解体工事施工技士とは
解体工事施工技士は、解体工事施工者のための国土交通省管轄の国家資格です。解体工事施工技士の資格は、解体工事の現場管理のための解体工事技術や施工管理能力、廃棄物の適正処理や建設リサイクル法などについての適切な知識を有していることを示します。公益社団法人全国解体工事業団体連合会(Japan Demolition Contractors Association)[略称:全解工連]が実施している解体工事施工技士試験は、建設業法施行規則第七条の三第二項の国土交通大臣登録試験であり、また解体工事業に係る登録等に関する省令(国土交通省令)第七条第三号の国土交通大臣登録試験です。この試験に合格すると、建設リサイクル法に規定された解体工事業の登録及び解体工事現場の施工管理に必要な技術管理者並びに建設業法に規定された解体工事業許可及び解体工事現場の施工管理に必要な主任技術者の資格要件を満たすことになるため、請負額が500万円以下の解体工事を行うための解体工事業の登録が可能になり、また施工に必要な技術管理者となることができます(1)。
解体工事施工技士資格試験の概要
解体工事施工技士試験の受験資格は、「1.原則として解体工事実務経験年数8年以上」ですが、「2.学歴・指定学科卒業によって必要実務経験を短縮」することができるため、学歴によって必要な解体工事の実務経験年数が異なります(2)。
学 歴 | 必要な解体工事の実務経験年数 | ||
指定学科を卒業した者 | 指定学科以外を卒業した者 | ||
イ | 大学 専門学校(4年制)「高度専門士」 |
卒業後1年6ヶ月以上 | 卒業後2年6ヶ月以上 |
ロ | 短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校(2年制又は3年制)「専門士」 |
卒業後2年6ヶ月以上 | 卒業後3年6ヶ月以上 |
ハ | 高等学校 中等教育学校(中高一貫6年) 専門学校(1年制) |
卒業後3年6ヶ月以上 | 卒業後5年6ヶ月以上 |
二 | その他 | 8年以上 |
学歴と必要な解体工事の実務経験年数一覧表
(https://www.zenkaikouren.or.jp/engineer/about-overview/)より
試験の問題の形式は、四肢択一式(50問・90分)と記述式(5問・120分)になります。出題範囲は、土木・建築の基礎知識、解体工事施工の計画、解体工事施工管理、解体工法、解体用機器、安全管理、環境保全、副産物・廃棄物対策、関連法規などで、解体工事技術や廃棄物の適正処理、建設リサイクル法に対応した施工管理能力とその周辺知識が問われます。記述式試験では、解体工事の実務経験に関するものや、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等の、解体現場の素材や規模別の解体工事施工計画についての問題が出題されることが多いようです。
試験委員会によって四肢択一式試験の得点と記述式試験の得点、そして両者の合計得点の合格基準点がそれぞれ設定されます。全解工連の試験概要のページには明記されていませんが、一般に四肢択一式・記述式それぞれ100点満点中50点以上、合計点200点満点中115点以上が合格ラインであると言われています(3)。合格率は平均56.3%(第1回から第27回まで)となります。合格者は、本人の申請によって全解工連の「解体工事施工技士登録者名簿(毎年発行)」に登録され、全解工連より「登録証」及び「資格者証(携帯用カード)」が交付されます。登録の有効期間は5年間で、毎年2~3月に実施される更新講習を受講することで登録を更新することができます。
資格取得の難易度、解体工事施工技術講習について
解体工事施工技士試験の合格率は平均56.3%と低くはありませんが、試験問題では専門的な知識が問われます。試験対策として、全解工連が毎年9-11月頃に全国で実施している解体工事施工技術講習を受講することが有効です。解体工事施工技術講習は、国土交通省令(解体工事業に係る登録等に関する省令第七条第二号の登録講習)に基づく登録講習であり、「建築物等の解体工事に携わる者等が『建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(略称:建設リサイクル法)』、その他の関連法令等に的確に対応できる解体工事施工技術を確保すること(4)」を目的とするもので、専用のテキストを使用し、連続2日間の日程で実施されます。また、同講習を受けることで、解体工事施工技士試験を受験するために必要な実務経験年数が1年間短縮される措置を受けることができます。
解体工事施工技術講習は、9時から17時まで2日間連続で実施されます。講義内容は、第1日目は建設業法・建設リサイクル法・資源有効利用促進法、労働安全衛生法等(労働災害統計・事例・KYT等)、石綿障害予防規則・大気汚染防止法・フロン排出抑制法・騒音・振動規制法、H25副産物調査結果、再資源化の現状、廃棄物処理法①廃棄物の基礎知識、廃棄物処理法②建設廃棄物処理指針です。第2日目には、解体工事の計画と管理(事前調査・積算・見積・契約・届出・許可申請・施工計画・施工管理)、解体作業①(解体工法・解体用機器・仮設、解体作業)、解体作業②(W・S・RC・SRC造解体作業の手順・留意点・施工事例等)について学び、2日間の総括の後、修了証が交付されます。受講資格は定められておらず、誰でも受講することができます。
解体工事施工技士試験の申込方法
次に、解体工事施工技士試験の申込方法について説明します。解体工事施工技士試験の申込には、インターネットから申し込みを行う一次申請と、提出書類を郵送する二次申請が必要となります。
一次申請では、①メールアドレス認証(メールアドレスを送信し、届いたメールに記載されているパスワードを入力する)、②受験者情報入力(受験者名、所属企業、経歴等)、③受験料の支払い(クレジットカード決済またはコンビニ決済)を行い、これらが完了すると、登録したメールアドレスに一次申請受付メールが送信されます。
二次申請では、まず一次申請受付メールに添付されているファイル(試験受験申請書と実務経験証明書)を印刷します。試験受験申請書には署名・押印をして、パスポートサイズ(たて4.5㎝×よこ3.5㎝)の写真を貼ります。実務経験証明書には会社印・代表者印が必要となります。そして、①試験受験申請書と②実務経験証明書と合わせて、③住民票(本籍・国籍の記載は不要)、④卒業証明書(解体工事の実務経験が8年未満の場合のみ)を同封して、公益社団法人全国解体工事業団体連合会宛てに郵送します。すると、試験実施日の10日前までに受験票メールが送られてきます。この受験票メールは、印刷したものを受験日当日に持参する必要があります。
資格取得に必要な費用
解体工事施工技士試験(令和3年度)の受験料は、申込方法及び決済方法によって異なります。インターネット申込(クレジットカード決済)の場合が最も安く16,500円(受験料:15,000円+消費税1,500円)、インターネット申込(コンビニエンスストア決済)の場合は17,000円(受験料:15,000円+消費税1,500円+決済手数料500円)、書面申込の場合は19,800円(受験料:15,000円+事務費3,000円+消費税1,800円)となります。
また、前述した解体工事施工技術講習(令和3年度)の受講料も同様に申込方法及び決済方法によって変動があり、インターネット申込(クレジットカード決済)の場合は27,500円(テキスト代・消費税含む)、インターネット申込(コンビニエンスストア決済)の場合は28,000円(テキスト代・消費税含む)、書面による郵送申込の場合は30,800円(テキスト代・消費税含む)となります。
解体工事施工技術講習を受講してから、解体工事施工技士試験を受験するとしたら、必要な費用は44,000円(クレジット決済の場合)から、50,600円(書面申込の場合)となります。