これまでの記事では、土壌汚染調査から対策工事に至るまでの全体の大まかな流れと、土壌調査・対策工事の3つのフェーズのうちの第1フェーズに当たる地歴調査、第2フェーズの状況調査・詳細調査の概要や方法、費用についてご紹介してきました。土壌汚染調査の3つのフェーズとは、①地歴調査②状況調査・詳細調査(表層土壌調査・ボーリング調査)③土壌汚染対策工事です。今回の記事では、フェーズ3の土壌汚染対策工事の方法や作業の流れ、費用について解説いたします。
土壌汚染対策工事とは
地歴調査や状況調査によって、対象の土壌汚染の範囲と深度を特定することができたら、次はフェーズ3に当たる土壌汚染対策工事に入ります。土壌汚染対策工事には、掘削除去や原位置浄化など、さまざまな手法があり、予算や作業環境、特定有害物質の種類によって最適な手法は異なります。以下では、土壌汚染対策工事の方法の区分やそれぞれの特徴について説明していきます。
『土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)』によれば、土壌汚染対策工事における汚染の除去等の工程は、汚染が確認された部分の土壌(基準不適合土壌)を掘削して区域外の汚染土壌処理施設で処理する「区域外処理」と、基準不適合土壌の掘削の有無に関わらず区域内で浄化等の処理や封じ込め等の措置を行う「区域内措置」の2つに区分されます。また、後者の「区域内措置」はさらに、基準不適合土壌の掘削を行い、かつ汚染土壌処理施設への搬出を行わない「オンサイト措置」と、基準不適合土壌の掘削を行わず原位置で汚染の除去をする「原位置措置」に分けられます(1)。
図1環境省『土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)』より
土壌汚染対策工事(区域外処分)の方法
区域外処分は、「土壌汚染の除去(区域外処分)」と「区域外土壌入換え」に大別されますが、いずれも重機を用いた掘削除去工事が必要となります。掘削除去工事は、もっとも一般的な土壌汚染対策工事の方法です。区域外処分では、汚染のある土壌を重機で掘削し、区域外の汚染土壌処理施設へ搬出後、そこで処理をすることになります。掘削除去工事を行う場合、汚染土壌を丸ごと掘削し運び出すため、全ての特定有害物質に対処できるだけでなく、施工期間が短く、確実にすみやかに汚染土壌を取り除くことができます。ただ、掘削除去工事は施工コストが高額で、狭隘地ではさらに割高になってしまうという欠点もあります。
掘削除去工事の流れは、以下のようになります。汚染のある土壌を油圧ショベルで掘削し、ダンプカーに積み込み、代わりに安全性の確認された健全土を埋め戻します。搬出された汚染土は、場外の処理施設へ運ばれ、そこで処理されます。汚染土壌処理施設には、「浄化処理施設」、「セメント等製造施設」、「埋立処理施設」、「分割等処理施設」の4種類があります。「浄化処理施設」では、汚染土壌に含まれる特定有害物質の除去や不溶化処理を行います。「セメント等製造施設」は、汚染土壌をセメント等製品の原材料として再利用し、セメント等を製造する施設です。「埋立処理施設」は、その名の通り汚染土壌を埋立処分するための施設を指します。「分割等処理施設」では、他の処理施設での処理をスムーズに行うために、汚染土壌に混ざっているコンクリートくずや岩の除去等の調整が行われます(2)。
土壌汚染対策工事(区域内措置)の方法
環境省が発行している『区域内措置優良化ガイドブック―オンサイト措置及び原位置措置を適切に実施するために―』によると、土壌汚染対策工事の区域内措置には、汚染された土壌等を適切に管理する「管理型」の対策と、対象地から汚染を取り除くもしくは浄化する「除去型」の対策があります(3)。
「管理型」の対策としては、遮水壁、難透水性地盤、舗装等によって汚染土壌をそのままの状態で封じ込め、特定有害物質が広がることを防止する「原位置封じ込め」や、汚染土壌に薬剤を注入・撹拌し、特定有害物質が地下水などに溶け出さないように処理を施す「原位置不溶化」、汚染土壌の表面を被覆することで人への曝露を物理的に遮断する「舗装」「盛土」「立入禁止」等があります。「原位置封じ込め」の対象物質は第一種特定有害物質、第二種特定有害物質、第三種特定有害物質で、「原位置不溶化」は第二種特定有害物質(溶出量のみ)、「舗装」「盛土」「立入禁止」は第二種特定有害物質が対象となります。
「浄化型」の対策は、掘削を伴い区域内で措置をする「オンサイト浄化」と、土壌の掘削を行わずに原位置で実施する「原位置浄化」に分けられます。
「オンサイト浄化」は、掘削した汚染土壌をオンサイトで抽出・分解等の処理するもので主として第一種特定有害物質に有効な措置となります。掘削除去工事と比較すると安価となりますが、狭隘地での施工は割高となり、対象となる特定有害物質の種類が限定的です。オンサイト浄化には、掘削した土壌を加熱することで特定有害物質を抽出または分解する「熱処理」、掘削した土壌に薬剤を添加し、化学反応によって特定有害物質を分解する「化学処理」、微生物のはたらきによって特定有害物質を分解・浄化する「生物処理」、真空抽出などの方法で特定有害物質を捕集する「抽出処理」等の方法があります。
「原位置浄化」は、掘削を伴う工法よりも安価な措置ですが、施工期間が長く、定期的なモニタリングが必要となります。原位置浄化は特に第一種特定有害物質に対して効果があります。原位置浄化の方法には、吸引装置を使って土壌中に含まれる特定有害物質を回収する「土壌ガス吸引」、地下水に溶け込んだ特定有害物質を地下水とともに汲み上げて回収する「地下水揚水」、地下水の中に空気を送り込み、揮発した特定有害物質を改修する「エアースパージング」など、特定有害物質を抽出するための「原位置抽出」、「化学処理」「生物処理」など、薬剤や微生物のはたらきによって特定有害物質を分解する「原位置分解」、汚染土壌に水や薬剤等を注入して、特定有害物質を溶け出させた後、揚水等によって回収する「原位置土壌洗浄」が挙げられます。
土壌汚染対策工事にかかる費用
土壌汚染対策工事は、汚染土壌に含まれる特定有害物質の種類や、敷地の広さ、地下水の有無、予算や工期の長さ、対策後の土地の用途等によって、最適な施工方法が異なります。変動要素が多いため、必要な予算は個々のケースによって大きく異なります。あくまで目安となりますが、掘削工事を行う場合には、汚染土壌の処分費や埋め戻し作業費、運搬費を含めて、1㎥あたり、3万円~10万円以上が相場とされています。また、前述の通り、区域内措置の場合、施工費は比較的安くなり、可能であれば掘削を伴わない原位置浄化が最も安価で、1㎥あたり2万円~3万円ほどの費用で収まる場合もあります。
株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。