アスベストが含まれる建物を解体する際は、通常の解体工事作業に加え、アスベスト除去の工事も実施する必要があります。アスベストの除去工事は危険を伴うため、専門知識や特別な措置や作業が必要なので、通常の解体作業と比較すると高額になります。
結論から述べると、アスベストの解体費用の相場は処理面積によってやや異なりますが、300㎡以下の相場は2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡と言われています。
アスベストとは
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。
アスベストの危険性
アスベストは肉眼では見ることができない程繊維が細かいため、飛散しやすく人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。
また、WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。
アスベストのレベルについて
そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。
アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。
レベル1:発じん性が非常に高い
最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。
レベル2:発じん性が高い
2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。
レベル3:発じん性が比較的低い
3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む 建材を指します。
アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。
アスベストの解体について
アスベストの解体工事には以下の手順が必要となります。
1.事前調査 2.除去作業準備 3.除去作業 4.事後作業
義務化された解体工事前のアスベスト調査や必要な事前準備作業があるので、そちらを遵守し、解体作業者および近隣の方々の健康に配慮し、作業計画、作業実行、事後処理を行いましょう。
アスベストの解体費用の相場は以下です。
アスベスト処理面積 |
解体費用相場 |
300㎡以下 |
2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡ |
300㎡~1000㎡ |
1.5万円/㎡ ~ 4.5万円/㎡ |
1000㎡以下 |
1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡ |
上野表を見ると、1㎡あたりに価格幅があるのがわかります。アスベストは発じん性によってレベル分けがされています。
アスベストレベルは1~3まであり、アスベストレベル1が最も危険性が高いです。
アスベストレベル1解体費用相場
アスベストレベル1の解体費用相場は1.5万円~8.5万円です。アスベストレベル1は最も発じん性が高く、建物の柱や梁、天井に石綿とセメントの合剤の「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられていることが多く、アスベスト濃度と飛散性の両方が高いので非常に注意が必要です。「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられているため、処理免責が広くなる傾向にあるため、除去の作業費用は高額になりやすいです。
アスベストレベル1の除去作業には3つの工法があります。
①除去工法
アスベスト含有吹き付け材を下地から取り除いていく工法を除去工法と呼びます。
専用の機材を使用して除去していくため、費用は高額になるケースが多いです。
②封じ込め工法
既存のアスベスト含有吹き付け材の上から溶剤を吹きかけることで外側からアスベストが飛散しないように封じ込める工法を封じ込め工法と言います。
除去工法と比較すると、もともとあったアスベストが残ってしまう点が難点で、建物自体を解体する時にアスベストを除去しなければなりません。
③囲い込み工法
アスベスト層部分を板材などのアスベストではない素材のものを取り付けて、完全に覆うことによりアスベストを密封することでアスベストの飛散を防ぐ方法を「囲い込み工法」と呼びます。
「囲い込み工法」も「封じ込め工法」と同様にもともとあったアスベストが残ってしまうのが難点です。
先述した通り、「封じ込め工法」と「囲い込み工法」は既存のアスベストが残ってしまいますが、どちらも以下のメリットがあります。
・費用が比較的安い
・工事期間が短い
・アスベストが飛散を抑えられる
補助金について
アスベストレベル1に該当する解体作業には補助金が支給される場合があります。
民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めに関して、国で補助金制度を設けており、補助金制度がある地方公共団体では地方公共団体経由で補助金が支給されます。しかしながら、補助制度を導入していない地方公共団体もあるので、補助金制度に関しては近くの地方公共団体に確認が必要です。
補助金の概要
①補助事業の内容:建築物の吹付けアスベスト等1)のアスベスト除去、または囲い込み、封じ込め
②対象建築物:吹付けアスベスト等1)が施工されている建築物
③対象とする費用内容:対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)
④補助率: 2/3以内(ただし地方公共団体の補助額を超えない範囲)
注1)アスベスト除去等で補助対象としているのは、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールです。
参考:”アスベスト対策Q&A - “,”国土交通省”https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/Q&A/index.html#a43
アスベストレベル2の解体費用相場
アスベストレベル2の解体費用は、1㎡あたり1万円~6万円が目安です。アスベストレベル2の取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。
アスベストレベル2も飛散性とアスベスト濃度が高く、解体工事には注意が必要です。
アスベストレベル3の解体費用相場
アスベストレベル3の解体費用の目安は0.3万円/㎡です。アスベストレベル3の解体作業はアスベストレベル1や2と比較するとアスベストの飛散リスクが低いため、解体費用は低くなります。
一般的な住宅もアスベストレベル3に相当する可能性があるので、住宅を例に挙げると30坪二階建ての建物の場合、屋根にアスベストが使用されていた場合は解体費用がおおよそ20万円です。同じく30坪二階建ての建物で外壁にアスベストが使用されていた場合は、解体費用がおおよそ30万円~40万円となります。
その他、内壁や配管にスベスト含有建材が貼り付けられている場合は、1㎡あたり1万円~6万円程度の除去費用がかかり、天井や梁、柱などにアスベストが吹き付けられている場合は、撤去に1㎡あたり1.5万円~8.5万円程度かかります。
アスベスト解体工事は専門的な知識と技術が必要です
アスベストは人体に有害であり、取扱いには十分な注意が必要です。アスベスト解体工事を請け負う業者は「アスベストの有害性」「粉じんの発散防止」「保護具の使用方法」など必要な講習を受ける義務があります。解体業者に工事を依頼する際は、アスベスト除去工事の経験と実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。また、補助金の活用も視野に地方公共団体の補助金制度に関しても確認しておきましょう。