産業廃棄物や化学物質による土壌の汚染は地下水汚染や生態系の崩壊を引き起こし、人間の健康にも悪影響を及ぼします。今回は土壌汚染対策基準について説明した後、土壌汚染対策における工法について説明します。
土壌汚染対策法の基準値について
土壌汚染対策法では、土壌の特定有害物質による汚染から私たちの健康を維持し環境保全する必要があります。
土壌汚染対策法基準は、特定有害物質による土壌汚染等の有無を判断する基準であり、土壌溶出量基準、土壌含有量基準、地下水基準の3つからなっています。
特定有害物質とは土壌や地下水に含まれることが原因で人の健康に被害を生ずるおそれがある有害物質として土壌汚染対策法施行令で定めた26物質のことです。
第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)、第二種特定有害物質(貴金属等)及び第三種特定有害物質(農薬等)があり、各物質ごとに土壌溶出量基準や土壌含有量基準等の基準値が設定されています。
土壌溶出量基準及び地下水基準は、土壌に含まれる特定有害物質が溶け出し、地下水等から飲料水にともなって間接摂取して問題ないレベルとしての基準です。
土壌含有量基準は、土壌に含まれる特定有害物質を経口又は皮膚より直接接種しても問題ないレベルとしての基準です。
土壌溶出量基準については、すべての特定有害物質に設定されていますが、土壌含有量基準については、特定有害物質のうち貴金属を中心とする9物質についてのみ定められています。
土壌汚染の除去等工法の措置区分について
土壌汚染の除去等の措置は、基準不適合土壌を掘削して区域外の汚染土壌処理施設で処理する区域外措置と、基準不適合土壌の掘削の有無に関わらず区域内で浄化等の処理や封じ込め等の措置を行う区域内措置に区分されます。基準不適合土壌とは汚染土壌のことです。区域内措置はさらに基準不適合土壌の掘削を行い、汚染土壌処理施設への搬出を行わないオンサイト(on-site)措置、基準不適合土壌の掘削を行わず原位置で汚染の除去等の措置を行う原位置インサイト(in-site)措置に区分されます。
■区域外処理
・土壌汚染の除去
・区域外土壌入替え
■区域内措置
①オンサイト(on-site)措置(土壌の掘削を伴う)
・遮水工封じ込め、遮断工封じ込め
・不溶化埋め戻し
・土壌汚染の除去(オンサイト浄化)
・区域内土壌入替え
・土壌汚染の除去(区域外処理)のうち、例えば掘削工事等などの区域内で行う工事
②原位置措置(in-site)措置(土壌の掘削を伴わない)
・地下水の水質の測定
・地下水汚染の拡大の防止(揚水施設、浄化壁)
・原位置封じ込め
・原位置不溶化
・土壌汚染の除去(原位置浄化)
・盛土、舗装、立入禁止
土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)
(https://www.env.go.jp/water/dojo/gl_ex-me/pdf/08_chpt5-3.pdf)より
区域内措置を実施する際は、これらの区分の特徴をみて基準不適合土壌又は特定有害物質の飛散・流出を防ぐために措置を講じなければなりません。
土壌汚染対策における「管理型」と「除去型」について
土壌汚染が確認された場合の対処方法として、汚染の除去は行わず、有害物質が人の身体に取り込まれる経路を遮断して管理する「管理型」、汚染の除去を行い土の中の有害物質の濃度を基準に適合するレベルまで下げる「除去型」の2種類に分かれます。
「管理型」では主に、舗装、盛土、原位置封じ込め、地下水の水質の測定、不溶化の対策を、「除去型」では主に、原位置浄化、掘削除去の対策を行います。
以下で詳しく解説していきます。
土壌含有量基準に不適合の場合に適応される「管理型」の対策・工法について
土壌含有量基準に不適合の場合に適応される「管理型」の対策・工法についてご紹介します。
舗装
基準不適合土壌の上面を、厚さ10cm以上のコンクリートまたは厚さ3cm以上のアスファルトで舗装し、基準不適合土壌に直接触れることを防止する方法です。
盛土
基準不適合土壌の上に適合土を厚さ50cm以上盛り、基準不適合土壌に直接触れることを防止する方法です。
土壌入替え(区域内)
基準不適合土壌とその下の適合土をいったん掘削して、それぞれの土壌を区別して仮置きし、基準不適合土壌を深部に、適合土を浅部に入れ替えて埋め戻す方法です。
土壌入替え(区域外)
基準不適合土壌の上部を掘削後、区域外で適切に処理し、掘削した箇所を適合土で埋め戻す方法です。
立入禁止
一時的な措置として基準不適合土壌の範囲周辺に、人がみだりに立ち入ることを防止するよう囲い設置します。また、基準不適合土壌の飛散等を防止するため地表をシートにより覆います。
