地下解体工事は、老朽化した建物の撤去、地下施設のリノベーションなどにおいて不可欠な作業です。地上の解体工事と比べて特有の課題が伴います。今回は地下解体の手順や工法についてご紹介します。
地下解体工事の概要
地下解体工事とは、地下に存在する構造物を撤去する工事のことで、都市部の再開発や老朽化した施設の解体工事において重要な役割を果たします。地上の解体工事と異なり、地下解体は特殊な条件下での作業が求められるため、高度な技術と慎重な計画が必要です。
地下解体は、主に以下のような目的で行われます。
①土地利用の向上や再開発
都市部では地下空間が限られているため、既存の地下構造物を解体し、新しい建物や施設を建設するケースが多く見られます。
②老朽化した施設の撤去
耐用年数を過ぎた地下構造物は、安全性の観点から解体が必要となります。特に、鉄筋コンクリート製の施設では、経年劣化が顕著になることがあります。
③地中環境の修復
地下に埋没されたタンクや汚染された構造物の撤去を通じて、環境汚染を防止または改善することが目的となる場合もあります。
地下解体工事の手順について
地下解体工事をする際は、先に地上部分を解体してから地下構造物に取り掛かるのが一般的です。以下で地下解体工事の基本的な流れをみていきましょう。
①地上部分を解体する
地下解体工事を行う前に、地上部分の解体工事が必要です。地上部分を撤去することで、地下構造物へのアクセスが容易になり、作業スペースが確保されます。
②支保工(しほこう)の設置
地下解体工事において最も重要なのが支保工(しほこう)の設置です。支保工とは、地盤や構造物を支えるために設置する仮設構造物のことです。地下解体工事や掘削作業中に地盤崩壊や周辺建物への影響を防ぐ役割を果たし作業中の安全性を確保する重要な設備です。また、地下解体工事作業中の安全性を確保するだけでなく、周囲の建物や道路への影響を最小限に抑えるための重要な役割を果たします。
③地下部分を解体する
地下解体工事は、まず地下構造物の一部を解体し、内部へのアクセスを確保します。この段階では作業空間を広げるために最小限の解体を行い、安全確認を徹底します。
その後、鉄筋コンクリートや鉄骨で作られた地下構造物の本体を解体します。
④解体工事で出た廃棄物の搬出
地下で発生した廃材や瓦礫は、特設された搬出ルートやシャフトを使用して地上へ運び出されます。この際、資源を分別し、リサイクル可能なものを適切に処理します。
⑤埋め戻しをする
地下解体工事が終わったら、埋め戻しを行います。埋め戻しとは、解体工事などで浄化槽などの地中埋設物を撤去した場合や、井戸や地下室の解体工事を行った場合に生じる空間を埋める作業のことを指します。埋め戻しを行わないと、大きな穴が残り、地盤の不安定化や安全上のリスクが生じます。
地下に存在する空間が埋め戻されずに放置されると、地盤が不安定になり、沈下や崩壊のリスクが高まります。地盤の安定性は、後に建設される建物の安全性にも直結します。適切な埋め戻しにより、地盤の安定性を確保し、将来的なトラブルを防ぐことができます。
⑥整地をする
建物の解体後は整地をする必要があります。整地とは、土をならして平坦にするなど、土地や地面をきれいに整えることです。解体工事後の土地は廃棄物、大きな石や砂利などにまみれています。このような不要物を取り除き平らな状態にすることが整地です。
重機で土地に圧力をかけて固めるという転圧作業も行います。不要物を取り除き、土地に何もない状態にした後、重機で均一にして踏み固めて地盤を安定させます。
解体後の土地の二次活用を考えている場合は整地までした方が後に役立ちます。
⑦立ち会い
整地後、現場を解体工事施主が確認し了承が出て、なおかつ近隣への解体工事完了の挨拶等が全て終わると解体工事完了となります。
地下解体工事の課題と特徴
地下解体には地上の解体工事と比べて特有の課題と特徴があります。
