土壌汚染の原因となる特定有害物質は、第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)の3種類に分かれています。今回は土壌汚染対策法の特定有害物質の分類についてご紹介します。
土壌汚染による健康リスク
土壌汚染による健康リスクとは、土壌中の有害物質が健康への影響を及ぼすおそれのことです。土壌汚染による健康リスクの程度は、土に含まれる有害物質の有害性の程度と土に含まれる有害物質や地下水に溶け出した有害物質が主に口から人の体に取り込まれる量で決まります。
したがって、土に含まれる有害物質の有害性を評価するだけではなく摂取量を併せて評価することによりリスクを評価し、その結果に基づいて対策を検討することが大切となります。
基準に適合しない土壌が地中に存在しても、土壌中の有害物質が人の体に取り込まれる経路を遮断すれば人の健康に影響を及ぼす健康リスクは生じません。
土壌汚染対策法の基準値について
土壌の特定有害物質による汚染から私たちの健康を維持し環境保全する必要があります。
土壌汚染対策法基準は、特定有害物質による土壌汚染等の有無を判断する基準であり、土壌溶出量基準、土壌含有量基準、地下水基準の3つからなっています。
特定有害物質とは土壌や地下水に含まれることが原因で人の健康に被害を生ずるおそれがある有害物質として土壌汚染対策法施行令で定めた26物質のことです。
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)があり、各物質ごとに土壌溶出量基準や土壌含有量基準等の基準値が設定されています。
①地下水摂取などによるリスクからは土壌溶出量基準が、②直接摂取によるリスクからは土壌含有量基準が定められています。
土壌溶出量基準及び地下水基準は、土壌に含まれる特定有害物質が溶け出し、地下水等から飲料水にともなって間接摂取して問題ないレベルとしての基準です。
土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質を経口又は皮膚より直接接種しても問題ないレベルとしての基準です。
土壌溶出量基準については、すべての特定有害物質に設定されていますが、土壌含有量基準については、特定有害物質のうち貴金属を中心とする9物質についてのみ定められています。
土壌汚染対策法の基準値一覧
土壌汚染対策法の基準値一覧を掲載します。
土壌溶出量基準は、土壌に水を加えた場合に溶出する特定有害物質の量に関する基準で、1リットル中のミリグラム(mg/l)で表します。
土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質の量に関する基準で、1キログラム中のミリグラム(mg/kg)で表します。
地下水基準は、地下水に含まれる特定有害物質の量に関する基準で、1リットル中のミリグラム(mg/l)で表します。
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)
第一種特定有害物質は、土壌含有量基準がないため「-」で表しています。
特定有害物質の種類 |
土壌溶出量基準 |
土壌含有量基準 |
クロロエチレン |
検液1Lにつき0.002mg以下であること |
- |
四塩化炭素 |
検液1Lにつき0.002mg以下であること |
- |
1,2-ジクロロエタン |
検液1Lにつき0.004mg以下であること |
- |
1,1-ジクロロエチレン |
検液1Lにつき0.1mg以下であること |
- |
1,2-ジクロロエチレン |
検液1Lにつき0.004mg以下であること |
- |
1,3-ジクロロプロペン |
検液1Lにつき0.002mg以下であること |
- |
ジクロロメタン |
検液1Lにつき0.002mg以下であること |
- |
テトラクロロエチレン |
検液1Lにつき0.01mg以下であること |
- |
1,1,1-トリクロロエタン |
検液1Lにつき1mg以下であること |
- |
1,1,2-トリクロロエタン |
検液1Lにつき0.006mg以下であること |
- |
トリクロロエチレン |
検液1Lにつき0.01mg以下であること |
- |
ベンゼン |
検液1Lにつき0.01mg以下であること |
- |
第二種特定有害物質(貴金属等)
特定有害物質の種類 |
土壌溶出量基準 |
土壌含有量基準 |
カドミウム及びその化合物 |
検液1Lにつきカドミウム0.003mg以下であること |
土壌1kgにつきカドミウム45mg以下であること |
六価クロム化合物 |
検液1Lにつき六価クロム0.05mg以下であること |
