石綿(アスベスト)とは、天然の繊維性けい酸塩鉱物で、日本語では「いしわた」「せきめん」と言われ、英語では「アスベスト」と言いわれています。
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。しかし、アスベストに関する健康への被害が判明し、1975年に5重量%を超えるアスベストの吹き付けが原則禁止とされました。この記事では、アスベストレベルの違いと必要な対処に関して解説していきます。

アスベストとその危険性に関して

アスベストは天然の繊維状珪酸塩鉱物の一種で先述した通り、アスベストは耐熱性・絶縁性・保温性に優れていることから、、防音材、断熱材、保温材などの建材として多く使用されてきました。

しかしながら、1970年代にアスベストの健康への被害が報告されるようになりました。

アスベストがそこにあることで、直ちに大きな問題を引き起こすというわけではありません。しかし、肉眼では見ることができない程繊維が細かいため飛散しやすく、人が吸い込んだ際に人体に影響を及ぼすことが判明しています。またその健康被害はアスベストを吸い込んでから長い月日をかけて現れると言われており、その潜伏期間は平均40年ということがわかっています。

アスベストが原因で発病する恐れのある病気とは?

WHOの報告により、アスベストの繊維は、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になることがわかっており、肺がんを起こす可能性があることが知られています。

1.中皮腫

中皮腫は、肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜、精巣鞘膜にできる悪性の腫瘍です。発症頻度は胸膜原発のものが最も多く全中皮腫の 90%前後にまで昇ります。若い時期にアスベストを吸い込んだ人の方が悪性中皮腫なりやすいことが知られており、潜伏期間は20年~50年と言われています。

2.アスベスト肺

アスベスト肺とは、アスベストを大量に吸い込んでしまうことにより、肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一種です。肺の線維化が徐々に進行し、酸素-炭酸ガスの交換を行う機能が損なわれるため、呼吸困難が生じます。肺の線維化を起こすものとしては石綿以外の鉱物性粉じんをはじめ様々な原因や原因不明も多くあります。アスベストを大量に吸引せざるを得ない職業、例えば石綿鉱山、石綿製品製造工場、断熱作業など、アスベストが原因となって引き起こされた肺線維症を特に石綿肺とよんで区別しています。潜伏期間は15~20年といわれております。アスベスト曝露をやめたあとでも進行することもあります。

3.肺がん(原発性肺がん)

原発性肺がんは気管支あるいは肺胞を覆う上皮に発生する悪性の腫瘍です。中皮腫と異なり、喫煙をはじめとして石綿以外の多くの原因でも発生します。肺がんは肺細胞の遺伝子にに傷が付くことで発生すると言われており、先述した通り、喫煙、遺伝、環境汚染なども発病の原因となる可能性があります。

しかしながら、アスベストの吸引量が多く、その濃度が高い程肺がんになるリスクは高いことがわかっています。潜伏期間は30~40年程と他のアスベストから引き起こされる可能性がある病気よりも長くなっています。

 

アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていますが、どの程度以上のアスベストを、どのくらいの期間吸い込めば、発症に至のかということは今だ不明な点が多いです。

1975年に取り扱いが規制されたアスベストですが、2006年に含有量0.1%を超えるアスベストを含む製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。つまり2006年以前に建てられた建造物にはアスベストが含まれている可能性があります。アスベスト使用の可能性がある建物の解体のピークは2028年頃になると言われています。アスベストの解体作業ではアスベストの飛散が想定されます。そこでアスベストを含む建造物の解体・改修作業を行う際の「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」において3つのレベル分けがされています。次のパートではアスベストのレベルについて説明していきます。

アスベストのレベルについて

アスベストのレベルは先述した通り、「アスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)」によって分けられています。アスベストのレベルは1から3までの3段階に分けられます。アスベストにおいてはレベル1が最も危険な段階です。通常数値が低い方が危険レベルも低く表記されることが一般的ですが、アスベストにおいてはレベル1が最も危険レベルが高くなっているので、注意が必要です。

アスベストの危険性に関しては以下のようにレベル分けされています。

レベル1:発じん性が非常に高い

最も危険性が高いレベル1は発じん性が高く、取り扱い建材の種類として代表的なのは「石綿含有吹付け材」です。建物の機械室、ボイラー室等の天井、壁に、石綿とセメントの合剤を吹き付けて所定の被膜を形成させ、吸音、結露防止(断熱用)として使われていることが多いです。見た目は綿のように白くモコモコしており、解体する際にこの綿のようなアスベストが飛び広がってしまうので大変危険です。

