アスベストが含まれる建物を解体する際は、通常の解体工事作業に加え、アスベスト除去の工事も実施する必要があります。アスベストの除去工事は危険を伴うため、専門知識や特別な措置や作業が必要です。この記事ではアスベストの除去方法を解説していきます。

アスベストとは

石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。

アスベストが問題視されている理由

アスベストは肉眼では見ることができない程繊維が細かいため、飛散しやすく人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。

また、WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

アスベストのレベルについて

そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。

アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。
アスベストレベルは発塵性によってレベル分けされており、飛散性が高ければそれだけ、解体工事での飛散リスクにつながり近隣への影響も及ぼしやすくなります。
そのため、飛散の危険性にあわせて飛散防止策を講じなければなりません。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル1に分類される建材は「石綿含有吹付け材」です。石綿含有吹付け材は、アスベストにセメントやバーミキュライト、ロックウールなどを混ぜ、吹付け機で施工したものです。表面は綿状で柔らかく、深さが数cm程度あるのが特徴です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む建材を指します。

アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。

事前作業

アスベストレベルに関わらず以下の作業が共通で発生します。

1.事前調査
2.作業計画の作成と周知
3.解体等の作業における法届け出
4.事前調査結果・作業内容の掲示・表示
5.資格者の設置・教育・健康診断
6.呼吸用保護具用意
7.作業記録の保存
8.湿潤化

アスベストレベル1・2・3の除去作業

アスベストレベル1・2・3共通で用いられる除去作業の工法があります。

除去工法

アスベスト含有吹き付け材を下地から取り除いていく工法を除去工法と呼びます。
専用の機材を使用して除去していくため、費用は高額になるケースが多いです。
リムーバル工法とも呼ばれるもので、アスベスト含有層を下地から取り除く方法。アスベストを完全に取り除いてしまうため、建物の解体時などの際に、再度、除去する必要もなく、もっとも推奨される工法です。

アスベストレベル1・2の除去作業

アスベストレベル1・2・3共通で用いられる除去作業には3つの工法があります。

①封じ込め工法

既存のアスベスト含有吹き付け材の上から溶剤を吹きかけることで外側からアスベストが飛散しないように封じ込める工法を封じ込め工法と言います。

除去工法と比較すると、もともとあったアスベストが残ってしまう点が難点で、建物自体を解体する時にアスベストを除去しなければなりません。

②囲い込み工法

アスベスト層部分を板材などのアスベストではない素材のものを取り付けて、完全に覆うことによりアスベストを密封することでアスベストの飛散を防ぐ方法を「囲い込み工法」と呼びます。

「囲い込み工法」も「封じ込め工法」と同様にもともとあったアスベストが残ってしまうのが難点です。

アスベストレベル3の除去作業

③剥離工法

薬品でアスベストが含まれている仕上塗材や下地調整材をやわらかくして取り除く方法です。薬品によって湿潤化されるため、散水をする必要がなく、作業後の処理も楽。取り残しがある場合、他の工法との併用が必要。この工法は主にアスベストレベル3の除去作業で用いられることが多いです。

アスベストレベル2の除去作業

超高圧水を噴射してアスベストを含んだ塗材を除去する方法。アスベスト含有層を十分に湿潤化することが出来るので、アスベストの飛散を抑えることができます。水だけを使用しているので、環境への影響も低いといわれています。この工法は主にアスベストレベル2の除去作業で用いられることが多いです。

解体・撤去方法の注意点

屋根・外壁工事の場合

・建築物等の4面に、建築物等の高さ以上の防じんシート、プラスチックシート等を設置

・原則、原形のまま壊さずに手ばらし

・外した成形板の投下・重機による踏みつけ厳禁

・散水などにより十分湿潤化して、撤去作業を行う

・足場つなぎのため、外装材を部分的に撤去する場合には、部分的な湿潤化、又は高性能真空掃除機で吸引しながら撤去

内装・天井裏に石綿含有吹付けがある場合

・長年の劣化により吹付け材が劣化・脱落し、天井上に堆積しているおそれがあるとき、隔離養生後に天井解体することが必要(天井のみの取替え改修工事でも隔離養生が必要、届出が必要となることもあります。)

・場合によっては、天井上の堆積物を分析し、堆積物の石綿の有無を確認することも必要

除去処分に関して

飛散防止対策を施し、特別管理産業廃棄物として処理します。

処分の手順

廃棄物は耐水性の材料で二重に梱包するか、固形化する。

廃棄物の運搬を委託する場合は、当社にて収集運搬し、処分については、「特別管理廃棄物処分業者」に委託する。

管理票において適切に処分されたことを確認する。

補助金について

アスベストレベル1に該当する解体作業には補助金が支給される場合があります。

民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めに関して、国で補助金制度を設けており、補助金制度がある地方公共団体では地方公共団体経由で補助金が支給されます。しかしながら、補助制度を導入していない地方公共団体もあるので、補助金制度に関しては近くの地方公共団体に確認が必要です。

補助金の概要

①補助事業の内容:建築物の吹付けアスベスト等1)のアスベスト除去、または囲い込み、封じ込め

②対象建築物:吹付けアスベスト等1)が施工されている建築物

③対象とする費用内容:対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)

④補助率: 2/3以内(ただし地方公共団体の補助額を超えない範囲)

1)アスベスト除去等で補助対象としているのは、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールです。

参考:”アスベスト対策Q&A - “,”国土交通省”https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/Q&A/index.html#a43