土壌汚染対策には、様々な手法が存在しますが。その中でも「原位置封じ込め」という手法は特定の状況下で非常に有効です。今回は、土壌汚染対策の原位置封じ込めについてご紹介します。

原位置封じ込めについて

原位置封じ込めは、汚染された土壌をその場で処理する方法の一つです。原位置封じ込めでは、汚染物質を現場から移動させることなく、土壌や地下水への影響を最小限に抑えることを目的とします。目標土壌溶出量を超える汚染状態にある土壌に対して、側面は工事により構築する遮水壁で、底面は遮水性の高い地層(不透水層:透水係数1×10-7m/秒以下でかつ厚さが5m以上、又はこれと同等以上の遮水の効力を有する地層)で、また表面部は舗装措置と同等の構造の覆いで封じ込め、目標土壌溶出量を超える汚染状態にある土壌と地下水汚染の拡散を防止する措置です。

側面も底面部と同等の遮水性が求められており、上部も雨水の浸水を防ぐため、厚さ10cm以上のコンクリート又は厚さ3cm以上のアスファルト層で覆う必要があります。

第二溶出量基準に不適合な土壌に対して、この措置を用いることはできないため、第二溶出量基準に適合するように浄化又は不溶化等の処理を行う必要があります。

原位置封じ込めの完了後は、要措置区域の指定は解除され、改めて形質変更時要届出区域の指定を受けます。原位置封じ込めは、基準不適合土壌が残ることから、措置の完了後も封じ込め効果が適切に維持される必要があります。

封じ込め後は、封じ込め機能を確認するため自然地下水の流向を事前に把握し、封じ込め範囲の下流側において一つ以上の観測井を設け、最低2年間、年間4回以上の地下水の水質の測定を行い、目標地下水濃度を超えない汚染状態にあることを報告する義務があります。

また、内部の地下水位が上昇しないことを確認するため、封じ込め範囲の内部1箇所以上に観測井を設置し、封じ込めの機能が保たれているかどうかを上記と同様の頻度で監視する必要があります。

2年間にわたって上記2点が確認されれば、当該範囲は形質変更時要届出区域となりますが、その後も同様に封じ込めの効果が維持されていることを管理することが望ましく、万が一、遮水壁等の品質の劣化により問題が生ずれば、直ちに修復するか、又は他の措置を講ずる必要があります。

区域内措置優良化ガイドブック(改訂版)| 環境省
(https://www.env.go.jp/content/900539568.pdf)より

原位置封じ込めの対象物質

原位置封じ込めは、すべての汚染物質に適応可能です。なお、第一種特定有害物質と第二種特定有害物質において、第二溶出量基準に適合しない場合は、不溶化等の処理を行い第二溶出量基準に適合させた上で行う必要があります。また、第三種特定有害物質については、第二溶出量基準に不適合の場合は適用できません。

第二溶出量基準に適合させたことを確認する方法

第二溶出量基準に適合しない汚染状態にある土壌には、単独の措置として原位置封じ込めを用いることができません。第二溶出量基準に適合しない汚染状態にある土壌をオンサイト処理や原位置処理等により第二溶出量基準に適合させたことを確認する方法を以下でみていきましょう。

①詳細調査と同等以上の調査により確認する方法

第二溶出量基準に適合しない汚染状態にある土壌のある範囲について、深さ1mごとの土壌を採取し、当該土壌に含まれる特定有害物質の量を測定します。

②掘削除去を行った範囲及び該当土壌を処理したことを確認する方法

第二溶出量基準に適合しない汚染状態にある土壌の掘削範囲、当該汚染土壌の搬出、処理方法等を記録し、工事完了報告書に記載します。

③オンサイト処理された土壌を埋め戻す場合に確認する方法

100 m3以下ごとに、第一種特定有害物質についてはその中の1点から採取した土壌について、第二種及び第三種特定有害物質については5点から採取した土壌を同じ重量で混合し、当該土壌に含まれる特定有害物質の涼を測定します。

原位置封じ込めのメリットとデメリット

原位置封じ込めには、多くのメリットがありますが、一方で課題も存在します。それぞれの特性を理解することが適切な措置を講じるために重要です。

メリット

①コスト効率

汚染物質を現場から移動させる必要がないため、運搬や処分にかかるコストを削減することができます。また、封じ込め施設の建設費用も、汚染物質を取り除く方法に比べて低く抑えることができます。

