土壌汚染対策法によって土地の所有者等に義務づけられた土壌汚染状況調査は、指定調査機関に実施させなければなりません。また、指定調査機関による調査を必要としない場合や、自主的な調査であっても、指定調査機関が請け負う場合が多くなっています。
今回は、指定調査機関の趣旨や役割、土壌調査が必要になるケース、土壌調査全体の流れについて解説いたします。
指定調査機関の趣旨・役割
土壌汚染状況調査は、その後の土壌汚染対策の方針を決定する重要なものですが、試料の採取地点の選定や、試料の採取方法などにより結果が大きく作用されます。土壌汚染状況調査等を行う際に、不適切な調査を防止し、調査結果の信頼性を確保するため、技術的能力等を有し環境大臣によって指定された指定調査機関が調査を行うことが、土壌汚染対策法によって定められています(1)。同法によって、指定調査機関は、五年ごとに指定の更新を受けなければならないことや、技術管理者を選任しなければならないことが規定されています。また、指定調査機関は、土壌汚染状況調査等を行うことを求められた時には、正当な理由がある場合を除いて、遅滞なく調査を行う義務があり、個々の指定調査機関はそれぞれ業務規程を定め、環境大臣に届け出る必要があります。業務規程で定めるべき事項は、「土壌汚染対策法に基づく指定調査機関及び指定支援法人に関する省令」の第十九条によって定められています(2)。
土壌調査が必要になるケース
土壌調査には、法的な義務による調査(法定調査)と、自主調査(任意調査)の2種類があります。土壌汚染の調査義務は、平成14年5月に成立・公布された土壌汚染対策法、または各都道府県が定める条例に該当する場合に生じます。法的な義務に因らない自主調査の主な目的には、土地を担保に金融機関から融資を受けるための正確な担保価格の把握、土地売買の取引成立後のトラブル防止、土地の買い手への安全性のアピール等が挙げられます。特定有害物質を取り扱わない工場や、特定施設には含まれないガソリンスタンド等の跡地を売却する際など、取引成立後に訴訟トラブルになるリスクを無くすため、自主調査を行うケースがあります。
法定調査について、土壌汚染対策法によって調査義務が生じる条件には、以下の三つがあります。法的に義務付けられているこれらの調査は、対応する土壌汚染対策法の条文によって、それぞれ
①3条調査
②4条調査
③5条調査
とも呼ばれます。これらの場合には、原則的に土地の所有者が、必要な届出を提出し、土壌汚染の調査を指定調査機関に依頼し、その調査結果を都道府県知事に報告する義務を負います。
① 特定有害物質を製造、使用又は処理する施設の使用が廃止された場合(3条)
② 一定規模以上の土地の形質の変更の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認める場合(4条)
③ 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合(5条)
3条調査は、水質汚濁防止法第二条第二項で定義されている有害物質使用特定施設(以下、特定施設と表記)を廃止する際に、行う必要がある調査です。特定施設とは、「特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理するもの(土壌汚染対策法第三条第一項)」を指します。特定有害物質は、水質汚濁防止法第二条第二項第一号で「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質」とされており、土壌汚染対策法施行令によって鉛、砒素、トリクロロエチレン等、26種類の物質が特定有害物質として指定されています(土壌汚染対策法施行令第1条)。特定有害物質は、揮発性有機化合物の第一種特定有害物質、重金属等の第二種特定有害物質、農薬・PCB等の第三種特定有害物質の3種類に分類されています(3)。
3000㎡以上の土地の形質の変更をする際には、各都道府県知事への届出が必要になりますが、その際に土壌汚染のおそれがあると認められた場合には、4条調査が義務付けられます。ここでの「土地の形質の変更」とは、アスファルトの敷設・引きはがし、道路工事、抜根、土壌の仮置き、建物解体に伴う基礎土壌の掘削、整地、埋蔵文化財調査、くい打ち等を指します(4)。
5条調査は、土壌汚染対策法3条および4条の規定にはあてはまらないが、「土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合」に行われます。対象となる土地の監督行政庁が発する調査命令によって、調査の範囲、特定有害物質の種類、報告の期限が定められ、人の健康被害が生ずるのを防ぐために調査および除去等の措置がとられます。
土壌調査の流れ
土壌調査の手順は、土壌汚染対策法施行規則(平成14年)によって定められており、自主調査の場合でもそれらに準拠した方法で進められることが一般的です(5)。土壌調査から土壌汚染対策工事の施工までの流れは、しばしば以下の3つのフェーズに分けて説明されます。
- フェーズ1:地歴調査
- フェーズ2:状況調査・詳細調査
- フェーズ3:土壌汚染対策
フェーズ1の地歴調査は、住宅地図や航空写真、古地図、登記簿謄本、関連法令の届出、地質・地下水の特質等から対象地の利用履歴を調べ、現地踏査やヒアリング調査と合わせて土壌汚染のリスクを判定する調査となります。土壌汚染対策法施行規則(第三条の二)では、この地歴調査により以下の3分類を行うものとしています。その3分類とは、[1]土壌汚染が存在するおそれがないと認められる土地、[2]土壌汚染が存在するおそれが少ないと認められる土地、[3]土壌汚染が存在するおそれがあると認められる土地になります。
フェーズ2の状況調査・詳細調査は、実際に対象となる土地の土壌を採取、分析し、土壌汚染の有無や、汚染の分布範囲を測定する調査です。フェーズ2は、状況調査と詳細調査の二段階に分けられます。
状況調査では、土壌ガス調査及び表層土壌調査によって、表層から50cmまでの土壌試料と、土壌中のガスを採取し、特定有害物質の有無や、平面的な汚染の分布を調べます。土壌汚染対策法では、特定有害物質は大きく3つに分類されており、それぞれの種類によって、最適な調査方法が異なります。
状況調査の結果、特定有害物質の濃度が基準値を満たしていれば、土壌汚染のない土地と判断することができますが、基準値を超える濃度で特定有害物質が検出された場合には、汚染の深度を測定するため、該当する区画で詳細調査(ボーリング調査)を実施します。ボーリング調査の範囲は原則10mまでとされており、一般的には、1.0m毎に土壌を分析し、2深度連続して基準を満たした地点が、対策深度となります。また、必要に応じて地下水の流れや水質についても調査する場合があります。これらの状況調査・詳細調査を行うことで、特定汚染物質の基準超過項目や、汚染土壌の平面分布と深度(ボリューム)が明確になります。
土壌汚染の範囲と深度を詳細に調査した後、フェーズ3に当たる土壌汚染対策工事に入ります。原位置浄化や掘削除去など、さまざまな手法があり、予算や作業環境、特定有害物質の種類によって最適な手法は異なります。土壌汚染対策工事における汚染の除去等の工程は、汚染が確認された部分の土壌(基準不適合土壌)を掘削して区域外の汚染土壌処理施設で処理する「区域外処理」と、基準不適合土壌の掘削の有無に関わらず区域内で浄化等の処理や封じ込め等の措置を行う「区域内措置」の2つに区分されます。また、後者の「区域内措置」はさらに、基準不適合土壌の掘削を行い、かつ汚染土壌処理施設への搬出を行わない「オンサイト措置」と、基準不適合土壌の掘削を行わず原位置で汚染の除去をする「原位置措置」に分けられます(6)。
株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。