建築解体業界は、古い建物の解体から廃棄物の処理まで行う業界で、ただ建物を解体するだけでなく、廃棄物処理や環境への配慮まで重要な役割を果たしている業界です。建築解体業界の市場規模は拡大傾向にあります。その背景には建物の老朽化、空き家問題があります。今回は建築解体業界の市場規模について、市場背景を主にご紹介していきます。
建築解体業界について
建築解体業界は、建物の解体工事を請け負う企業の総称で、建物や構造物の取り壊しと廃棄物の処理に関連する業界です。この業界は、建設産業と密接に関連しており、建物が寿命になったり、改修が必要となったりした際に需要があります。
建築解体業界の主な活動は、
①建築解体・・・建築解体業者は古いもしくは不要な建物を取り壊す作業を行います。これには爆破解体、機械解体、手作業解体などが含まれます。解体は安全規制と環境への配慮を考慮して行われます。
②廃棄物処理・・・建物の解体から発生する廃棄物(コンクリート、鉄、木材など)は、適切に処理される必要があります。これにはリサイクル、または廃棄物処分施設への運搬などが含まれます。
③環境への配慮・・・建築解体業者は、有害物質の除去、土壌汚染の防止、騒音や振動の管理など環境への影響を最小限に抑える取り組みを行います。また、アスベストなどの有害物質の取り除きなども行います。
建築解体業界は、都市の再開発、空き家の解体、環境保護に貢献する重要な役割を果たしています。また、技術の進歩に伴い、より効率的な解体プロセスが開発されており、業界は常に進化しています。
今後の解体工事件数の増加について
国土交通省の推計によると、吹付けアスベスト等を含む建築材料を使用している可能性がある鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建築物の解体工事件数は今後増加し、2028年頃にピークを迎えるとされています。少し古いデータではありますが、2015年度における事前調査の対象となる解体工事件数は、年間約73万~188万件とされており、増加傾向にあります。
建築解体業界の市場背景
建築解体業界は、建物の老朽化や空き家の増加で需要が高い業界と考えられます。建築解体業界の市場背景には以下があります
①高度経済成長期の建物の老朽化
総務省による2018年度住宅・土地統計調査によると、人が居住している住宅ストック、総住宅数6270万7千戸のうち、1980年以前に建築された住宅は約1,300万戸あり、省エネ性能が不十分な住宅等も多数あることから、これからの住宅の建て替え等による性能向上が必要とされています。
特に、1955年~1973年までの19年間の高度経済成長期にたくさんの建築物が建ちましたが、現在、高度経済成長期から50年あまり経過し、老朽化が進んでいます。
老朽化したマンションであれば、老朽化したエレベーターなどの設備や外壁・共用部分の補修、水回りなど修繕・補修を行うには膨大な費用がかかります。
建替えの場合は、エレベーターがないマンションにエレベーターの設置やバリアフリー化、リフォームなどがつきまといます。
また地震の多い日本では老朽化したマンションでは耐震化対策がされているかも問題視されます。新耐震基準と呼ばれる1981年の建築基準法施行令改正以降の耐震基準を満たしていないと震度6以上の大きな地震に対して崩壊しない保証がないため安全性でも不安が残ります。
このような背景から老朽化したマンションは建替え・解体されることが多いです。
戸建はメンテナンスを定期的にすると長く住むことが出来ますが、老朽化した外壁・水回りなど修繕・補修を行うには膨大な費用がかかります。戸建の場合10年毎にメンテナンスをしていかなければなりません。またリフォームも加わると費用がかさみます。
家族が亡くなって相続した空き家を賃貸にするために建替え、更地にするため解体する場合も多いです。
このような背景から老朽化した戸建は建替・解体されることが多いです。
マンションも戸建も老朽化したら建替え・解体されるため、解体工事の件数は増加傾向にあると言えます。
②空き家の増加
近年空き家は増え続け、問題視されています。総務省による2018年度住宅・土地統計調査によると、2018年には空き家は848万9千戸で、空き家率は13.6%となっています。
空き家は大きく分けて「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」、「その他の住宅」の4つに分類されます。
- ①売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
- ②賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
- ③二次的住宅…別荘など普段は人が住んでいない住宅
- ④その他の住宅…1~3以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など
年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン (https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)より
「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」に関しては売買や賃貸、別荘として使用など管理されていると考えられますが、「その他の住宅」に関してはそのまま放置される可能性が高いとされています。「その他の住宅」は2018年には約349万戸あるとされています。「その他の住宅」に分類される空き家の原因は、核家族化で実家を継ぐ子どもがいない、相続税の負担を考慮しそのままにしているといった面が大きく空き家になっているといえます。
なぜ空き家のまま放置だといけないのかというと、空き家であるだけで土地を所有していることとなり、固定資産税や都市計画税などの税金もかかってきます。一番大きい問題として挙げられるのが近隣に迷惑をかけてしまうことです。家は手入れをしていないと劣化していきます。放置された空き家は、動物が棲み着く・不法投棄される・放火の危険性・不審者や犯罪の危険性や直接的に隣家に影響を及ぼすこととして虫・雑草が生い茂り隣家に侵入し迷惑をかける等が挙げられます。
また、空家法でこの状態が1つでも当てはまれば自治体から「特定空家等」と認められ罰則が適応されることがあります。
このような背景から空き家対策として解体工事の件数は増加傾向にあると言えます。
建築解体業界の市場規模について
国土交通省による2018年度建築工事施工統計調査によると、全国の建築解体業者数は、43,186社に対し、建築解体業全体の市場規模(完成工事高)は、4,857億円、住宅は472億円と発表されています。2016年6月1日から従来の建設業法では、「とび・土工高事業」に含まれている「工作物の解体」を独立させ、建設業許可に係わる業種区分として解体工事業で必要な資格や要件は細かく決められるようになった、「解体工事業」が追加されました。この解体工事業者数は2017年度以降毎年増加傾向にあります。市場規模も拡大傾向ですが、建築解体業者も増えているため雇用も増加傾向にあると言えるでしょう。
最後に
建築解体業界の市場規模について、市場背景を主に述べてきました。建物の老朽化、空き家の増加により今後も建築解体業の市場規模は拡大傾向にあるといえます。近年、複数業者の見積予想金額の自動算出や、施主とのマッチングを行うWebサービスが登場し、住居所有者にとって解体費用の相場が分かりやすくなっていることも、市場規模拡大に一役買っていると言えます。解体工事を行う際には、スムーズに進めるためにもコミュニケーションを取りやすく、サポートが万全な業者を見つけることが大事です。
株式会社エコ・テックの解体工事について
株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。
全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください
参考URL
・石綿飛散防止小委員会(第一回)資料|厚生労働省
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)
・我が国の住生活をめぐる状況等について(前回までの補足)|国土交通省
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100)
・年々増え続ける空き家!空き家にしないためのポイントは? | 政府広報オンライン
(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#secondSection)