土壌汚染対策法が出来て以来、人々の土壌汚染に対しての意識が高くなっています。土地を売却しようと思ってその土地が土壌汚染されている土地だった場合、又は売却にあたり土壌汚染が発覚する場合などもあり土地の売主は土壌汚染も気にして動かなくてはなりません。
土地売買の流れ
売主が土地を売却したいとなった場合、土地の売買を仲介してくれる不動産会社を探します。不動産会社は買主探しから売買契約、決済までを手助けしてくれるため売主の負担を減らしてくれます。まずは売りたい土地の査定を受けます。土地の査定額は不動産会社によって異なる場合があるため複数の業者に依頼をすることが大切です。
不動産会社が決まったら査定を元に土地の売出し価格を決定させ、その後は不動産会社が広告を出す→物件見学→交渉・契約→決済→土地の引き渡しまで行ってくれる流れです。
土壌汚染されている土地を売買するにあたっては買主へ説明義務があります。
土壌汚染されている土地の説明義務
土壌汚染されている土地において売主(宅地建物取引業者)は必ず買主に説明を行わなければなりません。これは宅地建物取引業法第47条の禁止事項の「重要事項不告知の禁止」に当たり、重要な事項について故意に事実を告げず又は不実のことを告げる行為をしてはならないというものです。土壌汚染されている土地は「重要事項」に該当されるため説明義務が必要となります。
売主が土壌汚染について故意に事実を告げず、または虚偽の報告をした場合は「事実不告知等禁止違反」で2年以下の懲役もしくは300万円以下(法人1億円以下)の罰金またはこれらの併科が課せられます。
また売主が買主へ土壌汚染されていることを告げずに土地を売却した場合売買契約が取り消される場合もあります。
土壌汚染は契約不適合責任に該当する
契約不適合責任とは、あらかじめ目的物に対して取り決めた種類や品質・数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合につき売主側で負担する責任のことを言います。2020年4月施行の改正法民法で定められた制度で債務不履行責任の一つされています。
契約不適合責任以前は瑕疵(かし)担保責任という、当事者が想定している商品の品質、性能、状態が不完全である瑕疵(かし)すなわち欠陥状態のことをいっており土壌汚染も、売買された土地に隠された瑕疵(かし)があるとされていました。
瑕疵(かし)担保責任後改正で契約不適合責任になっても、土壌汚染は、隠されたものかどうかが問題でなく、引き渡された目的物が取り決めた種類や品質・数量に関して契約の内容に合っているかどうかが問題視されるため契約不適合責任も土壌汚染は該当します。
土地売買トラブル回避の土壌汚染状況調査
売主が持っている土地が土壌汚染されているかどうか不明な場合もあります。売却後に買主とのトラブルを避けるためにも売却前に土壌汚染調査を行うと安心です。
土壌汚染対策法に基づく調査は大きく分けて4つあります。
①有害物質使用特定施設の使用の廃止時
②一定規模以上の土地の形質変更の届出の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認めるとき
③土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認めるとき
④自主調査
いずれも環境大臣又は都道府県知事が指定する指定調査機関が環境省令で定める方法により調査を行わなければならなくなっています。
土地の売買での土壌汚染状況調査は④自主調査に該当します。法に則った方法で自主調査を行い、土壌汚染が判明した場合に土地所有者等が都道府県知事に区域の指定を申請することができます。(土壌汚染対策法第14条)
土壌汚染がないに越したことはないですが、万が一土壌汚染が判明した場合は、土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生ずるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域として認定される「要措置区域」や指定基準を超える汚染状態はあるものの、土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生ずるおそれがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域として認定される「形質変更時要届出区域」の区域指定を受けてその後浄化を行い、都道府県知事に区域指定を外してもらうことにより行政の浄化お墨付きを受けた上で不動産を流通させるという方法が多くとられています。(1)
「要措置区域」に指定された場合、原則として土地所有者に対して汚染の除去等の措置を講ずべきことが都道府県知事から指示されます。指示された結果、地下水等の摂取によるリスクに対応するため、地下水の水質の測定、原位置封じ込め、遮水工封じ込め、地下水汚染の拡大の防止、遮断工封じ込め、不溶化といった対策がとられます。直接摂取によるリスクに対応するため、舗装、立ち入り禁止、土壌入替え、盛土といった対策がとられます。その他、掘削除去や原位置浄化などの対策もとられます(1)。指示はいずれも当該汚染による人の健康に係る被害を防止するため必要な限度において行われるものであることに注意しなければならないですが、指示された措置と同等以上の効果を有すると認められる措置を講じてもよいこととなっています。
「形質変更時要届出区域」に認定された場合、汚染土壌の摂取経路がなく健康被害が生ずる恐れがないため、汚染の除去等の措置は必要ではありません。そのままの状態では措置を講ずべきことが指示されることはないですが、土地の形質の変更を行う際に施行方法等については届出が必要で、施工方法が環境省で定める基準に適合しない場合は施工方法について変更を命じられることもあります。
土地の価値を決める不動産鑑定評価における土壌汚染は個別的要因の一つとして価格形成に大きな影響がある有害物質が地表又は地中に存することをいいます。実務上は、原則として土壌汚染対策法の特定有害物質を中心として各自治体の条例及びダイオキシン類対策特別措置法において対象となる有害物質が各法令等の基準値を越えて存在すれば価格形成に大きな影響があるものとされます。
土壌汚染対策法は人の活動に伴う人への健康に係る被害の防止の観点から規定されており、調査又は措置に係る義務についても、所有者等に負担を負わすことが妥当化の考慮もされていますが、不動産鑑定評価において考慮すべきは価格形成に大きな影響がある土壌汚染があるかどうかを調査します。そのため自然に由来するものも含み法令等による調査の義務がないことのみをもって土壌汚染がない、ということは出来ません。(2)
土壌汚染状況調査は、専門知識と調査技術を有する専門業者に調査してもらうもので売主自身が行うものではありません。国が土壌汚染対策法に基づく指定調査機関として認定している業者に頼むことで安心出来ます。
土壌汚染対策法に基づく指定調査機関| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/kikan/)
最後に
土壌汚染されている土地は除去等の対策をしない限り一般的に価値が低い土地とされています。しかしながら売主は土壌汚染されているのを知っていて故意に告げず土地売却を行うと重要事項不告知の禁止、及び契約不適合責任に問われます。土壌汚染されている土地を売却する場合は事前に土壌汚染調査・土壌汚染除去を行うことが大切です。また、土壌汚染されているか分からない土地を売却する場合も事前に土壌汚染調査をすると安心して土地を売却することが出来るため土壌汚染対策工事に特化した業者に問い合わせすることをおすすめします。
株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について
株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
(1)土壌汚染と不動産取引| 国土交通省 (https://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/2017/67-5.pdf)
(2)不動産鑑定評価における土壌汚染の取り扱い| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/sesaku_kondan/03/mat03.pdf)
参考URL
・土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)
・パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省 (https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)