アスベストは国際がん研究機関によって発がん性物質に分類されており、現在では製造や使用が禁止されています。しかし古い建築物には今もアスベストが使われている可能性があり、2050年頃まではアスベスト廃棄物が継続して排出されると想定されています。

アスベスト廃棄物は、法律に基づいて適切に処分しなければなりません。一方で「適切な処理方法がわからない」「処理費用の目安が知りたい」と思っている人もいるでしょう。

本記事ではアスベスト廃棄物の特徴や処理費用を解説します。具体的な処理の手順も紹介しているため、ぜひ役立ててください。

労働安全衛生法等の法令の規制対象となるアスベストは、現在では製造や使用が禁止されています。しかしアスベストが規制される以前に建てられた建物にはアスベストが含まれており、今後そのような建物の解体が必要となります。アスベストを含む建築物等の解体・改修工事を行う場合には、石綿障害予防規則等の法令に基づき、アスベスト含有の有無の事前調査、労働者に対するアスベストばく露防止措置、作業の記録・保存などを行う必要があります。

アスベストを含む建物の解体が必要な場合に是非参考にしてみてください。

アスベストは天然の繊維状珪酸塩鉱物の一種で先述した通り、アスベストは耐熱性・絶縁性・保温性に優れていることから、防音材、断熱材、保温材などの建材として多く使用されてきました。

しかしながら、1970年代にアスベストの健康への被害が報告されるようになりました。アスベストは現在は使用が禁止されているものの、前述したとおり今後解体のピークを迎えます。国土交通省の推計では、アスベストを含む建材が使用されたと考えられる建築物(1956 年(昭和 31 年)から 2006 年(平成 18 年)までに建築された建築物のうち、戸建て住宅や木造の建築物を除いた建築物)は 280 万棟とされており、これらの解体のピークは 2028 年頃とされています。

アスベストのレベルについて

アスベストのレベルは先述した通り、「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」によって分けられています。アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。

アスベストの危険性に関しては以下のようにレベル分けされています。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。建物の機械室、ボイラー室等の天井、壁に、石綿とセメントの合剤を吹き付けて所定の被膜を形成させ、吸音、結露防止(断熱用)として使われていることが多いです。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。ボイラーの本体やその配管、空調のダクト等の保温材として、石綿保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材等を張り付けているなどの使用例があります。

これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む    建材を指します。使用例としては建築物の天井、壁、床などに石綿含有成形板、ビニール床タイル等の貼り付けなどが挙げられます。アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。

ここからはアスベストレベル3における必要な対処や作業について説明していきます。

アスベストレベル3における必要な対処作業

アスベストレベル3の解体工事は以下の手順で行われます。

1.事前調査

2.除去作業準備

3.除去作業

4.事後作業

2022年4月1日の法改正により解体工事の際のアスベスト調査が義務化されました。従来はアスベストが含まれていることを前提に、必要な対策を行い解体工事を実施すれば事前調査は不要でした。しかし、2022年4月より事前調査が実質義務化されました。この法改正以降ではアスベスト含有建材の有無に関わらず事前調査の結果を都道府県に報告することが義務化されました。

ただし、以下の条件下の場合は除外されます。

建築物の解体:対象の床面積の合計が80㎡未満
建築物の改造・補修、工作物の解体・改造・補修: 請負金額の合計が100万円未満
※請負金額には事前調査の費用は含まず、消費税は含む。

では①の事前調査から詳細を説明していきます。

事前調査とは、工事前に建築物等に使用されている建材のアスベスト含有の有無を調査することをいいます。調査はアスベスト含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。

事前調査では「書面調査」と「現地調査」を行う必要があります。

それぞれ費用は「書面調査」が2万円~3万円、「現場調査」が2万円~5万円(どちらも1現場あたり)です。

「図面調査」は図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、アスベストの使用の有無に関係する情報を読み取ります。

「現地調査」は建物の実地検査を指します。アスベスト含有建材が使用されている可能性が比較的高いとされている天井、壁、柱等を中心に全体を目視により検査します。

事前準備作業

事前準備作業は以下の作業を実施する必要があります。

事前準備作業

 

(1)作業計画書等の作成      

石綿作業主任者の選任

作業の方法や順序安全管理体制

粉じんの発散の防止方法

作業者の石綿等の粉塵のばく露を防止する方法

石綿濃度の測定

解体廃棄物等の処理方法

周辺環境対策

 

(2)必要機材・設備の準備 

除去作業に必要な器具の準備

保護具の準備

休憩場所・更衣施設・洗面設備の設置

(3)解体処理工事実施の表示            

 

 

各種掲示の設置

立ち入り禁止区域の設定

周辺環境対策

 

除去作業準備

解体作業前に、以下を準備する必要があります。

除去作業準備

 

(1)養生の実施

床、壁、設備機器への養生

(2)仮設工事の実施

足場等安全設備の設置

(3)設備機器等撤去作業

作業場内の事前清掃の実施

除去の妨げになる、照明器具等を撤去

 

除去作業

実際の除去作業に関しては、以下のことに注意し、作業を実施します。

除去作業

 

(1)アスベスト成形板の湿潤化

浸透しやすい材料(けい酸カルシウム板、岩綿吸音板等)は水又は湿潤剤の噴霧

浸透しにくい材料(Pタイル、スレート板等)は散水しながら除去

 

(2)アスベスト成形板の除去            

 

保護具を着用し原形のままの手ばらしが原則

手ばらしにより除去した成形板は手渡しで運搬

 

事後作業

事後の作業は以下の作業を実施する必要があります。

事後作業

 

(1)施工区画内の清掃          

 

毎日の作業終了時、整理整頓、清掃を実施

清掃中は保護具を着用

(2)養生・仮設物等の撤去

 

床、壁、設備機器への養生撤去

足場等の撤去

(3)除去した建材の搬出      

 

 

安定型最終処分場で埋立処分

マニフェストに「石綿含有産業廃棄物」と記載

(4)後片付け、仕上清掃      

 

 

破片やくずが残らないよう清掃

HEPAフィルタ付き真空掃除機で仕上清掃