安全衛生法を基にモニタリングを行います。特に揮発性の高い物質については大気中の特定有害物質の濃度をモニタリングします。また、土粒子が悲惨しやすい場合は、作業場付近の大気中に含まれる土粒子に付着した特定有害物質の濃度を測定します。

土壌汚染対策の環境モニタリングの流れ

 環境モニタリングの実施にあたっては、特定有害物質の移行特性を考慮し、適切な位置、範囲及び方法について定めます。また、特定有害物質の移行特性は、調査結果及び影響検討結果に基づき決定します。環境モニタリングの流れを下記で見ていきましょう。

①計画

モニタリングを行う適正な位置、範囲及び方法は、特定有害物質の移行特性により異なるため、特定有害物質の修理・濃度、地下水中に達しているか等の存在範囲、地下水の流速、方法がモニタリング計画で重要な要因となってきます。

モニタリング計画は以下の項目が把握出来るように配慮します。

特定有害物質の地盤中、地下水中及び大気中での濃度

土壌の飛散量

地下水の流速・方法 

②地下水のモニタリング範囲および位置

敷地内は汚染の除去等の措置範囲、モニタリング範囲、敷地範囲の3つに分けられます。汚染範囲から一番近いのが措置範囲、その次に近いのがモニタリング範囲、一番遠いのが敷地範囲となります。

モニタリングの範囲、及び位置の目安として、①汚染がほとんど飛散しない・②汚染の飛散が遅い・③汚染の飛散が速い、この3つのケースで分類します。

いずれも影響検討内容は定性的検討、範囲は措置範囲の近傍、位置は地下水の上下流側各1箇所以上となります。

③土壌及び待機のモニタリング範囲及び位置

特定有害物質が地表に分布する場合、まず、土壌が飛散しないように措置を実施します。早期に実施することが困難な場合は、特定有害物質の飛散の有無をモニタリングします。

特に、飛散が予想あるいは確認される場合には、範囲を拡大してモニタリング地点数を増やして飛散の状況を把握します。

また、作業環境の安全性を監視するため、大気中で土粒子とともに飛散する物質及び揮発する物質を対象にモニタリングします。 

④分析方法

モニタリングの方法は、日常モニタリングと定期モニタリングの2つに分けられます。

日常モニタリングは、主に作業者の労働環境の安全性を監視するもので、定期モニタリングは、主に特定有害物質の敷地境界外への拡散及び汚染除去等の措置の効果を確認するものとなります。

分析方法は、特定有害物質の移行特定を以下の3つに分類し適切なものを計画します。 

【定期モニタリング】①地下水を移流・分散する物質(揮発性有機化合物)・・・サンプリングした地下水の公定法による分析等

【定期モニタリング】②地盤中に留っている物質(重金属や農薬)・・・サンプリングした土壌の公定法による分析等

【日常モニタリング】③揮発あるいは飛散する物質(揮発性有機化合物や農薬)・・・サンプリングした待機の感度分光法による分析等 

⑤モニタリング頻度

モニタリング頻度については、影響検討による移行特性を考慮し決定します、施工中においては、週1回~月1回程度を目安とし、施工後においては、地下水の季節変動との関係把握から、定期的に年4回以上測定し、地下水基準を超過しない状態が2間継続することを確認する必要があります。 

⑥土壌汚染対策法の基準値

モニタリングにより得られた値は、地下水基準、土壌溶出量基準、土壌含有量基準を用いて判断します。

土壌溶出量基準及び地下水基準は、土壌に含まれる特定有害物質が溶け出し、地下水等から飲料水にともなって間接摂取して問題ないレベルとしての基準のことです。

土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質を経口又は皮膚より直接接種しても問題ないレベルとしての基準のことです。

濃度が基準値を上回る、あるいは上回る恐れがある場合は、対策を再検討しなければなりません。 

⑦環境モニタリング結果の利用

モニタリング結果から、特定有害物質の濃度の時間変化や分布を把握し、予測される濃度や分布との差異を比較することにより汚染の拡散状況や汚染の除去等の措置の効果、作業環境の安全を確認します。モニタリング結果が予想と大きく異なる場合は、その原因を検討し、必要に応じて影響検討条件の見直しや再調査を行います。また、敷地外への特定有害物質の漏出や作業環境の安全が損なわれる危険のある場合は、新たな対策について検討します。

モニタリング結果として得られる情報は次の2項目です。

①モニタリング結果として得られる特定有害物質の濃度の時間変化

②ある地点における特定有害物質の濃度分布

これらの情報から、特定有害物質の濃度が増大しているか、汚染が拡大しているかを把握するとともに、汚染の除去等の措置の効果や作業環境の安全性を確認します。

最後に

土壌汚染の環境モニタリングは、早期発見と適切な対策によって土壌汚染の影響を最小限に抑えることが出来ます。土壌汚染対策を行う際はしっかりと土壌汚染の措置における環境モニタリングもする業者を探すことが大切です。

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

  

参考URL

土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)

土壌汚染遭遇時対応マニュアル
https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/5221.pdf

パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)