環境問題への意識の高まり

土壌汚染対策法が2003年(平成15)に施行されてから、土壌汚染に対する意識は年々高まってきました。昨今のSDG’s(持続可能な17の目標)のように社会が環境問題に配慮するのが一般的になりつつあります。土壌汚染が見つかった、というだけで個人や企業は神経を尖らせるものです。イメージの悪化を恐れているのでしょうか。

ここでは土壌調査が必要になった時にどのような土壌分析法があるのかに触れていきます。

調査が必要になる時

では、それはいつ、いかなる時なのでしょうか。

① 土壌汚染対策法・自治体の条例等に基づく場合

同法第3条(有害物質使用特定施設の使用が廃止されたとき)、同第4条(一定規模の土地の形質の変更時の届出の際に土壌汚染のおそれがあると都道県知事が認めるとき)、同第5条(土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認めるとき)

② 不動産の取引や資産価値の評価に伴う調査

不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)において、土地の売買や不動産取引を行う際に資産価値の評価に影響を及ぼすために行う

③ 自治体の条例等に伴う調査

全国の自治体がそれぞれ条例等によって独自に規制を設けていることから、調査を求められるケースがある

④ サイトアセスメント(ISO14015)に従って行う自主調査

工場跡地を買収したい、売却したい、あるいは工場の建替えをしたいといった場合に、土地の環境的な問題を確認するために行います。 ※ISO14015は土壌汚染に関する国際規格のこと

一般の個人の方は②が重要でしょうか。不動産取引は動くお金が大きい割には、一個人が常時取引に携わっているわけではないでしょう。環境省の指定調査機関に委任するのが適切と言えます。

土壌分析とは

土壌の分析はまずサンプリング(採取)することから始まります。既存の試料、有害物質の使用状況から汚染の可能性を探り、調査の必要性を検討します。ちなみに汚染のおそれがなければ試料の採取は行いません。

・汚染の恐れがある土地

① 10メートルメッシュ毎(100㎡)につき1箇所採取
② 第一種特定有害物質 土壌ガスは1メートルの穴を空けて採取します
③ 第二種特定有害物質 土壌の表層から50センチ掘ります。 表層から5センチまでの土壌と5センチから50センチまでの土壌を採取して、同じ量に分けます。

・汚染の恐れが少ない土地

① 30メートルメッシュ毎(900㎡)に採取します

サンプリングで汚染の疑いがあれば調査の段階へ進みます。

土壌分析の流れ

【風乾】

サンプリングの結果、汚染の疑いがある場合、指定調査機関に検体が届くと、大きな土塊は必要に応じて細かく砕き、均一に広げて常温の環境下で自然乾燥させます。水分が少なくなるほど正確な値に近づきます。揮発性有機塩素化合物(大気中で気体状となるもの、トルエン、キシレンなど)の検体は風乾せずに検液を作成します。

【ふるい分け】

石などを砕かないように、木片が混入しないように丁寧に取り扱います。 2㎜以下の試料のみを分析対象とします。

【抽出】

試料に対して溶媒(pHを調整した純水)を10の割合で混合して約6時間震盪(しんとう)します。

【ろ過】

前処理最後の工程。遠心分離機で懸濁液や沈殿物と上澄み液とに分けます。さらに上澄み液をろ過して分析検液とします。

以上が前処理工程です。

ここからは、本題の土壌調査分析方法について。分析方法は多岐にわたります。

土壌汚染対策法に基づく分析

① 土壌含有量調査に係る場合(平成十五年環境省告示十九号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第四項第二号の規定に基づく

A. 各特定有害物質(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物など)について作成した検液ごとに、環境省HPに定めている方法により対象物質の量を測定する。

B. 次に同HPに定めている方法(土壌採取→試料の作成→検液の作成)で作成した試料の重量とこれを摂氏105度で約4時間乾燥して得たものの重量とを比べて当該試料に含まれる水分量を測定する。

C. Aにより測定された調査対象物質の量を当該乾燥して得たもの○キログラムに含まれる量に換算します。

② 土壌溶出量調査に係る場合(平成15年環境省告示18号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第三項第四号の規定に基づく

