アスベストの有無に関わらず、建築物の解体・改修・補強工事において、アスベストが含まれているか否かの調査報告を遅延なく行う必要があります。
工事・解体を行う際にはどのような対応や資格が必要となるでしょうか。
この記事ではアスベストに関わる資格について説明していきます。
アスベストの危険性について
アスベストは、非常に細かな繊維でできており、空気中に飛散すると呼吸とともに人間の肺に入り込み、分解されることなく肺に残ってしまう性質を持ちます。そして10~40年という長い期問を経て、肺がん、じん肺、中皮腫という重大な病気を発症させます。
労働安全衛生法等の法令の規制対象となるアスベストは、現在では製造や使用が禁止されています。しかしアスベストが規制される以前に建てられた建物にはアスベストが含まれており、今後そのような建物の解体が必要となります。アスベストを含む建築物等の解体・改修工事を行う場合には、石綿障害予防規則等の法令に基づき、アスベスト含有の有無の事前調査、労働者に対するアスベストばく露防止措置、作業の記録・保存などを行う必要があります。
アスベストレベルについて
アスベストのレベルは、「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」によって分けられています。アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。
アスベストに関する資格
アスベスト処理工事を行う業者に明確な資格制度はありません。ただし事業を行ううえで「石綿作業主任者の選任」、「労働者全員に石綿特別教育を実施 」、「特別管理産業廃棄物管理責任者の設置」などが必要です。
その他にも以下の役割の担当者を選定する必要があります。
●石綿取扱作業従事者
●石綿作業主任者
●特別管理産業廃棄物管理責任者
●アスベスト診断士
●建築物石綿含有建材調査者
●作業環境測定士
それぞれ詳しく見ていきましょう。
石綿取扱作業従事者
石綿取扱作業従事者はアスベストを取り除くための専門の資格です。
石綿取扱作業従事者の特別教育を受けていない場合、作業関係者以外は現場に入ることはできません。
石綿作業主任者
石綿作業主任者は、労働安全衛生法で定められた国家資格です。技能講習を修了した人の中から事業者によって選任されます。石綿作業主任者は、労働者をアスベストの汚染から守るにはどの方法がよいのかを選び、予防装置を点検したり、保護具の使用状況を監視したり、現場での指揮も行います。現場監督のような存在ですが、除去作業もするので労働者でもあるのです。
石綿作業主任者技能講習修了者とは
特定化学物質等作業主任者技能講習修了者(平成18年3月まで)
第1種の作業環境測定士
建築士法に基づく、一級建築士及び二級建築士の免許登録者
建設業法に基づく、一級施工管理技士(建築施工管理)の資格を有する者
労働安全衛生法に基づく、労働衛生コンサルタントの資格を有する者
アスベストを含むものの除去に関し、3年以上の実務経験をもつ者
アスベスト有無の事前調査に関し、1年以上の実務経験をもつ者
監督内容
粉じんの吸引を防止するための作業指示
吸排気措置などの予防装置の点検
保護具の確認
退避指示
特別管理産業廃棄物管理責任者
事業所は、特別管理産業廃棄物管理責任者を設置しなければなりません。特別管理産業廃棄物管理責任者は、アスベスト除去作業後の廃棄処理業務が最後まできちんと実施されるように管理します。主な業務は、現場から廃棄物がどのくらい排出されているのかを把握する、現場に適した処理計画を立てる、保管状況を確認する、委託業者を選ぶなどです。
アスベスト診断士
アスベスト診断士は、既存の建築物のアスベスト調査や取り扱いのアドバイスができる資格です。「石綿の有無の調査の基本がわかる者」や「石綿処理工事の監査ができる者」などの養成を目的として発足しました。主な仕事内容としては、以下の通りです。
アスベストの使用場所の調査
処理の要否と処理方法の判断
アスベストを含む建物の解体工事が適正判断
アスベスト診断士の取得方法
建築物石綿含有建材調査者
建築物石綿含有建材調査者は、建築物の解体や改修を行う際にアスベストの有無を調査する資格です。「一般」「一戸建て」「特定」という3つの種類があり、それぞれで従事できる建築物が異なります。
一戸建ては、戸建て住宅の調査の専門の資格であり、一般と特定は、一戸建ても含めた、全ての建築物、構造物を調査できます。また、令和5年10月1日より、建築物石綿含有建材調査者が調査にあたることが義務付けられたため、取得は必須となります。
作業環境測定士
作業環境測定士は、アスベストが飛散する可能性がある場所で、濃度やサンプリングの解析ができる資格です。労働安全衛生法に定められた国家資格で、第一種と第二種の2種類があります。
第一種作業環境測定士:デザイン・サンプリング、分析(解析を含む)のすべて
第二種作業環境測定士:デザイン・サンプリング、簡易測定器による分析業務のみ
第二種作業環境測定士は従事できる業務が定められているため、取得前に必要な作業内容を確認しておきましょう。
実際に解体作業に係る資格
1.建設機械施工技師(1級や2級)
2.土木施工管理技士(1級や2級)
3.建築施工管理技士(1級や2級)
4.とび技能士(1級や2級)
5.解体工事施工技士
アスベストを含む建築物の解体工事業者を選ぶ際は、安すぎる業者には注意をすること、調査資格から解体工事に係る資格を保有する業者の選定が重要です。アスベスト含有調査では、気が付かない箇所の見落としが原因で健康被害のリスクがあります。また、解体工事における大きな問題に不法投棄があります。廃棄費用を削って利益を上げる目的で行われるようですが、不法投棄が発覚した場合、解体業者と排出業者に行政から原状回復の措置命令が出され、この命令に従わなかった場合、5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が適用されることになっています。
労働者全員への石綿特別教育が必要です
労働者がアスベスト除去作業を行う場合、事業者は「石綿特別教育」を実施しなければなりません。(石綿障害予防規則 2005年7月1日施工)※1これは、労働者をアスベストの汚染から守るために必要な講習なのです。
2023年10月からの大気汚染防止法が改正に伴い、アスベスト除去に必要な資格が変わりました。アスベストの有無にかかわらず、2023年10月1日以降着工の解体・改修工事において事前調査と報告が義務化されます。
調査を行える資格は以下の通りです。
●特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
●一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
●一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者)
●2023年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている者
改正以降はアスベスト診断士の事前調査が認められなくなるため注意しましょう。
しかし、アスベスト診断士であれば日本アスベスト調査診断協会に入会できます。
アスベスト解体工事は専門的な知識と技術が必要です
アスベストは人体に有害であり、取扱いには十分な注意が必要です。アスベスト解体工事を請け負う業者は「アスベストの有害性」「粉じんの発散防止」「保護具の使用方法」など必要な講習を受ける義務があります。解体業者に工事を依頼する際は、アスベスト除去工事の経験と実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。また、補助金の活用も視野に地方公共団体の補助金制度に関しても確認しておきましょう。