事前の届出が必要
一定規模以上の土地の形質変更(工事のこと)を行う場合は、土壌汚染対策法第4条第1項により事前の手続きが必要であると明記されています。条文(文末の★参考①に掲載)を読んでもピンと来ないので、少し深読みしてみます。
届出手続きの概要
形質を変更する土地の面積が「3000平方メートル以上」の時、着工する日の30日前までに、当該の土地所在地等を都道府県知事に届けなければならない、というものです。
(※注 有害物質使用特定施設が設置されている工場・事業場の敷地であって、同法第3条第1項本文の調査を実施予定等の土地は900平方メートル以上)
その届出に対して、同知事は、当該の土地において土壌汚染のおそれがあると判断した場合には、土地所有者に対して土壌汚染状況調査の実施及び、その結果の報告を命じることができます(同法第4条第2項)というのが概要です。いわば、行政から土壌汚染のおそれあり、とジャッジされたら調査が入るということです。
届出をしないと懲役や罰金
届出対象となる「土地形質の変更」とは、土地の形状を変更する行為全てのことを指します。
届出をせず、又は虚偽の届出をして、土地の形質の変更をした場合は、同法第66条第2項により、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処せられるのでご注意を。
届出をする者とは
届出の義務を負う者は、具体的に形質変更を施行することにおいて計画を実行する権限を持っている者です。例えば、土地の所有者と土地を借りている開発業者では、開発業者が「届出の義務を負う者」になります。簡潔に言えば、一般的には発注者がそれに該当します。
対象となる土地
それでは、対象となるのは具体的にどのような土地でしょうか。「3000平方メートル以上」という基準は文頭に書いた通りですが、その面積要件は、以下の5つ全てを合わせた合計となります。
①盛土
②土壌の仮置き
③舗装の撤去・敷設
④地盤改良
⑤深さ50センチ以上の掘削で杭打ち、鋼矢板の打設
以上の合計面積です。
対象となる土地の注意点
他に注意が必要なのが工区(発注年度)が別れていても、同じと見なされることがあります。
例えば、同じ事業計画ので複数の工区がそれぞれ時期が違っていても、同じ目的のもとで行われており、個別行為の時間的近接性、実施主体等から総合的に判断されます(文末の★参考②参照)。
次に届出対象外についてみてみます。
①盛土のみの土地形質変更
②形質変更の区域外へ土壌搬出がない
③形質変更に伴い、周辺への土壌の飛散・流出が生じない
④形質変更に係る部分の深さ(掘削深度)が全て50センチ未満
以上4項目のいずれにも該当していなければなりません(通常の農業、林業の作業路網の整備で区域外に土壌を搬出しない行為、非常災害のために必要な応急措置、鉱山関係の土地では必要なしです)。
届出書類
いつも煩雑な書類ですが、同法第4条第1項に基づき、提出しなければならない書類は以下の通りです。各自治体によって差異がありますので、それぞれホームページで確認してください。届出書類は図面も含め、原則A4またはA3で提出します。
○例えば兵庫県の場合
1 一定の規模以上の土地の形質の変更届出書(土壌汚染対策法施行規則様式第6)
2 土地の形質の変更をしようとする場所を明記した図面
・周辺の地図(形質の変更を行う土地)
・土地形質変更図面(土地の形質の変更が行われる範囲について掘削部分及び盛土部分を区別して明示)
・平面図に最大掘削深度の記載又は縦・横断図を添付
3 土地形質の変更の実施についての同意書
・届出者が土地所有者等と異なる部分の土地については、同法第4条第1項に規定する土地の形質の変更の実施に関し、土地所有者等の同意が必要となります
4 土地の登記事項証明書
5 公図の写し等(形質の変更を行う土地の所在)
・公図や合成公図等の上に、形質変更を行う部分を赤線で囲むなどして明示
6 土地の履歴情報
・有害物質の使用履歴、現在及び過去の土地利用状況、土壌調査結果等がわかるもの
詳しくは土地がある都道府県のホームページなどを参照して必ず確認してください。
同法第4条第1項の流れ
最後に同法第4条第1項に関して、届出の流れをみておきます。
①届出
②土壌汚染のおそれ
「なし」→工事着工
「あり」→・特定有害物質による汚染が明らかな土地
・特定有害物質が埋設、飛散、流出、地下に浸透した土地
・特定有害物質を製造、使用、処理した事業用地
・特定有害物質を貯蔵、保管した事業用地
・上記と同様の汚染のおそれのある土地
③調査命令
各都道府県等の土壌汚染対策法を所管する部署が判断します。
・水質汚濁防止法、大気汚染防止法等の届出書類
・ガソリンを貯蔵する地下タンクの設置記録
・埋め立て用材由来の汚染が確認されている同じ埋め立ての土地に隣接している場合
・自然由来の汚染が確認されている同じ地質の土地に隣接している など
④土壌汚染状況調査
環境大臣等の指定を受けた指定調査機関に委託して実施
・地歴調査を行って、試料採取等を行う特定有害物質及び区画を選定
・試料を採取して、濃度計量証明じ事業所にて分析
⑤調査結果の報告
「基準に適合した」→工事着工
・適切な地歴調査が行われているかを確認
・試料採取が適切に行われ、分析した結果が土壌汚染対策法で規定されている基準に適合しているかを確認
「基準に不適合」→⑥要措置区域等に指定
⑥要措置区域等に指定
汚染が判明した場合・状況に応じて、調査対象地の舗装状況、周辺の飲用井戸の分布状況によって、要措置区域又は形質変更時用届出区域に指定、もしくは場合によって、工事費や工期、その後の土地利用等に影響する
株式会社エコ・テックのと土壌汚染対策法に伴う届出等について
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★参考①(土壌汚染のおそれがある土地の形質の変更が行われる場合の調査)
第四条
1 土地の形質の変更であって、その対象となる土地の面積が環境省令で定める規模以上のものをしようとする者は、当該土地の形質の変更に着手する日の三十日前までに、環境省令で定めるところにより、当該土地の形質の変更の場所及び着手予定日その他環境省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 前条第一項ただし書の確認に係る土地についての土地の形質の変更
二 軽易な行為その他の行為であって、環境省令で定めるもの
三 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
2 前項に規定する者は、環境省令で定めるところにより、当該土地の所有者等の全員の同意を得て、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について、指定調査機関に前条第一項の環境省令で定める方法により調査させて、前項の規定による土地の形質の変更の届出に併せて、その結果を都道府県知事に提出することができる。
3 都道府県知事は、第一項の規定による土地の形質の変更の届出を受けた場合において、当該土地が特定有害物質によって汚染されているおそれがあるものとして環境省令で定める基準に該当すると認めるときは、環境省令で定めるところにより、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について、当該土地の所有者等に対し、指定調査機関に前条第一項の環境省令で定める方法により調査させて、その結果を報告すべきことを命ずることができる。ただし、前項の規定により当該土地の土壌汚染状況調査の結果の提出があった場合は、この限りでない。
★参考②(一体とみなすことができる工事の定義)
「同一の事業の計画や目的の下で行われるものであるか否か。個別の行為の時間的近接性、実施主体等を総合的に判断」(環水大土発第1903015号 環境省水・大気環境局長通知より抜粋)
★参考③(開発行為に係る届出等が規定されている法令)
土壌汚染対策法だけではなく、以下にあげる法令にも開発行為に係る届出等が規定されています。
都市計画法、建築基準法、工場立地法、土地改良法、道路法、農地法、農業振興地域整備法、宅地造成等規制法、急傾斜地崩壊防止法、自然公園法、騒音規制法、振動規制法、森林法、文化財保護法等
株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について
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