アスベスト除去の工法については、主に5種類の工法があります。封じ込め・囲い込み・除去・ウォータージェット・剥離それぞれの工法について、詳しく解説します。

封じ込め工法

アスベストに溶剤を吹き付けて固定し、大気中へ飛散しないように封じ込める工法です。この工法ではアスベストを除去するのではなく、溶剤で固めてしまう工法で、作業の際にアスベスト飛散リスクが低く、短期間で作業できます。注意点としては、アスベスト除去ではないため、施工後にも定期的な点検や管理が必要で、解体工事をする時には最終的にアスベストの除去が必要なため、トータルコストとしては高くなる可能性があります。

囲い込み工法

アスベストが含まれる資材や建材の周囲を非アスベスト建材などで覆い隠す工法です。アスベストを囲って閉じ込める工法のため、カバーリング工法とも呼ばれることもあります。天井や梁にアスベストが使われている建物などでは、室内への飛散を防止する目的で行われます。この工法は短期間で作業が完了できますが、天井が低くなってしまうなどのデメリットもあります。また施工後もアスベストの点検や管理が必要で、封じ込め工法と同じく解体工事をする際には、アスベスト除去作業が必要になります。

除去工法

アスベストが含有されている資材・建材を全て除去し、アスベストを含まない資材・建材に入れ替える工法です。この工法は、改築後などに除去後のアスベストを管理しなくて済む部分がメリットの1つです。また飛散しやすいアスベストを的確に処理できるため、解体工事の際にはこの工法が必須です。一方で除去工法は徹底した安全管理のもとで工事を行う必要があり、他の工法と比べて費用が高く、作業に必要な期間も長くなります。

ウォータージェット工法

高い水圧の水を外壁など塗膜へ噴射し、湿潤化したうえでアスベストを除去する工法です。剥離剤は使わず、高圧の水で塗膜を湿潤化して除去するため大気中へ飛散しづらく、へこんだ部分なども施工できます。注意点としては高圧水の設備を使うため、費用が高くなる可能性があります。なお、ウォータークリーン工法の補助工法として開発された集塵機付きディスクグラインダー工法というものがあり、プラント設置が必要な分、濾過槽を通して廃材と濁水を分別でき、上澄み水は現地放流出来るため廃材処分が軽減され、 省スペース化が実現できるため、プラント設置ができない現場でも対応可能な工法もあります。

剥離工法

剥離剤を使ってアスベストを除去する工法です。主にアスベストを含有する仕上げ塗材(塗膜)を除去する際に用いられる工法です。塗膜にアスベストが含まれる場合、そのまま除去すると粉じんが飛散するリスクがありますが、この工法では剥離剤を使って塗膜を湿潤化した状態で除去作業を行いますすので、そのまま除去する場合に比べてもアスベストが飛散するリスクを低減できます。なお、部分剥離工法としてグローブバッグ工法があります。この工法は、機械室の配管エルボなどに使用されている石綿保温材を除去する際に用いる工法で、除去する石綿保温材周辺を部分的にグローブバッグを使用し密閉にして、グローブバッグ内で保温材の剥離作業を行う工法です。

これらの工法は、業者によって上記以外の特殊な方法を取り扱っている業者もいるなど、各社対応できる工法が異なることもありますので、事前に業者に確認して、費用や工期なども確認しておくのが良いです。

アスベストのレベルに応じて工法を選ぶ

アスベストのレベルは、飛散の危険性に合わせて作業レベルが違います。レベル1から3までの3段階に分かれており、レベル1が最も危険なレベルです。レベル1が発じん性が著しく高い場合、レベル2は発じん性が高い場合、レベル3は発じん性が比較的低い場合となっており、それぞれ適した工法で処理を行う必要がありますので、これについて詳細説明をします。

アスベストレベル1

主に隔離工法が用いられます。隔離工法では、作業場所を養生シートなどで隔離して集じん装置で作業場所を負圧に保ったうえで作業していきます。除去作業が終了したら、集じん装置を24時間稼働させ、作業場内の残留アスベストを取り除く処置が必要です。除去工法、封じ込め工法、囲い込み工法などが必要になります。

アスベストレベル2

アスベストを掻き落とし、切断・破砕などによって除去する際には、レベル1の隔離工法と同様の養生・設備が必要となります。また、掻き落としや破砕が伴わない配管保温材などを除去する場合は、立入禁止措置・掲示と周辺の飛散養生と散水のみで作業が可能です。除去工法、封じ込め工法、囲い込み工法、ウォータージェット工法などが必要になります。

アスベストレベル3

建築物の高さ以上の防じんシート養生が必要となります。設置完了後、散水によってアスベストを湿潤させて、原型のまま手ばらしで除去します。投下や重機作業は破砕の危険性があるため原則、禁止されています。主に剥離工法が必要になります。

アスベスト除去に必要な資格について

アスベスト除去を作業する現場では、安全に作業ができるように「石綿作業主任」と呼ばれる資格者が必要となります。石綿作業主任者とは、工場や建築物等の解体・改修工事現場など、アスベストを扱う現場の作業主任者であるという資格で、労働安全衛生法に定められた国家資格となります。アスベストを扱う作業においては、石綿作業主任者を選任する必要があります。

石綿取扱作業従事者はアスベストを取り除くために必要な専門の資格であり、石綿取扱作業従事者の特別教育を受けていない場合、作業関係者以外は現場に入ることはできませんし、アスベスト入り建材を運ぶ作業すらできません。労働安全衛生法で取得が義務づけられているため、資格のない作業員を働かせると罰則の対象になります。

石綿作業主任者は局所排気措置や除じん装置の点検、作業指揮、汚染の除去などを行いますので、石綿作業主任者の管理なしでは、アスベスト除去作業を行うことができません。

アスベスト処理は、労働安全衛生規則で「危険または有害」な業務に指定されているほど危険で、命に関わるケースもありますので、解体業者やアスベスト除去の専門業者には、石綿取扱作業従事者の資格を事前に確認することがとても重要です。

なお、各協会・各都道府県の労働基準協会や中小建設業特別教育協会、労働局長登録の教習機関、建設機械の教習所などで講習を受けることができ、費用は概ね10,000円前後になります。

アスベストレベルごとの目安の処理費用について

アスベストレベル別の1㎡あたりの処分費の相場は、

・レベル115,000~85,000

・レベル210,000~60,000

・レベル33,000

この辺りが費用の相場です。レベル1が最も発じん性が高く作業を慎重に進める必要があるため、一番費用が高くなります。

この記事ではアスベスト除去の工法について記載させていただきましたが、より詳細の説明やデータなどが必要な場合は、関連する研究機関や公的機関の資料を参照することをお勧めしております。株式会社エコ・テックではアスベスト調査分析や除去、解体工事まで幅広い範囲の対応を日本全国で行なっており、どの工法対応可能です。アスベスト除去の専門家として豊富な実績を保有しておりますので、アスベスト調査に関するご相談はお気軽にエコテックまでお問い合わせください。