土壌汚染調査

土壌汚染調査とは、土地取引等の際に、その土地の汚染の有無あるいは汚染状況を把握するために行われる調査のことで、方法は土壌汚染対策法施行規則に規定されており、以下の3段階からなります。過去から現在までの土地の利用状況から汚染リスクを推定する資料等調査、土地を区画に分割し、各区画における汚染の有無を調べる概況調査、深度方向の汚染状況を把握し、資料等査や概況調査の結果を元に汚染箇所を特定する詳細調査のことです。

土壌分析が必要な場合

土壌汚染調査・報告義務を負った場合

土壌汚染対策法により、土地の所有者等に対して必要な届出、土壌汚染の調査・報告義務が課されています。土壌汚染対策法上、調査義務が発生するのは、以下の3つの場合があります。

土壌汚染対策法3条

水質汚濁防止法上の「特定施設」を廃止する場合

土壌汚染対策法4条

3,000㎡以上(一定の場合には900㎡以上)の土地の形質変更を行った者による事前届出の結果、知事が土壌汚染のおそれありと認定した場合

土壌汚染対策法5条

上記のほか、知事が、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれありと認定した場合

土地の形質変更を行う者による土壌汚染調査・報告義務(土壌汚染対策法4条調査)

以下では、実務上最も問題となる土壌汚染対策法4条調査を中心があります。

(1)土壌汚染対策法4条に基づく届出
(2)土壌汚染対策法4条に基づく汚染調査・報告義務
(3)土壌汚染対策法3条1項ただし書の届出、汚染調査・報告義務

条例などで土壌汚染調査が必要となる場合

上記のほか、都条例など各地方公共団体の定める条例により土壌汚染調査や対策が要求されることがあります。

法律で義務化されていない場合の土壌環境調査の必要性

土壌汚染対策法では、特定有害物質の使用届けがなく、対象地の総面積が3,000㎡以下の場合、土壌調査の義務が発生しません。しかし現在では、土地の売買に伴う評価基準として、土壌環境調査を任意で実施することが増えています。実際、特定有害物質の使用が無かった土地にであっても、建築する際に持ち込んだ盛土等に汚染物質が混入していると考えられるケースの汚染が確認されております。特に大規模に造成された地域や、埋立てなどで造成された地域に多く見られます。汚染された土地を知らずに売買し、後々問題とならないようにするために、任意での土壌環境調査を行うことをお勧めいたします。

分析項目

土壌汚染対策法では、一定規模以上の土地の改変や有害物質取扱い事業の廃止などを契機に土壌調査を行い、汚染が発見された場合には都道府県知事の判断により汚染除去等の措置を行い、人の健康被害を防止することが定められています。

分類      

No.

分析項目             

土壌溶出量基準

(mg/L)

土壌含有量基準

(mg/kg)

 

 

 

 

 

 

 

第一種特定有害物質

揮発性有機化合物

(12項目)

 

1

クロロエチレン

0.002以下

-

2

四塩化炭素

0.002以下

-

3

1,2-ジクロロエタン

0.004以下

-

4

1,1-ジクロロエチレン

0.1以下

-

5

1,2-ジクロロエチレン

0.04以下

-

6

1,3-ジクロロプロペン

0.002以下

-

7

ジクロロメタン

0.02以下

-

8

テトラクロロエチレン

0.01以下

-

9

1,1,1-トリクロロエタン

1以下

-

10

1,1,2-トリクロロエタン

0.006以下

-

11

トリクロロエチレン

0.01以下

-

12

ベンゼン

0.01以下

-

 

 

 

 

 

 

 

 

第二種特定有害物質

重金属等

(溶出10項目)

(含有 9項目)

 

1

カドミウム及びその化合物

0.003以下

45以下

2

六価クロム化合物

0.05以下

250以下

3

シアン化合物

0

50以下

遊離シアンとして

 

4

水銀及びその化合物

0.0005以下

15以下

5

アルキル水銀化合物

0

-

6

セレン及びその化合物

0.01以下

150以下

7

鉛及びその化合物

0.01以下

150以下

8

砒素及びその化合物

0.01以下

150以下

9

フッ素及びその化合物

0.8以下

4000以下

10

ホウ素及びその化合物

1以下

4000以下

 

 

 

第三種特定有害物質

農薬等

(5項目)

 

