アスベストとは、耐火性や断熱性に優れる鉱物繊維のことを指し、過去にはさまざまな建築材料や工業製品に広く使用されていました。しかし、アスベストが人体に害を及ぼすことが判明して以降、除去の必要が高まってきました。

特に、日本では建築物の解体やリノベーション時にアスベストを含む材料が取り扱われるケースが多い状態でした。そこで、アスベストの適切な取り扱いや除去方法に関するルールや法律が整備され、それに伴う届出制度が設けられました。

この記事では、日本におけるアスベスト除去の届出について、その重要性や方法を詳しくご紹介いたします。

アスベスト除去の届出の重要性

アスベストを安全に取り扱うためには、適切な技術や知識が必要です。間違った方法で取り扱うと、アスベスト繊維が空気中に放出され、これを吸い込むことで健康被害を受けるリスクがあります。このため、アスベストの除去に関する作業は、事前の届出と専門的な手法によって行う必要があります。

届出の方法

アスベスト除去の作業を行う際は、以下の手続きを踏む必要があります。

作業開始の30日前までに、所轄の労働基準監督署に届出を行います。

届出書には、作業場所、期間、作業内容、使用する機器や保護具の詳細、作業を行う労働者の数や資格等、必要な情報を記載します。

届出が完了したら、監督署からの指導やアドバイスに従って作業を進めます。

届出の対象

以下のようなケースでのアスベスト取り扱いには、届出が必要となります。

建築物の解体、修理、改修などでアスベストを含む材料を取り扱う場合。

アスベストを使用した製品の製造や修理、廃棄処分を行う場合。

その他、アスベストを取り扱う作業全般。

日本におけるアスベスト除去の届出に必要な書類

アスベスト除去作業を行う際に、所轄の労働基準監督署に提出する必要がある主要な書類は以下の通りです。

アスベスト作業届出書

この書類は、アスベスト作業を行う前に提出するもので、作業場所、作業の期間、使用する機器や保護具の詳細、作業を行う労働者の数や資格等の情報を記入します。

作業計画書

作業の詳細な手順、使用する工具や機器、安全対策、緊急時の対応計画など、具体的な作業内容を記述する書類です。

アスベスト飛散防止計画書

アスベストの飛散を防ぐための具体的な手段や方法を記述する書類です。除去作業中や作業後の清掃方法、保護具の取り扱いなど、飛散を最小限に抑えるための具体的な計画を明記します。

健康診断結果書

アスベスト作業を行う労働者が、定期的に受ける健康診断の結果を記録した書類です。アスベストに関連する疾患の早期発見や予防のために必要です。

労働者教育研修記録書

アスベスト作業を行う労働者に対して、必要な教育や研修を行い、その内容や日時、参加者の名前等を記録した書類です。

 

これらの書類は、アスベスト作業を安全かつ適切に行うための手続きや準備の一部となっており、所轄の労働基準監督署への提出が必須となっています。正確かつ詳細に書類を記入し、アスベスト除去作業を安全に進めるための準備を整え流必要があります。

アスベスト除去工事時の近隣への対応

アスベスト除去工事を行う際、作業現場の周辺に住む住民や近隣の事業所に対して、事前の説明や配慮が求められます。アスベストの飛散リスクや騒音など、工事に伴う様々な影響を考慮して、以下のような対応が必要です。

事前の説明会や広報活動

除去工事を開始する前に、近隣の住民や事業所に対して工事の内容、期間、作業時間帯などを説明する会を開催することが望ましいです。また、チラシや掲示板を利用して工事に関する情報を公開することで、理解を求めることができます。