②時間短縮

原位置封じ込めは、現場で即座に処理が可能であり、他の手法に比べて短期間での対策が可能です。これにより早急な環境リスクの軽減が期待できます。 

③環境負荷の低減

土壌の掘削や搬出を行わないため、周囲の生態系に対する影響を最小限に抑えることができます。また、封じ込みに使用される材料も環境に配慮したものを選ぶことで、長期的な環境保護が可能です。

デメリット

①長期的な維持管理の必要性

封じ込め手法は、汚染物質を完全に除去するものではないため、長期にわたって封じ込めの状態を維持するための管理が必要です。バリアの劣化や漏出リスクを定期的に監視する必要があります。 

②効果の不確実性

封じ込めの効果は、土壌や地下水の条件に大きく依存します。そのため、封じ込めが長期的に有効であるかどうかを事前に評価することが難しい場合があります。

原位置封じ込めにおける側面の遮水壁の施工方法

側面の遮水壁については、鋼製矢板工法、地中連続壁工法、ソイルセメント固化壁工法、薬液注入工法、高圧噴射撹拌工法等様々な工事方法があります。それぞれどのような工事方法かみていきましょう。

鋼製矢板工法

鋼製矢板工法は、鋼製の板(矢板)を地中に打ち込むことで、土壌を囲い込んで遮水壁を構築します。鋼製矢板は強度が高く、地盤をしっかりと支える能力があり、特に軟弱地盤や水位の高い地域で効果的です。矢板は地盤中で連続的に結合され、水や汚染物質の移動を防ぐためのバリアになります。鋼製矢板工法は、比較的早く施工が可能であり、堅固な遮水壁を構築することができます。

地中連続壁工法

地中連続壁工法は、地中に連続したコンクリート壁を構築する工法です。まず地中に溝を堀り、その中に鉄筋を配置し、コンクリートを流し込んで壁を形成します。壁は地盤に連続して構築されるため、高い遮水性と強度を持ち、特に深い地下や高圧地下水が存在する場所で効果を発揮します。

ソイルセメント固化壁工法

ソイルセメント固化壁工法は、地盤の土壌とセメントを混合して固化させ、連続した遮水壁を地中に形成する工法です。この方法では、まず掘削した地盤にセメントを混ぜ込み、機会を使って土壌を撹拌しながら固化させます。固化させた土壌は、コンクリートに似た強度と遮水性を持ち、汚染物質や地下水の移動を効果的に封じ込めます。ソイルセメント固化壁工法は、施工が比較的安易で、コストも他の工法に比べて低いため広く利用されています。

薬液注入工法

薬液注入工法は、地盤に薬液を注入して土壌を固化・改良する方法です。薬液注入工法では、地中にドリルで穴を堀り、そこに薬液(通常はセメント系の薬液や化学薬品)を注入します。薬液が土壌と反応することで、地盤が固化され、遮水性や強度が向上します。特に複雑な地盤条件や狭い場所で効果的です。薬液注入工法は、施工が柔軟であり、必要に応じて特定のエリアだけを処理できます。

高圧噴射撹拌工法

高圧噴射撹拌工法は、地中の土壌を高圧で噴射されるセメント系スラリーと混合し、固化することで強固な地盤や遮水壁を形成する工法です。高圧噴射撹拌工法では、特殊な機械を用いて地中にドリルを挿入し、高圧でスラリーを噴射しながら土壌を撹拌します。これにより、土壌とスラリーが均一に混ざり合い、硬化後には高い強度と遮水性を持つ改良地盤が形成されます。高圧噴射撹拌工法は、地下水が高い地域や、深い地中での施工に適しており、耐久性と安全性が求められる汚染封じ込め対策として広く利用されています。

最後に

原位置封じ込めは、土壌汚染対策として非常に有効な手法の一つです。土壌や地下水への影響を最小限に抑えます。土壌汚染対策法による措置の完了確認期間は2年間ですが、その後は同様に地下水の水質の測定を行うなどして、封じ込め効果を維持していくことが望ましいといえます。

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

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