1

シマジン

0.003以下

-

2

チオベンカルブ

0.02以下

-

3

チウラム

0.006以下

-

4

ポリ塩化ビフェニル(PCB)

0

-

5

有機燐化合物

0

-

土壌汚染対策法に基づく分析

① 土壌含有量調査に係る場合(平成十五年環境省告示十九号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第四項第二号の規定に基づく

  1. A. 各特定有害物質(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物など)について作成した検液ごとに、環境省HPに定めている方法により対象物質の量を測定する。
  2. B. 次に同HPに定めている方法(土壌採取→試料の作成→検液の作成)で作成した試料の重量とこれを摂氏105度で約4時間乾燥して得たものの重量とを比べて当該試料に含まれる水分量を測定する。
  3. C. Aにより測定された調査対象物質の量を当該乾燥して得たもの○キログラムに含まれる量に換算します。

② 土壌溶出量調査に係る場合(平成15年環境省告示18号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第三項第四号の規定に基づく

  1. A. 各特定有害物質(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シマジンなど)について、平成三年八月か環境庁告示第四十六号(土壌の汚染に係る環境基準について)付表に掲げる方法で作成した検液ごとに環境省HPに定めている方法により対象物質の量を測定する。

③ 土壌ガス調査に係る場合(平成15年環境省告示16号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第二項第一号及び第二号の規定に基づく

土壌中の気体または地下水の採取の方法及び上述の第二号に規定する、気体に含まれる調査対象物質の量を測定する。

  1. A. 地表からおおむね80〜100cmの地中において土壌ガスを採取し、第一種特定有害物質の量を測定する。
  2. B. 土壌ガス中に一定濃度以上の第一種特定有害物質が検出された場合には、土壌汚染が存在する恐れが最も多いと認められる地点において、深さ10mまでの土壌をボーリングにより採取し、土壌溶出量を測定するという追加調査の実施が必要となる(同施行規則第7条)。

土壌汚染対策法とは?

「土壌汚染対策法」は、土壌汚染の状況調査に関する手続きや方法、汚染区域の指定、汚染土壌の搬出ルールや除去対策などをまとめた法律で、国民の健康保護を目的としています。

「有害物質使用特定施設の廃止時」や「3000㎡以上の土地の形質変更時」などは土壌汚染調査が義務付けられており(義務調査)、環境大臣が指定した指定調査機関に依頼して調査・報告する必要があります。指定調査機関のリストは環境省のWebサイトから確認可能です。

義務調査の対象外だとしても、住民の健康被害に対するリスクや不安を解消するためには、土壌汚染調査(自主調査)が欠かせません。また、調査の結果、土壌の汚染状態が基準値を超過した際には、土壌汚染対策法を守った上で汚染の除去などを行う必要があります。

土壌環境基準に基づく分析

① 土壌の汚染に係る環境基準の分析(平成3年環境庁告示46号)

令和3年4月1日施行で環境基準の見直しが行われ、カドミウム、トリクロロエチレンを改正(令和2年4月環境省告示第44号)。

土壌汚染調査会社選定のポイント

①土壌汚染調査会社選定のポイント

環境省は土壌調査を行うにあたって調査機関を指定しています。土壌汚染対策法に基づく土壌汚染状況調査は、土地の所有者等が調査の義務を負いますが、その調査は指定調査機関に実施させなければならないこととなっています。また、土壌汚染対策法第16条第1項の調査(認定調査)も、指定調査機関が実施しなければならないこととなっています。指定調査機関は法定調査を実施することのできる唯一の機関です。法に基づき行う詳細調査等については、指定調査機関が行うことが望ましいです。

②各指定機関の法律や条例対応実績の確認

土壌の汚染状況に関する調査は、試料の採取地点の選定、試料の採取方法などにより結果が大きく左右されるため、調査結果の信頼性を確保するためには、調査を行う者に一定の技術的能力等が求められます。調査機関の対応実績について確認されることをおすすめします。

③数社から調査費用の見積もりや必要な情報をもらう

土壌汚染調査は、対象地の条件や調査項目で費用が変わってきます。初期の現地調査の場合、土壌汚染のおそれがある調査地は100㎡あたり20万円~30万円、土壌汚染のおそれが少ない調査地は900㎡あたり20万円~30万円というところが一般的です。 状況によって見積りは変わってきますので、何社か見積りと調査の内容を確認し比較検討することが望ましいです。