土壌汚染対策法に基づき実施される土壌汚染対策を円滑に推進するため必要な基金として設置された、「土壌汚染対策基金」という土壌汚染対策のための助成金制度があります。今回は、土壌汚染対策基金についてご紹介します。

土壌汚染対策基金とは

 土壌汚染対策基金は、土壌汚染対策法に基づき実施される土壌汚染対策を円滑に推進するため、環境大臣が指定する指定支援法人(公益財団法人日本環境協会)が、支援業務を行うために必要な基金として設置されたものです。

公益財団法人日本環境協会は、昭和52年、当時の環境省の呼びかけにより民学館の協働のもとで設立され、環境問題や環境保全について国民が理解し、国民各層が自発的、積極的に環境保全活動に参加できるよう、環境保全に関する知識の普及啓発を行っています。

土壌汚染対策基金の支援業務の内容は、

①指定区域内の汚染の除去等の措置を講じる者に対する助成

②土壌汚染状況調査又は汚染の除去等の措置についての相談・助言

③土壌汚染が人の健康に及ぼす影響に関する知識の普及等

です。

土壌汚染対策基金の助成金交付のしくみ

 助成金は、政府からの補助と民間からの出えんによる土壌汚染対策基金から拠出されます。

土壌汚染対策基金からの助成額は、「助成事業により都道府県等が助成する額の2/3の額または当該助成の対象となる対策費用の1/2の額のいずれか低い額以内」です。都道府県等の助成金額は予算の状況等により変わります。

仮に対象となる汚染対策工事費が1億円の場合は、基金からは5000万円、都道府県等からは2500万円助成され、土地所有者は2500万円の負担で済むようになります。

助成金の交付を受けるまでの流れは、

①都道府県等へ交付申請

②都道府県等は交付申請を受理・審査し交付が適当と判断した場合、土壌汚染対策基金へ助成金交付申請を行う

③土壌汚染対策基金は都道府県等からの申請を受け、基金運営委員会を開き申請内容の審議を行う

④基金運営委員会の審議で適当と認められると都道府県等に助成金交付の決定を通知する

⑤都道府県等は基金から助成金に都道府県等負担分の助成金を上乗せする形で土地所有者に対して助成する

となります。

土壌汚染対策基金の助成の対象者について

 土壌汚染対策基金の助成の対象者は、土壌汚染対策法第7条第1項の規定により、汚染の除去等の措置を指示された者(当該汚染を生じさせる行為をした者を除く。)であって、当該者の負担能力が低い場合に助成されます。

土壌汚染対策法第7条第1項とは、

「ただし書の確認に係る土地の所有者等は、当該確認に係る土地について、土地の掘削その他の土地の形質の変更をし、又はさせるときは、あらかじめ、環境省令で定めるところにより、当該土地の形質の変更の場所及び着手予定日にその他環境省で定める事項を都道府県知事に届出なければならない。」

を指しています。

土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)より

土壌汚染原因者ではない土地の所有者等が汚染除去等の措置をするにあたり、費用負担が困難な場合、都道府県等を通じて助成金の交付が行われます。

土壌汚染対策基金の助成の対象となる条件について

 土壌汚染対策基金の助成の対象となる条件は、次の3つの条件をすべて満たしていることが必要となります。

①「要措置区域」に指定された土地であること

②「汚染原因者が不明・不存在」であること

③「費用負担能力が低い」こと

以下で詳しくみていきましょう。

①「要措置区域」に指定された土地であること

→土壌汚染状況調査で、土壌の汚染状態が指定基準を超過した場合、「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定されます。助成対象は、その土地が「要措置区域」に指定され、汚染除去等計画の作成及び提出の指示が出されていることが必要となります。

要措置区域とは、土壌汚染状況調査の結果汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がある区域のことです。健康被害が生ずるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要となります。土地の所有者等は、都道府県知事等の指示に係る汚染除去等計画を作成し、確認を受けた汚染除去等計画に従った汚染の除去等の措置を実施し、報告しなければなりません。また、土地の形質変更を原則禁止とされています。

