土壌汚染対策法は、土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及び、その汚染による人の健康にかかわる被害の防止に関する措置を定めること等によって、土壌汚染対策の実施を図り、国民の健康を保護することを目的として、平成14年5月に成立し、平成15年2月に施行された法律です。
今回の記事では、土壌汚染対策法の成立の背景・経緯や、その内容について解説いたします。

土壌汚染対策法成立の背景・経緯

土壌汚染とは、土壌が有害物質によって汚染された状態をいいます。土壌汚染には、特定有害物質を取り扱う工場の操業に伴う土壌の汚染や、地下水汚染等の人為的な原因による汚染のほか、自然由来で汚染されているものも含まれます。
土壌が有害物質により汚染されると、その汚染土壌を口や肌から直接摂取したり、有害物質を含んだ地下水を口にすること等による健康被害が生じるおそれがあります。
近年の企業の工場跡地の再開発等に伴って、特定有害物質に指定されている重金属、揮発性有機化合物等による土壌汚染の問題が顕在化し、土壌汚染による人の健康への影響の懸念や対策措置を求める社会的要請が強まったことを受けて、平成12年12月に「土壌環境保全対策の制度の在り方に関する検討会」が設立され、土壌環境保全対策のために必要な制度の在り方について調査・検討が進められ、それを取りまとめ、諮問や審議、答申を経たものをもとに法案が作成され、平成14年に2月に国会へ提出され、同年5月22日に成立、5月29日に公布されました(1)。
土壌汚染対策法が施行され、実際に運用されていくうち、①法律に基づかない土壌汚染の発見の増加、②汚染土壌を掘り出す掘削除去への偏重、③汚染土壌の不適正処理等の問題が明らかとなり、それらの課題を解決するために、土壌調査のきっかけを増やし、健康リスクの考え方をきちんと理解したうえで、汚染土壌の適正処理が行われるようにすることを目的として、平成21年4月に土壌汚染対策法の改正法が成立し、平成22年4月から施行されました。
その後、同法の施行状況の見直しや検討が行われ、土壌汚染に関する適切なリスク管理を推進するため、平成29年5月19日に土壌汚染対策法の一部を改正する法律が公布され、平成30年4月、平成31年4月の二段階に分けて施行されました(2)。

土壌汚染対策法の内容

土壌汚染対策法は、土壌汚染による人々への健康被害を防止するために、土地の土壌汚染を見つけるための調査や、土壌汚染がある土地への措置や適切な管理方法について定めた法律です。
土壌汚染対策法の内容には、土壌汚染の状況を把握するための調査の対象となる土地についての規定(同法第三条から第五条)や、汚染の除去等の措置が必要な区域(要措置区域)の指定等の区域の指定等についての規定(同法第六条から第十五条)、汚染土壌の搬出や処理についての規定(第十六条から第二十八条)、指定調査機関についての規定(第二十九条から第四十三条)、指定支援法人についての規定(第四十四条から第五十三条)等が含まれています。

調査について(第三条から第五条)

土壌汚染対策法によって調査義務が生じる条件には、以下の三つがあります。法的に義務付けられているこれらの調査は、対応する土壌汚染対策法の条文によって、それぞれ①3条調査、②4条調査、③5条調査とも呼ばれます。これらの場合には、原則的に土地の所有者が、必要な届出を提出し、土壌汚染の調査を依頼し、その調査結果を都道府県知事に報告する義務を負います。

① 特定有害物質を製造、使用又は処理する施設の使用が廃止された場合(3条)
② 一定規模以上の土地の形質の変更の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認める場合(4条)
③ 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合(5条)(1)

3条調査は、水質汚濁防止法第二条第二項で定義されている有害物質使用特定施設(以下、特定施設と表記)を廃止する際に、行う必要がある調査です。特定施設とは、「特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理するもの(土壌汚染対策法第三条第一項)」を指します。特定有害物質は、水質汚濁防止法第二条第二項第一号で「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質」とされており、土壌汚染対策法施行令によって鉛、砒素、トリクロロエチレン等、26種類の物質が特定有害物質として指定されています(土壌汚染対策法施行令第1条)。特定有害物質は、揮発性有機化合物の第一種特定有害物質、重金属等の第二種特定有害物質、農薬・PCB等の第三種特定有害物質の3種類に分類されています(4)。
3000㎡以上の土地の形質の変更をする際には、各都道府県知事への届出が必要になりますが、その際に土壌汚染のおそれがあると認められた場合には、4条調査が義務付けられます。ここでの「土地の形質の変更」とは、アスファルトの敷設・引きはがし、道路工事、抜根、土壌の仮置き、建物解体に伴う基礎土壌の掘削、整地、埋蔵文化財調査、くい打ち等を指します(5)。
5条調査は、土壌汚染対策法3条および4条の規定にはあてはまらないが、「土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合」に行われます。対象となる土地の監督行政庁が発する調査命令によって、調査の範囲、特定有害物質の種類、報告の期限が定められ、人の健康被害が生ずるのを防ぐために調査および除去等の措置がとられます。
汚染の除去等の具体的な方法については、土壌汚染対策法施行規則の別表第六および別表第七に詳しく規定されています(6)。

区域の指定等について(第六条から第十五条)

土壌汚染対策法は、国民の健康を保護するために作られた法律ですが、土壌汚染があっても、それがただちに人々の健康に影響を及ぼすわけではありません。このような観点から、土壌汚染が存在することそれ自体ではなく、汚染土壌に含まれる有害物質を人々が摂取してしまう経路(摂取経路)が存在することが問題となります。土壌汚染対策法では、土壌汚染による健康リスクは、①口や肌からの直接摂取と、②地下水等経由の摂取リスクの二つに分けて考えられており、これらの健康リスクをしっかりと管理するため、直接摂取の防止の観点から9種類の特定有害物質についての土壌含有量基準が、地下水等経由の摂取防止の観点からすべての特定有害物質についての土壌溶出量基準が設定されています(7)。
以上の健康リスクの考え方を踏まえて、土壌調査の結果、基準量を超える汚染が見つかった場合、都道府県知事等は健康被害のおそれの有無に応じて、その土地を要措置区域または形質変更時要届出区域に指定します。土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生じるおそれがあると認められる場合、その土地は要措置区域に指定されます(土壌汚染対策法第六条)。要措置区域に指定された場合、土地の所有者等は、汚染除去等計画を作成し、都道府県知事等の確認を受けたのちにその計画に従った措置を実施し、報告を行う義務が生じ(同法第七条)、また原則として土地の形質の変更は禁止されます(第九条)。
土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域であると都道府県知事等によって認められた場合には、その土地は形質変更時届出区域に指定(第十一条)され、土地の形質の変更をしようとする際に、都道府県知事等に届出を行う義務を負います(第十二条)。
なお、汚染の除去が行われた場合には、要措置区域または形質変更時要届出区域の指定は解除されます。

株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。