
解体工事を行う際には、解体工事の安全性や近隣住民への配慮が求められます。その中でも特に重要なのが「表示義務」です。解体工事の表示義務とは、解体工事現場に関する情報を適切に表示し、関係者や近隣住民に明確に知らせることを指します。今回は、解体工事の表示義務の概要や遵守すべき内容、違反時のペナルティについてご紹介します。
解体工事における表示義務とは・表示義務の目的
解体工事における表示義務は、解体工事の透明性を確保し、トラブルを未然に防ぐために設けられています。具体的には、解体工事に関する情報を解体工事現場に掲示し、誰でも確認ができるようにすることが求められます。
解体工事における表示義務の目的は、解体工事の内容を明確に示すことで、近隣住民が安心して生活できる環境を整え、解体工事業者を明記することで責任の所在を明らかにします。また、適正な解体工事であることを示すことで違法工事を防ぎ、解体工事現場の管理を徹底することで事故を未然に防ぐことができます。
解体工事における表示義務に関連する法律
解体工事における表示義務は、主に掲示物、看板設置を指しており、建設業法第40条・建設リサイクル法第33条によって義務付けられています。そのため、解体工事を行う際は必ず看板を設置しなければなりません。
建設業法は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、公共の福祉の増進に寄与することを目的として作られた法律です。
建設業法第40条
建設業者は、その店舗及び建設工事(発注者から直接請け負ったものに限る。)の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令の定めるところにより、建設業の名称、一般建設業又は特定建設業の別その他国土交通省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
建設リサイクル法は、特定の建設資材について、その分別解体等及び再資源化等を促進するための措置を講ずるとともに、解体工事業者について登録制度を実施すること等により、再資源の十分な利用及び廃棄物の減量等を通じて、資源の有効な利用の確保及び廃棄物の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的として作られた法律です。
建設リサイクル法第33条
解体工事業者は、主務省令で定めるところにより、その営業所及び解体工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所に、商号、名称又は氏名、登録番号その他主務省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
法令検索| e-Govポータル (https://laws.e-gov.go.jp/)より
また、石綿(アスベスト)を含む建築物の解体工事については、建設業法、建設リサイクル法の他にも、大気汚染防止法・石綿生涯予防規則により石綿(アスベスト)の事前調査の内容と撤去作業の実施内容を記載した看板の設置、立入禁止の看板の設置が義務付けられています。
解体工事における表示義務についての補足
解体工事の掲示物、看板設置は法律で義務付けられていますが、施主の個人情報は掲示しなくて構いません。解体工事の掲示物、看板では解体工事業者の連絡先掲示は必要ですが、施主の個人情報は掲示する必要がありません。そのため、許可なく個人情報が掲示された場合は確認及び各自治体等へ問い合わせをするようにしましょう。
また、石綿(アスベスト)を含まない解体工事でも、「石綿(アスベスト)を使用していない」旨を記載した掲示物、看板の設置が必要となります。
解体工事における表示義務の詳細
解体工事の表示義務には、主に以下の内容を掲示する必要があります。詳しくみていきましょう。
①解体工事の基本情報
解体工事現場には、主に基本情報を明記した掲示板を設置する必要があります。
・解体工事名(例:◯◯建物解体工事)
・解体工事業者の名称・連絡先
・解体工事の期間(開始日と終了予定日)
・許可番号や許可証の有無
②近隣住民への周知
解体工事が始まる前に、近隣住民に対して事前に通知を行うことが推奨されています。
・解体工事のお知らせ文の配布(解体工事開始の1週間前までに)
・騒音・振動対策の説明
・連絡先の明示(苦情対応窓口の設置)
③安全対策に関する表示
解体工事現場では、安全対策の表示も重要です。
・作業員の安全対策(ヘルメット・安全帯の着用義務等)
・解体工事の立ち入り禁止表示
・粉じん・騒音対策の実施状況
④産業廃棄物に関する情報
解体工事では大量の産業廃棄物が発生するため、その適正処理が求められます。そのため、情報を表示する義務があります。
・廃棄物の処理方法
・廃棄物の種類と量
・処分業者の名称・連絡先
解体工事の表示義務違反に対するペナルティ
解体工事の表示義務を怠った場合、以下のようなペナルティが科される可能性があります。
①行政指導・是正勧告
適切な掲示がない場合、自治体から指導が入る場合があります。
②罰則の適用
重大な違反がある場合、建設業法や建設リサイクル法に基づいて罰則が科されることがあります。
③近隣住民とのトラブル
表示が不適切だと、近隣住民とのトラブルの原因となることがあります。
解体工事の表示義務を遵守すべきポイント
解体工事の表示義務を適切に遵守するためにはいくつかポイントがあります。下記でみていきましょう。
①適切な掲示板を設置する
雨風に強い素材で掲示板を作成し、見やすい場所に設置する、必要に応じて大きく目立つデザインにすることで、周囲の人々に注意を促すことができます。そして掲示板は、通行人や作業員が容易に見つけられる場所に設置する必要があります。解体工事現場の入口や主要な通行路沿いに設置することが重要です。
②定期的に内容を更新する
解体工事の進行状況や予定が変更された場合、掲示物の内容もそれに応じて更新する必要があります。古い情報を掲示したままにしておくと、誤解を招き、トラブルの原因になることがあります。定期的に内容を確認し、必要に応じて修正を行うことが大切です。
③近隣住民への説明を怠らない
解体工事着工前に近隣住民へ解体工事の概要を説明することにより、騒音や振動、粉じん等に関する近隣住民からのクレームが発生しないようにする必要があります。具体的には、何時から何時まで解体工事を行うか・解体工事の期間・いつが解体工事のない休日なのかということも伝えることが大切です。解体工事の1週間前くらいまでには近隣住民への挨拶を終わらせることが理想です。
通常は解体工事業者が主導として行います。解体工事の専門的知識を解体工事業者が近隣住民へ説明することにより、説明不足による近隣クレームの回避になります。施主も一緒に挨拶に回ることでトラブルを回避しやすくなります。菓子折りなどを用意して持参することがおすすめです。
また、解体工事終了後も解体工事の騒音や振動、粉じん等による迷惑をかけたことに関するお礼の挨拶をすることも重要です。

最後に
解体工事における表示義務は、解体工事の透明性を確保し、安全対策や近隣住民への配慮を徹底するために不可欠です。表示義務を怠ると、行政指導や罰則の対象となる可能性があるため、適切に対応することが求められます。適正な掲示を行い、解体工事関係者との円滑なコミュニケーションを図ることで、スムーズな解体工事進行が可能となります。解体工事を実施する際は、必ず表示義務を守り、安全でトラブルのない解体工事を目指しましょう。
株式会社エコ・テックの解体工事について
株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。
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参考URL
・法令検索| e-Govポータル
(https://laws.e-gov.go.jp/)
・特定建設作業の規制について| 大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/kotsukankyo/oto/kensetsu.html)