人体にも悪影響
アスベストの特性と有害性
アスベストは、そこにあること自体が問題ではなく、加工や劣化による損傷などにより飛散され、吸い込むことが健康被害に繋がります。研磨機や切断機などを使用する環境下や、建築資材の劣化、吹き付けアスベストの除去作業において建築資材を撤去したり加工したりする際に、空気中に飛散したアスベストの粉塵を人が吸引してしまう恐れがあるのです。
アスベストは天然に産する蛇紋石(じゃもんせき)や角閃石(かくせんせき)が、綿のような柔らかな繊維状に変形したもので、繊維1本の直径は、髪の毛5000分の1にあたる0.02から0.036マイクロメートルと非常に微細です。肉眼では見えないうえ拡散しやすく、また人体に吸引されても分解されない特性を持ちます。そのため、アスベストの細かな繊維を吸い込むと、肺の一番奥の肺胞まで入り込み、体内に滞留してしまいます。そうして十年後から数十年後に、肺がんや、肺を囲む膜などに腫瘍ができる悪性中皮腫などを起こす可能性をはらんでいるのです。
建築物解体によるアスベスト飛散問題
耐火性や防音性、絶縁性など多様な機能を有し、1995年頃から主に建設材として使われ始めたアスベストは、1960年代の高度成長期には鉄骨材建築物の軽量耐火皮膜材として多く使用されました。
日本ではバブル経済に向かう建設ラッシュを背景に、国際的に有害性が指摘された1970年以降も輸入は継続され、1930年から2004年までの75年間での総輸入量は約1000万トンとも言われています。
ビルや公共施設、集合住宅などの断熱材や防音材として、私たちの身近なところでアスベストは既に幅広く使用されています。2020年から20年間は、ちょうど建替え時期のピークにさしかかり、大量のアスベストが排出による健康被害者が懸念されています。
アスベストが引き起こす主な病気
アスベストを吸引することで発生する病気には、主に以下のものがあります。
アスベスト肺
空気中に浮遊する粒子(粉塵など)を肺に吸入することで生じる肺線維症(じん肺)の中で、アスベストの曝露によって起きる病気。アスベスト粉塵を10年以上吸引した労働者に起こると言われ、潜伏期間は15年~20年。
肺がん
肺細胞に取り込まれたアスベスト繊維の物理的刺激により発生するとされています。アスベスト曝露から発症までに15年~40年の潜伏期間。曝露量が多いほど発生が多いとされます。
悪性中皮腫
肺を包む胸膜、肝臓や胃などの臓器、心臓および大血管の起始部を覆う膜などにできる悪性の腫瘍。潜伏期間は20年~50年。