レベル2:発じん性が高い

2番目に危険性が高く、取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。ボイラーの本体やその配管、空調のダクト等の保温材として、石綿保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材等を張り付けているなどの使用例があります。

これらはレベル1程の飛散は見られませんが、密度が低いため軽く一度崩れると一気に飛び広がる可能性があるため、こちらも危険と言えます。

レベル3:発じん性が比較的低い

3つの中では最も危険度が低いレベル3はアスベストを含む    建材を指します。使用例としては建築物の天井、壁、床などに石綿含有成形板、ビニール床タイル等の貼り付けなどが挙げられます。アスベスト含有建材はアスベストが建材の内部に含まれているので、アスベストレベル1や2と比較するとアスベストが飛散する可能性は低いものの、建材の破損などにより内部からアスベストが飛散する恐れがるので注意が必要です。

ここからはアスベストレベル3における必要な対処や作業について説明していきます。

アスベストレベル3の解体工事について

アスベストレベル3の解体工事は以下の手順で行われます。

1.事前調査 2.除去作業準備 3.除去作業 4.事後作業

2022年4月1日の法改正により解体工事の際のアスベスト調査が義務化されました。従来はアスベストが含まれていることを前提に、必要な対策を行い解体工事を実施すれば事前調査は不要でした。しかし、2022年4月より事前調査が実質義務化されました。この法改正以降ではアスベスト含有建材の有無に関わらず事前調査の結果を都道府県に報告することが義務化されました。

ただし、以下の条件下の場合は除外されます。

建築物の解体:対象の床面積の合計が80㎡未満
建築物の改造・補修、工作物の解体・改造・補修: 請負金額の合計が100万円未満
※請負金額には事前調査の費用は含まず、消費税は含む。

では①の事前調査から詳細を説明していきます。

事前調査とは、工事前に建築物等に使用されている建材のアスベスト含有の有無を調査することをいいます。調査はアスベスト含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。

事前調査では「書面調査」と「現地調査」を行う必要があります。

それぞれ費用は「書面調査」が2万円~3万円、「現場調査」が2万円~5万円(どちらも1現場あたり)です。

「図面調査」は図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、アスベストの使用の有無に関係する情報を読み取ります。

「現地調査」は建物の実地検査を指します。アスベスト含有建材が使用されている可能性が比較的高いとされている天井、壁、柱等を中心に全体を目視により検査します。

 

事前準備作業

事前準備作業は以下の作業を実施する必要があります。

 

事前準備作業

 

(1)作業計画書等の作成   

石綿作業主任者の選任

作業の方法や順序

(2)必要機材・設備の準備              

除去作業に必要な器具の準備

保護具の準備

休憩場所・更衣施設・洗面設備の設置

(3)解体処理工事実施の表示        

 

 

各種掲示の設置

立ち入り禁止区域の設定

周辺環境対策

 

除去作業準備

解体作業前に、以下を準備する必要があります。

除去作業準備

 

(1)養生の実施

床、壁、設備機器への養生

(2)仮設工事の実施

足場等安全設備の設置

(3)設備機器等撤去作業

作業場内の事前清掃の実施

除去の妨げになる、照明器具等を撤去

 

除去作業

実際の除去作業に関しては、以下のことに注意し、作業を実施します。

除去作業

 

(1)アスベスト成形板の湿潤化

浸透しやすい材料(けい酸カルシウム板、岩綿吸音板等)は水又は湿潤剤の噴霧

浸透しにくい材料(Pタイル、スレート板等)は散水しながら除去

 

(2)アスベスト成形板の除去        

 

保護具を着用し原形のままの手ばらしが原則

手ばらしにより除去した成形板は手渡しで運搬

 

事後作業

事後の作業は以下の作業を実施する必要があります。

事後作業

 

(1)施工区画内の清掃       

 

毎日の作業終了時、整理整頓、清掃を実施

清掃中は保護具を着用

(2)養生・仮設物等の撤去

 

床、壁、設備機器への養生撤去

足場等の撤去

(3)除去した建材の搬出   

 

 

安定型最終処分場で埋立処分

マニフェストに「石綿含有産業廃棄物」と記載

(4)後片付け、仕上清掃   

 

 

破片やくずが残らないよう清掃

HEPAフィルタ付き真空掃除機で仕上清掃

 

 

アスベストレベル3の除去解体費用の目安

 

アスベストレベル3の工事費用の目安は、3,000円(税別)/㎡(アスベスト処分費込)となります。

アスベスト解体工事の費用の相場に関しては別記事にてご紹介しているのでぜひご参照ください。