解体工事施工技士とは、解体工事施工者のための国土交通省管轄の国家資格です。解体工事施工技士の資格を取得すると、請負額が500万円以下の解体工事を行うための解体工事業の登録や、解体工事の施工に必要な技術管理者となることができます(1)。解体工事施工技士試験は、公益社団法人全国解体工事業団体連合会[略称:全解工連]が、毎年12月頃に実施しています。合格者は、本人の申請によって全解工連の「解体工事施工技士登録者名簿(毎年発行)」に登録され、全解工連より「登録証」及び「資格者証(携帯用カード)」が交付されます。登録の有効期間は5年間で、毎年2~3月に実施される更新講習を受講することで登録を更新することができます。
解体工事施工技士資格試験の受験資格
解体工事施工技士試験の受験資格は、「1.原則として解体工事実務経験年数8年以上」ですが、「2.学歴・指定学科卒業によって必要実務経験を短縮」することができるため、学歴によって必要な解体工事の実務経験年数が異なります(2)。
受験に必要な実務経験年数は、①大学・4年制の専門学校を卒業している場合、②短期大学、5年制の高等専門学校、2-3年制の専門学校を卒業している場合、③高等学校、中高一貫6年制の中等教育学校、1年制の専門学校を卒業している場合、④その他の場合で異なります。受験に必要な実務経験年数はそれぞれ、①大学・4年制の専門学校を卒業している場合は「卒業後2年6ヶ月以上」、②短期大学、5年制の高等専門学校、2-3年制の専門学校を卒業している場合は「卒業後3年6ヶ月以上」、③高等学校、中高一貫6年制の中等教育学校、1年制の専門学校を卒業している場合は「卒業後5年6ヶ月以上」、④その他の場合は「8年以上」と定められています。
また、指定学科を卒業している場合にも、必要な実務経験年数は変わります。ここでいう指定学科とは、国土交通省例の定める「土木施工管理技術検定の指定学科」に準じて、全解工連が定めた「解体工事施工技士試験の指定学科」のことを指します。土木(工学)科や電気(工学)科、農業土木(学)科、都市工学科や建築学科等がこれに当たります。詳しくは、全解工連が発表している「(公社)全国解体工事業団体連合会で定める『解体工事施工技士試験』の指定学科」に、指定学科の一覧表とその他の細則について記載されているので、そちらをご参照ください(3)。
大学の指定学科を卒業している場合、受験に必要な実務経験年数が1年、指定学科の高等学校を卒業している場合は2年短縮されます。
学 歴 | 必要な解体工事の実務経験年数 | ||
指定学科を卒業した者 | 指定学科以外を卒業した者 | ||
イ | 大学 専門学校(4年制)「高度専門士」 |
卒業後1年6ヶ月以上 | 卒業後2年6ヶ月以上 |
ロ | 短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校(2年制又は3年制)「専門士」 |
卒業後2年6ヶ月以上 | 卒業後3年6ヶ月以上 |
ハ | 高等学校 中等教育学校(中高一貫6年) 専門学校(1年制) |
卒業後3年6ヶ月以上 | 卒業後5年6ヶ月以上 |
ニ | その他 | 8年以上 |
学歴と必要な解体工事の実務経験年数一覧表
(https://www.zenkaikouren.or.jp/engineer/about-overview/)より
解体工事施工技術講習の受講による実務経験年数の短縮措置について
また、全解工連が毎年9-11月頃に全国で実施している解体工事施工技術講習を受講することで、解体工事施工技士試験を受験するために必要な実務経験年数が1年間短縮される措置を受けることができます。解体工事施工技術講習は、国土交通省令(解体工事業に係る登録等に関する省令第七条第二号の登録講習)に基づく登録講習であり、「建築物等の解体工事に携わる者等が『建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(略称:建設リサイクル法)』、その他の関連法令等に的確に対応できる解体工事施工技術を確保すること(4)」を目的とするもので、専用のテキストを使用し、連続2日間の日程で実施されます。受講資格は定められておらず、誰でも受講することができます。
解体工事施工技士の資格が活かせる仕事
解体工事施工技士の資格保持者は、解体工事の技術、廃棄物の適正処理のための知識、施工管理能力などを身につけているとみなされます。そのため、解体工事施工技士の資格が活かせる仕事は、主に土木工事業・解体工事業となります。解体工事施工技士に期待されるのは、解体工事の現場監督や技術管理者の業務を統括する現場管理者としての役割です。それまでに培った経験や知見を活用して、解体工事の見積もりから調査、施工管理、環境保全や廃棄物対策などの業務を統括し、工事を効率的に、正確かつ安全に進めていくことが解体工事施工技士の仕事となります。
一般の建設工事の場合、請負代金が500万円以上の建設工事を行う事業所は、公共工事であるか民間工事であるかに関わらず、建設業法第3条に基づいて、国土交通大臣または都道府県知事から建設業の許可を受けなければなりません(5)。請負代金が500万円以下の「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合は、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいとされています。しかし、解体工事の場合には一般の建設工事の場合とは異なり、請負額に関わらず解体工事事業者の登録をする必要があります。「解体工事業に係る登録等に関する省令(平成13年5月18日国土交通省令第92号)」の制定により、解体工事業を営もうとするものは、その該当区域を管轄する都道府県知事の登録を得なければなりません。解体工事業の登録のための要件は、「解体工事の施工の技術上の管理をつかさどる技術管理者を選任すること」などです。解体工事施工技士の取得者は、「建設リサイクル法に規定された解体工事業の登録及び解体工事現場の施工管理に必要な技術管理者並びに建設業法に規定された解体工事業許可及び解体工事現場の施工管理に必要な主任技術者の資格要件に該当(7)」するので、請負額が500万円未満の解体工事を行う場合に登録が可能になります。そのため、解体工事施工技士の資格保持者は事業所の建設業許可申請や解体工事業登録の際に重宝されます。
解体工事施工技士は、前述の通り技術管理者ならびに主任技術者としての要件を満たしていますが、平成28年の建築業法の改正以降、請負額が500万円以上の大規模な解体工事を行う場合には、解体工事施工技士だけでは作業を行えず、現場に特定・解体工事建設業の専任技術者を置く必要があります。特定・解体工事建設業の専任技術者として認められるための要件は、建築業法第十五条に定められており、①1級土木施工管理技士、②1級建設機械施工技士、③技術士 総合技術管理(建設)+1年以上の解体工事の実務経験又は講習の受講をしていること、④一般・解体専任技術者の要件を満たす者でかつ元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有するもの、となります(8)。そのため、解体工事業でのキャリアアップや将来的な独立を本格的に考えている場合には、解体工事施工技士の資格を取得した後、1級土木施工管理技士や1級建設機械施工技士を目指すことが多くなります。
(1)解体工事施工技士について | 全解工連 (zenkaikouren.or.jp)
(2)解体工事施工技士(登録解体工事試験)とは | 全解工連 (zenkaikouren.or.jp)
(3)shitei-doboku.pdf (zenkaikouren.or.jp)
shitei-kentiku.pdf (zenkaikouren.or.jp)
(4)令和3年度 解体工事施工技術講習について | 全解工連 (zenkaikouren.or.jp)
(5)建設産業・不動産業:建設業の許可とは - 国土交通省 (mlit.go.jp)
(6)リサイクル:建設リサイクル推進計画 - 国土交通省 (mlit.go.jp)
(7)解体工事施工技士について | 全解工連 (zenkaikouren.or.jp)
(8)https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100