土壌溶出量基準に不適合の場合に適応される「管理型」の対策・工法について
土壌溶出量基準に不適合の場合に適応される「管理型」の対策・工法についてご紹介します。
地下水の水質の測定
基準不適合土壌に起因する地下水汚染の状況を的確に把握できる地点に観測井戸を設置し定期的に地下水を採取し地下水中の特定有害物質の濃度を測定する方法です。
原位置不溶化
基準不適合土壌の存在範囲に薬剤を注入・撹拌し、土壌中の有害物質が水に溶け出さないように処理(不溶化)する方法です。
不溶化埋め戻し
基準不適合土壌をいったん掘削し、場外や場内のプラントで薬剤を混合し、有害物質が水に溶け出さないように処理(不溶化)し、溶出量基準に適合することを確認後、掘削範囲に埋め戻す方法です。
原位置封じ込め
基準不適合土壌の周囲を地下水の流れを遮るための壁(遮水壁)で囲い、雨水の浸透を防止するために上部を舗装等によって覆い、基準不適合土壌を封じ込める方法です。
遮水工封じ込め
基準不適合土壌をいったん掘削して、仮置きし、掘削部の底面および側面に遮水層を設け埋め戻し、埋め戻した基準不適合土壌の上部は雨水の浸透を防止するために舗装等によって覆い、基準不適合土壌を封じ込める方法です。
地下水汚染の拡大防止
基準不適合土壌に起因する地下水汚染の拡大を的確に防止できる場所に地下水中の特定有害物質が分解または吸着する機能を備えた透過性地下水浄化壁等を設置する方法です。
遮断工封じ込め
基準不適合土壌をいったん掘削して、仮置きし、掘削部の底面および側面に鉄筋コンクリート等の外部仕切り(遮断層)を設け、埋め戻し、埋め戻した基準不適合土壌の上部は、雨水の浸水を防止するためにコンクリート蓋によって覆い、基準不適合土壌を封じ込める方法です。
土壌含有量基準・土壌溶出量基準のどちらに不適合の場合でも適応される「除去型」の対策・工法について
土壌含有量基準・土壌溶出量基準のどちらに不適合の場合でも適応される「除去型」の対策・工法についてご紹介します。
原位置土壌洗浄
対策範囲に注入井戸を設置し、水等を注入し基準不適合土壌中に含まれる有害物質を地下水に溶け出させ、その後有害物質を含む地下水を揚水井戸から汲み上げ、有害物質の種類に応じた処理措置により有害物質を除去する方法です。
掘削除去
基準不適合土壌を掘削し、場外あるいは場内で適正に処理する方法です。掘削箇所は浄化処理した土壌、あるいは適合土で埋め戻します。
土壌溶出量基準に不適合の場合に適応される「除去型」の対策・工法について
土壌溶出量基準に不適合の場合に適応される「除去型」の対策・工法についてご紹介します。
土壌ガス吸引
地下水面より上部にある基準不適合土壌の分布域に吸引井戸を設置し、真空ポンプ等により井戸内を減圧し、気化した有害物質を吸引後、活性炭に吸着する等して除去する方法です。
地下水揚水
地下水面より下部にある基準不適合土壌の分布域等に揚水井戸を設置し、水中ポンプ等により地下水を汲み上げ、有害物質の種類に応じた処理装置により有害物質を除去する方法です。
生物的分解(バイオレメディエーション)
対象範囲内に注入井戸を設置し、微生物の働きを活性化させる薬剤や栄養塩を注入し、微生物による有害物質の分解作用を促進する方法です。
化学的分解(酸化・還元分解)
対象範囲に注入井戸を設置し、薬剤を注入し、化学反応により基準不適合土壌に含まれる有害物質を分解する方法です。
最後に
土壌汚染対策法基準、土壌汚染の除去等の工法ついてご紹介してきました。土壌汚染の除去にうつる前に必ず事前調査を行わなければなりません。土壌汚染の除去のみならず事前調査・分析もしっかりとやってくれる業者を探すことが重要です。
株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
【参考URL】
・土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)
・パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)
・パンフレット「区域内措置優良化ガイドブック」| 環境省
(https://www.env.go.jp/water/dojo/gb_me/01.pdf)
(https://www.env.go.jp/water/dojo/gb_me/02.pdf)
(https://www.env.go.jp/water/dojo/gb_me/03.pdf)
・中小事業者のための土壌汚染対策ガイドライン| 東京都環境局
(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/chemical/soil/support/guideline.files/r3dojouguideline_all.pdf)