・制約された作業空間
・地盤や周辺施設への影響
・地下水や地質条件の影響
地下構造物は周囲を地盤で囲まれているため、作業スペースが限られます。重機の搬入や解体物の搬出も困難であり、効率的な動線の確保が重要です。
また、地下解体工事では、地盤の安定性を保ちながら作業を進める必要があります。周囲の建物や地下インフラに損傷を与えないよう、慎重な設計や振動の抑制が求められます。
さらに、地下水位が高い地域や不安定な地盤では、解体中に土砂崩れや浸水のリスクが伴います。これに対応するため、ポンプによる排水や地盤改良が行われることがあります。
地下解体工事を安全かつ効率的に進めるためには
地下解体工事を安全かつ効率的に進めるためには、以下の重要な要素が求められます。
①事前調査と計画
解体工事対象となる地下構造物や周辺環境について詳細な調査を行い、地質データや地下水の状況、構造物の設計図を確認します。この情報をもとに、適切な解体工法や重機の選定、廃材の搬出計画を策定します。また、法規制や環境基準を遵守するため、必要な許可の取得も欠かせません。
②安全対策
地下解体工事では、地盤崩壊や周辺建物への影響を防ぐため、支保工を適切に設置します。
また、地下空間は換気が不十分なため、有毒ガスや粉塵の発生を抑える対策が必要です。さらに、作業員の安全確保のため緊急避難ルートや安全教育の徹底も重要です。
③適切な工法の選択
対象構造物の材質や規模に応じて、最適な解体方法を選びます。例えば鉄筋コンクリートにはダイヤモンドワイヤーや油圧クラッシャーを使用し、振動や騒音を抑えます。狭小空間では分割解体工法や小型重機が効率的です。
地下解体工事の工法について
地下解体工事の工法は、解体工事対象の構造物や周辺環境、作業スペースなどの条件に応じて変わってきます。以下でみていきましょう。
①手作業による解体
手作業による解体は、重機が入れない場所や、振動や騒音を極力抑える必要がある場合に有効です。ハンマー、チゼル、電動ハンマードリルなど小型の工具が使用されます。
②重機による解体
重機を使用した解体は、地下構造物が比較的大きく、スペースに余裕がある場合に採用されます。油圧ショベル、ブレーカー、クラッシャー、ダイヤモンドワイヤー切断機などが用いられます。構造物の一部を順次破壊しながら、解体物を搬出します。
③カッター工法
カッター工法は、鉄筋コンクリートや鉄骨構造物を正確に切り離すための方法です。ダイヤモンドワイヤーソーを使用してコンクリートや鉄筋を切断する、ダイヤモンドワイヤー工法、コンクリート構造物の一部を取り外す際に使用されるコアドリル工法などがあります。
④爆破解体工法
爆破解体工法は、大規模な地下構造物を効率的に解体する方法です。ただし、都市部や周辺に建物がある場合にはほとんど採用されません。爆薬を使用して構造物を一気に崩壊させる工法で、広範囲を短時間で解体することができます。
⑤ジャッキダウン工法
ジャッキダウン工法は、地下構造物を下部から徐々に解体する特殊な工法です。地下構造物の天井部分を支保工で支えながら、下部から順次解体を進めます。構造物の高さを調整しながら作業を行うため、安全性が高いのが特徴です。
⑥分解解体工法
分解解体工法は、地下構造物を小さなブロック単位に分割して解体する方法です。狭い空間での解体作業に適しており、重機の使用が難しい場合にも対応可能です。構造物を切断して小型化し、搬出しやすくします。切断にはダイヤモンドワイヤーやコアドリルが利用されます。
最後に
地下解体工事では、対象物の材質や規模、周辺環境、予算などに応じて最適な工法を選択することが重要です。また、複数の工法を組み合わせることで、作業効率を最大化し、安全性を高めることができます。
株式会社エコ・テックの解体工事について
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