②「汚染原因者が不明・不存在」であること

→助成対象となる要件は、汚染原因者が不明または不存在であることです。汚染原因者が自ら工事主体となって土壌汚染対策措置を行う場合は助成の対象にはなりません。これは、汚染原因者に対して助成を行うことは汚染者負担の原則に反すると考えられるためです。また、汚染原因者である事業会社等が存在する場合も助成の対象とはなりません。

ここでの「不明」とは、汚染原因者が判明しない場合、「不存在」とは、汚染原因者が倒産等により存在しない場合のことを指します。

③「費用負担能力が低い」こと

→交付を受けようとする方の助成の条件は、「負担能力に関する基準の告示」によって下記のように定められています。

個人(事業を行う個人を除く)の場合

①交付を受けようとする年の前年の所得の額が2000万円未満である者

②助成金の交付を受けようとする年の前年の所得の額が、その者が法第7条第1項の規定により指示された汚染の除去等の措置に要する費用に3分の2を乗じた額に2000万円を加えた額未満である者

③助成金の交付を受けようとする年の前年の所得の額が、その者が法第7条第1項の規定により指示された汚染の除去等の措置に要する費用に2を乗じた額未満である者

ここでの「交付を受けようとする年の前年の所得の額」とは、退職所得の金額、一時所得の金額等継続的でない所得の金額がある場合等その額をその者の継続的所得金額とすることが著しく不適当である場合においては、直前3年の所得の額の平均額のことを指します。

事業を行う個人および法人の場合

助成金の交付を受けようとする事業年度の前年事業年度の自己資本、正味財産又は元入金の額が3億円未満である者 

負担能力に関する基準| 環境省
(https://www.env.go.jp/content/900539998.pdf)より

土壌汚染対策基金の助成金交付申請手続きについて

 土壌汚染対策基金の助成金交付は、要措置区域内で汚染の除去等の措置を講ずる者に対して助成を行う都道府県等に対して行うものです。その後の土壌汚染対策基金への申請手続きは都道府県等が行います。そして土壌汚染対策基金では申請内容の審査を行います。そのため、助成を受けようとする土地所有者等は当該対象地の都道府県等へ申請を行うことで手続きを進めることができます。

土地所有者等から都道府県等への交付申請書は、各都道府県等が定める助成金交付要網の様式によるものとなります。申請時は、当該土地のある都道府県等へご照会ください。

土地所有者等の申請者が申請書以外に用意する書類は、主に下記のとおりです。

申請時

土地に関するもの

閉鎖事項全部証明書、賃貸借契約書の写し(必要に応じて)

所得に関するもの

前年の確定申告書の写しまたは源泉徴収票の写し(個人の場合)

前事業年度の貸借対照表(法人の場合)

汚染対策に関するもの

土壌汚染状況調査結果報告書、詳細調査結果報告書(必要に応じて)、汚染除去等計画書、措置に係る業者の費用見積書(数社)

助成金交付決定後

汚染対策に関するもの

工事の進捗報告書(必要に応じて)、 基金事業完了報告書

精算に関するもの

対策業者との契約書の写し、見積書の写し(内訳書を含む)

支払った事業費用の領収書の写し

土壌汚染対策基金助成金交付事業~土壌汚染対策費用の支援について~|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/booklet/files/08/all.pdf)より

最後に

土壌汚染対策基金の助成金についての相談は、公益財団法人日本環境協会土壌環境課が、電話・面談による相談を行っています。助成の対象になるかなど、気になる点があれば、まずは公益財団法人日本環境協会土壌環境課へ電話で問い合わせすることをおすすめします。

株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

参考URL

パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html) 

土壌汚染対策基金による助成制度について| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/kikin_josei.html)

負担能力に関する基準| 環境省
(https://www.env.go.jp/content/900539998.pdf) 

日本環境協会について|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/about/)

 

助成金交付業務|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/dojo/business/grant/)

土壌汚染対策基金助成金交付事業~土壌汚染対策費用の支援について~|公共財団法人日本環境協会
(https://www.jeas.or.jp/dojo/business/promote/booklet/files/08/all.pdf)

土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)