解体工事の現場にはさまざまな掲示物が設置されます。これらの掲示物は、工事現場での安全を確保し、周辺地域の住民や通行人に対して工事の進行状況や注意事項を知らせるものであり、法的に設置が義務付けられている場合もあります。今回は、解体工事の掲示物についてご紹介します。

解体工事の掲示物の目的

解体工事の掲示物は、主に下記の目的で設置されています。 

①安全性の確保

解体工事は非常に危険な作業を伴います。重機の使用や高所での作業、さらには建物自体が不安定な状態にあるため、解体工事業者だけでなく、周辺を通行する一般市民にも危険が及ぶ可能性があります。掲示物は、工事の進行状況や安全上の注意点を周知し、無関係な人物が危険区域に立ち入らないよう警告します。

②近隣住民への周知

解体工事は騒音や振動、粉じんなど、周囲に影響を与える要素が多く含まれます。解体工事の開始日や終了予定日、作業時間帯などを掲示することで、近隣住民が事前に対応策を講じたり、解体工事に関する不安を軽減することができます。

③法的義務

建設業法・建設リサイクル法により、一定規模以上の工事現場では特定の掲示物を設置することが義務付けられています。次項で詳しく説明します。

解体工事における掲示物、看板設置の義務

解体工事における掲示物、看板設置は、建設業法第40条・建設リサイクル法第33条によって義務付けられています。そのため、解体工事を行う際は必ず看板を設置しなければなりません。

建設業法は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、公共の福祉の増進に寄与することを目的として作られた法律です。 

建設業法第40

建設業者は、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負ったものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令の定めるところにより、建設業の名称、一般建設業又は特定建設業の別その他国土交通省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。

建設リサイクル法は、特定の建設資材について、その分別解体等及び再資源化等を促進するための措置を講ずるとともに、解体工事業者について登録制度を実施すること等により、再資源の十分な利用及び廃棄物の減量等を通じて、資源の有効な利用の確保及び廃棄物の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的として作られた法律です。 

建設リサイクル法第33

解体工事業者は、主務省令で定めるところにより、その営業所及び解体工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、商号、名称又は氏名、登録番号その他主務省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。 

法令検索| e-Govポータル (https://laws.e-gov.go.jp/)より

また、石綿(アスベスト)を含む建築物の解体工事については、建設業法、建設リサイクル法の他にも、大気汚染防止法・石綿生涯予防規則により石綿(アスベスト)の事前調査の内容と撤去作業の実施内容を記載した看板の設置、立入禁止の看板の設置が義務付けられています。

解体工事の掲示物、看板設置についての補足

解体工事の掲示物、看板設置は法律で義務付けられていますが、施主の個人情報は掲示しなくて構いません。解体工事の掲示物、看板では解体工事業者の連絡先掲示は必要ですが、施主の個人情報は掲示する必要がありません。そのため、許可なく個人情報が掲示された場合は確認及び各自治体等へ問い合わせをするようにしましょう。

また、石綿(アスベスト)を含まない解体工事でも、「石綿(アスベスト)を使用していない」旨を記載した掲示物、看板の設置が必要となります。

解体工事現場で見られる主な掲示物の種類

解体工事の現場では、さまざまな掲示物が設置されます。一般的な掲示物の種類と内容について下記でみていきましょう。 

①工事のお知らせ看板

「解体工事のお知らせ」などの看板は、工事の内容や日程を知らせるために設置されます。近隣住民や通行人に対して、解体工事がどの程度の期間にわたって行われるのか、さらにどのような工事が行われるのかを伝えるためのものです。この看板には、施工業者名、責任者の名前、連絡先、解体工事の目的、工期などが記載されます。 

②安全標識

安全標識は、解体工事現場の安全を確保するために不可欠な掲示物です。「立入禁止」、「ヘルメット着用」などの標識が一般的です。これらの標識は、無関係な人々が危険区域に入らないよう警告するだけでなく、作業員が安全装備を着用することを促す役割も担っています。 

③災害対策・避難経路表示

万が一の災害や事故に備えて、解体工事現場には避難経路や緊急時の対応を示す掲示物が設置されることが多いです。これにより、解体工事関係者や現場を訪れた第三者が緊急時に適切に対応できるように準備されます。

④法令に基づく掲示物

前述の通り、建設業法・建設リサイクル法等に基づいて、特定の掲示物を設置することが義務付けられています。例えば、建設工事計画書や解体作業計画書の写しが現場に掲示されることがあります。これにより、法的に求められる基準を満たしていることを確認できるだけでなく、作業内容や工事の進行に関する情報も提供されます。

⑤環境に関する掲示物

特に石綿(アスベスト)やポリ塩化ビフェニルなど有害物質が含まれる建物を解体する際は、その取り扱いに関する掲示が必要です。これにより、解体工事関係者や周囲の住民が適切な対応を取ることができ、健康被害を防止することができます。

解体工事掲示物を効果的に設置するためには

解体工事の掲示物の設置は、単に法的義務を満たすだけではなく、周囲の安全を守り、解体工事のスムーズな進行を促進するための重要な要素です。以下で、解体工事の掲示物を効果的に設置するための方法をご紹介します。 

①目立つ場所に設置する

掲示物は、通行人や作業員が容易に見つけられる場所に設置する必要があります。工事現場の入口や主要な通行路沿いに設置し、必要に応じて大きく目立つデザインにすることで、周囲の人々に注意を促すことができます。

②内容を簡潔にわかりやすく表現する

掲示物に記載する情報は、誰が見てもすぐに理解できるように、簡潔かつ明瞭に記述することが重要です。複雑な表現や専門用語は避け、一般的な用語を使用することで、周囲の理解を得ることができます。

③定期的な更新を行う

解体工事の進行状況や予定が変更された場合、掲示物の内容もそれに応じて更新する必要があります。古い情報を掲示したままにしておくと、誤解を招き、トラブルの原因になることがあります。定期的に内容を確認し、必要に応じて修正を行うことが大切です。

④多言語対応を検討する

近年、外国人観光客や労働者が増加している地域では、掲示物を多言語で表示することが推奨されています。英語や中国語など、主要な外国語で情報を提供することで、より多くの人々に安全を確保するためのメッセージが伝わります。

最後に

解体工事の掲示物は、解体工事現場の安全性を確保し、近隣の住民や通行人に情報を提供するために不可欠な要素です。法的義務を満たすだけでなく、周囲への配慮や環境保護の観点からも重要です。正しい設置と適切な管理が行われることで、解体工事のトラブルを未然に防ぎ、円滑に解体工事を進めることができます。

株式会社エコ・テックの解体工事について

株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。 

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【参考URL】

法令検索| e-Govポータル
(https://laws.e-gov.go.jp/)

特定建設作業の規制について| 大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)