環境省が今年2022年3月24日、土壌汚染対策法施行規則(平成14年環境省令第29号)及び汚染土壌処理業に関する省令の一部を改正する省令を公布しました。
ちなみに省令とは大臣が発する命令のことで、執行命令と委任命令がありますが、ここでは土壌汚染対策法の施行規則の改正についてですから、執行命令を指します。
この施行規則の改正のポイントはどこにあるのでしょうか。
改正の趣旨
そもそも、なぜ改正するのでしょうか。土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)は、土壌汚染に関する調査の契機を広く確保するために、同法第4条第1項に、一定規模以上の土地の形質を行う際の事前届出の義務規定を設けています。
例をあげますと、住宅用地のような土壌汚染と無縁のように見える土地であっても、3000m2以上の土地の形質の変更(解体工事や新築工事など地面を掘削したり盛土したりする行為)を行う際、工事着手前に土壌汚染対策法第4条第1項の届出を要します。また、特定有害物質を使用する水質汚濁防止法の特定施設を有する工場においては、900m2以上の土地の形質の変更において事前の届出や調査が必要なことはご存じかと思います。
その形質変更届(同法施行規則23条2第2号)は全国で数多く出されており(令和元年度合計11,227件、環境省HPより)、うち79件に調査命令が出されました。調査機会が確保できた一方で、事業者や自治体の事務負担が少なくない状況にあります。共有地等の土地の所有者が多いケースでは負担が大きくなってしまうのが一因ではないでしょうか。
汚染土壌処理施設の処理能力等を変更する際に都道府県知事の許可が必要となりますが、その事務負担も同様に少なくないです。そのため「軽微変更」の場合はその限りではない(変更を届ける必要がない)となりました。
令和の世はIT化が進み、役所もその例に洩れませんが、それでも自治体にとって大きな事務負担を減らそうという方向性が今回の改正に至った根底にあるわけです。
以下、詳しく見てみます。
改正のポイントは2つ
①一定規模以上の土地の形質の変更に関する届出における添付書類の変更(同規則第23条第2項第2号)
土地の形質変更届に添付が求められている土地所有者全員の同意書(当該土地の所有者等の当該土地の形質変更の実施についての同意書)が必要でした。しかし、共有者が多く、相続登記が未了で連絡が取れない場合、同意書がなかなか取得できません。それは土地の有効活用ができず弊害を生むことにつながると指摘されていました。
そこで、この改正により「登記事項証明書その他の当該土地の所有者等の所在が明らかとなる書面」を添付することとなり、同意書に土地の所有者等の所在が明らかとなる内容が記載されているのであれば、該当する書類として扱うことができるようになったのです。
②汚染土壌処理施設に関する軽微な変更の規定の変更(汚染土壌処理業に関する省令の一部を改正する省令第9条)
法第23条第1項の環境省令で定める軽微な変更は、次のいずれにも該当しない変更とするとなりました。
○汚染土壌処理施設の種類の変更
○汚染土壌処理施設の構造の変更であって、次に掲げるいずれかに該当するもの
- ・処理の根幹となる設備の変更(浄化等処理施設のうち、浄化を行うための施設にあっては浄化設備、溶融を行うための施設にあっては溶融設備、不溶化を行うための施設にあっては反応設備、セメント製造施設にあっては熱処理設備、埋立処理施設にあっては遮水構造、擁壁又はえん堤、分別等処理施設にあっては異物除去設備又は含水量調整設備、自然由来等土壌利用施設にあっては全ての設備)
- ・悪臭の発散又は騒音若しくは振動の発生、処理業省令第4条第1号リに掲げる排出水基準、同号ヌに掲げる排除基準又は同号ヲに掲げる大気有害物質の量に係る変更(当該変更によって周辺地域の生活環境に対する影響が増大しないものを除く)
○汚染土壌処理施設の処理能力の増大
○汚染土壌処理施設において処理する汚染土壌の特定有害物質による汚染状態の変更
改正前と後を比較
改正された箇所は以下の通りです。
①(同法第四条第一項の土地の形質の変更の届出)
第二十三条 法第四条第一項の届出は、様式第六による届出書を提出して行うものとする
2 前項の届出書には、次に掲げる図面及び書類を添付しなければならない。
一 土地の形質の変更をしようとする場所を明らかにした平面図、立面図及び断面図
二 土地の形質の変更をしようとする者が当該土地の所有者等でない場合にあっては、
登記事項証明書その他の当該土地の所有者等の所在が明らかとなる書面←【改正後】
(平二二環境令一・追加、平三一環境令三・令四環境令六・一部改正)
当該土地の所有者等の当該土地の形質のへ変更の実施についての同意書←【改正前】
(平二二環境令一・追加、平三一環境令三・一部改正)
②(処理業省令第9条の汚染土壌処理施設に関する軽微な変更の規定の変更)
(汚染土壌処理業の許可の基準)
第四条 法第二十二条第三項第一号の環境省令で定める基準は、次のとおりとする。
- 一 汚染土壌処理施設に関する基準
- イ~チ (略)
- リ 浄化等処理施設、セメント製造施設、埋立処理施設、分別等処理施設又は自然由来等土壌利用施設のうち自然由来等土壌構造物利用施設にあっては、排出水を公共用水域に排出す場合には、次に掲げる設備が設けられていること。
- (1) 排水口における排出水の水質を次に掲げる基準(以下 「排出水基準」という。)に適合させるために必要な処理設備←【改正後】
- (2) 排水口における排出水の水質を次に掲げる基準(次条 第十八号イにおいて「排出水基準」という。)に適合させるために必要な処理設備←【改正前】
【改正後】(許可を要しない汚染土壌処理業に係る軽微な変更)
第九条 法第二十三条第一項ただし書の環境省令で定める軽微な変更は、次の各号のいずれにも該当しない変更とする。
一 申請書に記載した種類の変更
二 申請書に記載した構造(当該構造について法第二十三条第一項の許可を受けたときは、変更後のもの。以下この号において同じ。)の変更であって、次のいずれかに該当するものとする
三 申請書に記載した処理能力(当該処理能力について法第二十三条第一項の許可を受けたときは、変更後のもの。)の増大
四 申請書に記載した特定有害物質による汚染状態の変更
【改正前】(許可を要しない汚染土壌処理業に係る軽微な変更)
第九条 法第二十三条第一項ただし書の環境省令で定める軽微な変更は、法第二十二条第二項の申請書に記載した処理能力(当該処理能力について法第二十三条第一項の許可を受けたときは、変更後のもの)の減少であって、当該減少の割合が十パーセント未満であるものとする。
同法はいくつかの改正を経てきました。
・平成30年4月1日施行、平成31年4月1日施行
改正点 → 土壌汚染状況調査の実施対象となる土地の拡大、汚染の除去等の措置内容に関する計画提出命令の創設等、リスクに応じた規制の合理化など
・平成29年4月1日施行
改正点 → 土壌の汚染に係る環境基準の追加(クロロエチレンおよび1,4-ジオキサン)、
土壌汚染対策法の特定有害物質の追加(クロロエチレン)など
・平成22年4月1日施行
改正点 → 規制対象区域の分類化、汚染土壌の搬出の規制、汚染土壌処理業の許可制の導入など。
他に、建築工事、造成工事等で3000平方メートル以上の土地の形質の変更を行う場合は、工事着手の30日前までに届出が必要になる。
以上、過去も含めて土壌汚染対策法の改正時は環境省や自治体のホームページを閲覧するのもいいですが、株式会社エコ・テックのホームページ(コラムなども)は、コンパクトにまとめられており、要点を把握するには最適です。
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