解体工事業を営むためには、建設業法に基づく建設業の許可(解体工事業)または建設工事に係る資材の再資源化に関する法律(通称:建設リサイクル法、建設資材リサイクル法)に基づく解体工事業の登録のいずれかが必要となります。どちらが必要であるかは、工事請負金額によって決まります。工事請負金額が500万円未満の解体工事のみであれば、解体工事業の登録あるいは「土木」または「建築一式」の建設業許可があれば行うことができます。
建設業許可との違い
平成26年6月4日に、「建設業法等の一部を改正する法律(改正建設業法)」が公布され、それまで「とび・土工・コンクリート工事業」に含まれていた「解体工事業」が29種目の建設業許可の業種区分として新設されたため、現在では工事請負金額が500万円以上の解体工事を行うためには、建設業許可(「解体工事」)が必要となります。
建設業許可を受けるためには、
①経営業務の管理責任者の要件
②専任の技術者の配置
③財産的要件
④欠格要件等に該当しないこと
⑤建設業の営業を行う事務所を有すること
の5つの要件を満たす必要があります(1)。
解体工事業登録制度の設立の背景
建設業法の改正により、それまで28種類だった建築業許可業種に、解体工事業が新設され、29種目の許可業種となりました(建設業法第二条第一項の別表第一を参照)。改正前は、解体工事は「とび・土工・コンクリート工事業」に含まれており、とび・土工・コンクリート工事業の建設業許可を受けていれば解体工事を行うことができました。しかし、近年は高度経済成長期に造られた建築物や工作物等の老朽化が進行しており、解体工事現場における公衆災害・労働災害の増加や、防災面および環境面への配慮の必要性の高まりなどを背景として、平成26年6月4日公布の建設業法改正(平成28年6月1日施行)により、解体工事業は新たな建設業許可区分のひとつとして独立しました。この解体工事業の新設は、疎漏工事や公衆災害・労働災害を防止するとともに、専門工事業の地位の安定・技術の向上を目的としています(2)。解体工事は、現場の安全管理や建設産業廃棄物の処理、建築資材のリサイクル方法についての高度に専門的な知識・技術が要求されるということで、今回の業種区分や技術者資格の見直しに繋がりました。
解体工事業登録の要件
解体工事業の登録を受けるためには、必要な要件は2つあります。
①技術管理者の設置
②登録の拒否事由(欠格要件)に該当しないこと
です。また、解体工事業の登録は、解体工事を施工する都道府県ごとに申請が必要です。
解体工事業の登録のために配置が必要な技術管理者は、解体工事現場の安全管理、廃棄物処理や建設資材のリサイクルについての監督・指導をする役割を持ちます。技術管理者であると認められるためには、国土交通省令で定める要件を満たしている必要があります。技術管理者の登録要件は、都道府県によって異なる場合があるので、注意が必要です。以下では、大阪府住宅まちづくり部建築振興課の『解体工事業登録申請等の手引き』(令和3年10月改訂版)の内容に沿って、技術管理者の要件について説明していきます(3)。
技術管理者の登録には、
①必要な実務経験年数を満たすこと、もしくは
②特定の資格を持っていること、
のいずれかが必要になります。①は建設リサイクル法の第三十一条、②は同朋の第二十四条で定められています(4)。
技術管理者に必要な実務経験年数については、解体工事の実務経験でなければいけません。実務経験の証明者が証明期間に建設業許可業者(木工事業、建築工事業、解体工事業)または解体工事業登録業者でなければ、実務経験として認められないため、注意が必要です。また、技術管理者となるために必要な実務経験年数は、学歴によって異なりますが、公益社団法人全国解体工事業団体連合会が実施する「解体工事施工技術講習」を受講した者は必要な実務経験期間がそれぞれ1年短縮されます。
また、実務経験が以上の基準を満たしていなくても、国が定めた特定の資格を保有している場合、技術管理者を務めることができます。保有者が技術管理者として認められる資格とは、
①建設業法による技術検定
②技術士法による第二次試験(技術士「建設部門」)
③建築士法による建築士(一級建築士、二級建築士)
④職業能力開発促進法による技術検定
⑤国道交通大臣が指定する試験(解体工事施工技士試験合格者)
です。
以上に述べた要件を満たす技術管理者を配置していても、「建設工事に係る資材の再資源化に関する法律」第二十四条の登録の拒否事由(欠格要件)に該当してしまうと、解体工事業の登録を行うことができません。解体工事業登録の拒否事由は、以下の9つになります。
①解体工事業の登録が取り消され、その処分のあった日から二年を経過しない者
②解体工事業の登録を取り消された法人において、その処分日の前30日以内に役員であり、その法人の処分日から二年を経過していない者
③解体工事業の停止を命ぜられ、その停止の期間を経過していない者
④建設リサイクル法に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行が終わってから二年を経過しない者
⑤暴力団員である、もしくは暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
⑥事業者が未成年者である、もしくはその法定代理人が拒否事由に該当する者
⑦登録を申請する法人において、役員のうちに上記の拒否事由に該当する者があるもの
⑧技術管理者を選任していないも者
⑨暴力団員等の反社会的勢力がその事業活動を支配する者
です。以上の拒否事由のいずれかに該当する場合は、解体工事業の登録を行うことはできません。
解体工事業登録手続きについて
解体工事業を営むためには、解体工事を行おうとする区域ごとに、その区域の都道府県知事の登録を受ける必要があります。解体工事業の登録先は、各都道府県で、大阪府の登録手数料は新規の場合で33,000円、更新の場合で26,000円となります。必要な提出書類は
①解体工事業申請書(規則様式第一号)
②誓約書(規則様式第二号)
③技術管理者の資格要件を確認する書類(実務経験証明書、卒業証書・資格証明書・解体工事施工技術講習修了証の写し等)
④登録申請者の調書(規則様式第四号)
⑤申請者の所在確認書類(商業登記簿謄本、住民票)
⑥技術管理者の在籍を確認する書類(技術管理者の健康保険証、雇用保険証、給与台帳等)
⑦営業所の所在地を確認する書類(賃貸契約書の写し、建物登記簿謄本等)
⑧本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
です。また、更新申請の場合は、嘉一ア工事業登録通知書の原本または写しも必要です。これに加えて、申請者が未成年者の場合には法定代理人の証明書の写しおよび住民票、代理人が申請する場合には委任状の原本が必要となります。
解体工事業の登録にかかる期間は、申請書の受理から4~5週間程度です。登録の有効期間は5年間で、登録を更新するためには有効期間満了の30日前までに更新手続きを行う必要があります。更新をしないまま有効期間が終わってしまうと無登録状態になるため、その状態で解体工事業を行った場合は「一年以下の懲役または五十万円以下の罰金刑」が課され、以後二年間解体工事業の登録をすることができなくなってしまうため、注意が必要です。また、商号、所在地、役員、技術管理者等に変更があった場合や、法人の合併、破産等によって廃業した場合、その日から30日以内に届け出が必要です。ほかに、解体工事業者の登録を受けた後、建設業法に基づく「土木工事業」、「建築工事業」、「解体工事業」の許可を受けた場合は、許可後30日以内に都道府県に通知書を提出しなければなりません。