A.各特定有害物質(カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シマジンなど)について、平成三年八月か環境庁告示第四十六号(土壌の汚染に係る環境基準について)付表に掲げる方法で作成した検液ごとに環境省HPに定めている方法により対象物質の量を測定する。

③ 土壌ガス調査に係る場合(平成15年環境省告示16号)

※土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第五条第二項第一号及び第二号の規定に基づく

土壌中の気体または地下水の採取の方法及び上述の第二号に規定する、気体に含まれる調査対象物質の量を測定する。

A.地表からおおむね80〜100cmの地中において土壌ガスを採取し、第一種特定有害物質の量を測定する。

B.土壌ガス中に一定濃度以上の第一種特定有害物質が検出された場合には、土壌汚染が存在する恐れが最も多いと認められる地点において、深さ10mまでの土壌をボーリングにより採取し、土壌溶出量を測定するという追加調査の実施が必要となる(同施行規則第7条)。

土壌環境基準に基づく分析

① 土壌の汚染に係る環境基準の分析(平成3年環境庁告示46号)

令和3年4月1日施行で環境基準の見直しが行われ、カドミウム、トリクロロエチレンを改正(令和2年4月環境省告示第44号)。

農用地土壌汚染法に基づく分析

① 農用地の土壌汚染防止等に関する分析

農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(以下、「農用地土壌汚染防止法」)は、農用地の土壌に含まれる特定有害物質により、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されることを防止することを目的として制定されたものであり、現在、特定有害物質としてカドミウム、銅及びヒ素が規定されています。

同法は、都道府県知事が、農用地土壌及び当該農用地に生育する農作物等に含まれる特定有害物質の量が一定の要件(以下、「指定要件」といいます。)に該当する地域を「農用地土壌汚染対策地域」として指定した上で、「農用地土壌汚染対策計画」を策定し、かんがい排水施設の新設や客土等、汚染農用地を復元するための対策を講じることを規定しています。

油汚染対策ガイドラインに基づく分析

① 油臭・油膜について

油、特に石油は“産業の米”といわれる、ヒトが生活してうえで必要不可欠なものです。その油が井戸水に混じっているとか、近隣で匂いがするとか、我々は敏感に感じます。

同ガイドラインでは、鉱油類を含む土壌に起因して、その土壌が存在する土地の地表、 あるいはその土地にある井戸の水や池・水路等の水に油臭や油膜が生じているとき に、土地の所有者等が、その土地においてどのような調査や対策を行えばよいか、などについて、基本的な考え方と、取り得る方策を選択する際の考え方などを取りまとめています。

油臭や油膜の感じ方に影響する土地の利用方法、鉱油類を含む土壌が存在する土地における井戸水等の利用状況、周辺の土地や井戸水等への影響のおそれなどの現場ごとの状況に応じた対応方策の検討に活用できるようです。

② 全石油系炭化水素(TPH)による分析

THPとはTotal Petroleum Hydrocarbonの略です。このGC–FID(水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ)法によるTPH試験が油汚染土壌や地下水の状況を正確に調査します。

残土に関する条例・受け入れ適合基準に基づく分析

建物の建設時や工事等の時に残土(建設発生残土)が発生しますが、その残土は自治体等の所定の受け入れ地に搬出しなければなりません。受け入れ地によりそれぞれ分析項目や基準等が異なります。

最後に、特定有害物質は大きく3つに分類されます。それぞれの調査方法は以下の通りです。

第1種特定有害物質:揮発性有機化合物→土壌溶出量調査、土壌ガス調査

第2種特定有害物質:重金属等→土壌含有量調査、土壌溶出量調査

第3種特定有害物質:農薬等→土壌含有量調査