飛散防止の徹底

アスベストの飛散を防ぐための措置を徹底的に行うことはもちろん、その措置内容を近隣住民に対しても説明し、安心感を持ってもらうことが大切です。

工事騒音や振動への対応

除去工事に伴う騒音や振動は、近隣住民の生活環境に影響を及ぼす可能性があります。作業時間を日中に限定する、適切な騒音防止対策を講じるなどの配慮が必要です。

緊急連絡窓口の設置

何らかのトラブルや問題が発生した際に、近隣の住民や事業所からの問い合わせや対応がスムーズに行えるよう、緊急連絡窓口を設けることが推奨されます。

工事終了後の報告

工事が無事終了した際は、その旨を近隣の住民や事業所に報告するとともに、ご協力やご理解への感謝の意を伝えることが好ましいです。

近隣への適切な対応は、アスベスト除去工事がスムーズに進行するための大切な要素の一つです。住民や事業所の理解や協力を得るためにも、十分な配慮とコミュニケーションを心掛ける必要があります。

アスベスト届出における注意点

アスベストの除去工事に際して行う届出には、いくつかの注意点が存在します。適切な届出を行うために以下のポイントに注意した対応が必要です。

提出期限の厳守

アスベスト作業届出書は、作業開始の30日前までに所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。この期限を逸すると、罰則の対象となる可能性があります。

内容の正確性

届出書の内容は、実際の作業内容や使用機器、保護具などの詳細に合致している必要があります。予定が変更された場合は、改めて届出を行うか、修正の手続きを行います。

健康診断の実施

アスベスト作業に従事する労働者は、定期的な健康診断を受ける義務があります。この結果も監督署に報告する必要がありますので、定期的な実施と記録の保管を怠らないよう注意が必要です。

継続的な研修や教育

アスベスト除去に関する知識や技術は日々進化しています。従事者には定期的な研修や教育を受けさせ、最新の知識や技術を身につけさせることが推奨されます。その履歴も適切に記録として残しておくとよいです。

再届出の可能性

工事の進行中に予定が大きく変更された場合や、アスベストの量や種類に変更が生じた場合など、初めの届出内容と異なる場合が出てきたら、再度の届出や修正が必要となる場合があります。

監督署からの指導やアドバイスの受け入れ

届出を行った後、労働基準監督署からの指導やアドバイスがある場合があります。その内容をしっかりと受け入れ、作業に反映させることが求められます。

アスベストの取り扱いには、人々の健康や安全が関わるため、届出の際の正確性や適切な手続きが極めて重要となります。注意点を踏まえながら、適切な届出を行い、安全なアスベスト除去作業を進めていく必要があります。

アスベスト除去届出の網羅すべき内容

取扱い量の把握

除去するアスベストの量や種類を正確に把握し、届出時にその詳細を記載することが重要です。アスベストの量や種類によって、作業方法や必要な機材が異なる場合があります。

作業者の資格と経験

アスベスト除去作業を行う作業者の資格や経験を明記すること。特に、アスベスト除去作業の経験が豊富な作業者がいる場合、それを明示することで監督署の信頼を得やすくなります。

使用する機材の詳細

使用する機材や工具の種類、特に高度な技術や専用の機材を使用する場合は、その詳細を届出書に記載します。この情報は、作業の安全性や効率性を評価する上で重要となることがあります。

作業エリアの対策

作業エリアをどのように囲うか、空気の清浄化や換気の方法、非作業者の立入り制限方法など、具体的な現場の安全対策についても詳細に記述するとよいでしょう。

廃棄物の取り扱い

アスベストを除去した後の廃棄物の取り扱い方法や、処分場所、輸送方法なども届出の内容として重要です。環境への影響や再飛散を防ぐための対策をしっかりと計画しておく必要があります。

緊急時の対応計画

アスベスト除去作業中に事故や緊急事態が発生した場合の対応計画を明記すること。具体的なアクションプランや連絡体制、必要な機材や薬品の準備状況などを詳細に説明します。

 

アスベスト除去の届出は、単なる手続きではなく、作業の安全性や品質を保証するための重要なステップとなります。届出の内容をしっかりと網羅し、万全の態勢で作業に臨むことが求められます。

アスベストの適切な取り扱いは、人々の健康を守るために極めて重要です。日本では、アスベスト除去に関する届出制度が設けられており、適切な方法での作業が求められています。これに従い、安全にアスベストを除去することが、求められています。