土壌1kgにつき六価クロム250mg以下であること |
シアン化合物 |
検液中にシアンが検出されないこと |
土壌1kgにつき遊離シアン50mg以下であること |
水銀及びその化合物 |
検液1Lにつき水銀0.0005mg以下であり、検液中にアルキル水銀が検出されないこと |
土壌1kgにつき水銀15mg以下であること |
セレン及びその化合物 |
検液1Lにつきセレン0.01mg以下であること |
土壌1kgにつきセレン150mg以下であること |
鉛及びその化合物 |
検液1Lにつき鉛0.01mg以下であること |
土壌1kgにつき鉛150mg以下であること |
砒素及びその化合物 |
検液1Lにつき砒素0.01mg以下であること |
土壌1kgにつき砒素150mg以下であること |
ふっ素及びその化合物 |
検液1Lにつきふっ素0.8mg以下であること |
土壌1kgにつきふっ素4,000mg以下であること |
ほう素及びその化合物 |
検液1Lにつきほう素1mg以下であること |
土壌1kgにつきほう素4,000mg以下であること |
第三種特定有害物質(農薬等/農薬+PCB)
第三種特定有害物質は、土壌含有量基準がないため「-」で表しています。
特定有害物質の種類 |
土壌溶出量基準 |
土壌含有量基準 |
シマジン |
検液1Lにつき0.003mg以下であること |
- |
チオベンカルブ |
検液1Lにつき0.02mg以下であること |
- |
チウラム |
検液1Lにつき0.006mg以下であること |
- |
ポリ塩化ビフェニル(PCB) |
検液中に検出されないこと |
- |
有機りん化合物 |
検液中に検出されないこと |
- |
パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)より
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)について
第一種特定有害物質とは、「揮発性有機化合物(VOC)」と呼ばれる有害物質です。蒸発しやすく、大気中で気体となる有機化合物の総称です。揮発性有機化合物は様々な成分があり、主なものだけでも200種類はありますが、その中でも12種類が第一種特定有害物質に分類されています。
塗料や接着剤、インクなどに含まれる溶剤やガソリンから揮発してくるジクロロメタンやトリクロロエチレンなどが代表的な成分です。
都内では、2015年の1年間の排出量は、約6万トン排出されています。
地下水に溶出しやすいことから拡大範囲も広く健康被害が懸念されるため、土壌溶出量基準が設定されています。土壌汚染状況調査を実施する際は、土壌ガス調査を実施することが必要となっています。
第二種特定有害物質(貴金属等)について
第二種特定有害物質とは、貴金属などを含んだ有害物質です。9種類が第二種特定有害物質に分類されています。
第二種特定有害物質は土壌に吸着しやすく浸透性が低いことから比較的表層に近い場所で土壌汚染を引き起こすのが特徴です。
第二種特定有害物質は、汚染された地下水による被害に加えて土壌からの直接摂取の健康被害が懸念されるため、土壌汚染状況調査を実施する際は、土壌溶出量調査及び土壌含有量調査を実施することが必要となっています。
第三種特定有害物質(農薬等/農薬+PCB)
第三種特定有害物質とは、主に農薬です。除草剤や殺虫剤として使用されていた5種類が第三種特定有害物質に分類されています。人体への影響からすでに製造中止になっているものも含まれます。土壌汚染状況調査を実施する際は、土壌溶出量調査を実施することが必要となっています。
最後に
特定有害物質はその特性によって26物質が、第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)の3種類に分類されています。土壌汚染の原因物質が何かを知ることにより土壌汚染対策の理解も深められます。
株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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参考URL
・土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)
・パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)
・VOCとは?| 東京都環境局
(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/voc/what_voc.html)