アスベストが含まれる建物を解体する際は、通常の解体工事作業に加え、アスベスト除去の工事も実施する必要があります。アスベストの除去工事は危険を伴うため、専門知識や特別な措置や作業が必要なので、通常の解体作業と比較すると高額になります。高額となるアスベスト処理ですが、国土交通省や地方自治体が補助金・助成金制度があるので上手く利用しましょう。各自治体によって申請方法や必要な手続きが異なるので事前にしっかりと確認しましょう。この記事ではアスベスト除去の助成金について説明していきます。
アスベストとは
石綿(アスベスト)は安価で、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性耐、薬品性、耐腐食性、耐摩耗性など多くの機能において優れていたため、耐火、断熱、防音等の目的で使用されてきました。
アスベストの危険性について
アスベストは、非常に細かな繊維でできており、空気中に飛散すると呼吸とともに人間の肺に入り込み、分解されることなく肺に残ってしまう性質を持ちます。そして10~40年という長い期問を経て、肺がん、じん肺、中皮腫という重大な病気を発症させます。
労働安全衛生法等の法令の規制対象となるアスベストは、現在では製造や使用が禁止されています。しかしアスベストが規制される以前に建てられた建物にはアスベストが含まれており、今後そのような建物の解体が必要となります。アスベストを含む建築物等の解体・改修工事を行う場合には、石綿障害予防規則等の法令に基づき、アスベスト含有の有無の事前調査、労働者に対するアスベストばく露防止措置、作業の記録・保存などを行う必要があります。
アスベストの解体費用について
解体する建物にアスベストが含まれていた場合、解体工事前にアスベスト除去工事を行う必要があります。
アスベストの解体費用の相場は以下です。
アスベスト処理面積 |
解体費用相場 |
300㎡以下 |
2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡ |
300㎡~1000㎡ |
1.5万円/㎡ ~ 4.5万円/㎡ |
1000㎡以下 |
1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡ |
上野表を見ると、1㎡あたりに価格幅があるのがわかります。アスベストは発じん性によってレベル分けがされています。
アスベストレベルは1~3まであり、アスベストレベル1が最も危険性が高いです。
アスベストレベル1解体費用相場
アスベストレベル1の解体費用相場は1.5万円~8.5万円です。アスベストレベル1は最も発じん性が高く、建物の柱や梁、天井に石綿とセメントの合剤の「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられていることが多く、アスベスト濃度と飛散性の両方が高いので非常に注意が必要です。「アスベスト含有吹付け材」が吹き付けられているため、処理免責が広くなる傾向にあるため、除去の作業費用は高額になりやすいです。
アスベストレベル2の解体費用相場
アスベストレベル2の解体費用は、1㎡あたり1万円~6万円が目安です。アスベストレベル2の取り扱い建材の種類は石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材などが挙げられます。
アスベストレベル2も飛散性とアスベスト濃度が高く、解体工事には注意が必要です。
アスベストレベル3の解体費用相場
アスベストレベル3の解体費用の目安は0.3万円/㎡です。アスベストレベル3の解体作業はアスベストレベル1や2と比較するとアスベストの飛散リスクが低いため、解体費用は低くなります。
一般的な住宅もアスベストレベル3に相当する可能性があるので、住宅を例に挙げると30坪二階建ての建物の場合、屋根にアスベストが使用されていた場合は解体費用がおおよそ20万円です。同じく30坪二階建ての建物で外壁にアスベストが使用されていた場合は、解体費用がおおよそ30万円~40万円となります。
その他、内壁や配管にスベスト含有建材が貼り付けられている場合は、1㎡あたり1万円~6万円程度の除去費用がかかり、天井や梁、柱などにアスベストが吹き付けられている場合は、撤去に1㎡あたり1.5万円~8.5万円程度かかります。
アスベストの補助金・助成金について
アスベストに関する補助金・助成金には地方公共団体によって異なりますが、アスベスト解体の調査または除去に対して補助金が支給されます。
アスベスト除去工事の補助金
民間建築物に対するアスベスト除去、または囲い込み、封じ込めに関して国土交通省は補助制度を創設しており、補助金制度がある地方公共団体において、活用することができます。
吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールが補助の対象です。
対象建築物
吹付けアスベスト等が施工されている住宅・建築物
対象とする費用内容
対象建築物の所有者等が行う吹付けアスベスト等の除去、封じ込めまたは囲い込みに要する費用(建築物の解体・除去を行う場合にあってはアスベスト除去に要する費用相当分)
国の補助率
地方公共団体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)
アスベスト調査の補助金
民間建築物に対するアスベスト調査等に関して、国土交通省は補助制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)を創設しており、補助金制度がある地方公共団体において、活用することができます。
吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウールが対象です。
対象建築物
吹付けアスベスト等が施工されているおそれのある住宅・建築物
補助内容
吹付け建材中のアスベストの有無を調べるための調査に要する費用
国の補助額
限度額は原則として25万円/棟(民間事業者等が実施する場合は地方公共団体を経由)
アスベスト除去作業までの手順
1.事前調査
解体予定の建築物にアスベスト建材が含まれているか調査します。
1.)書面調査
2.)現地調査(現地による目視調査)
3.)採取
4.)分析調査
5.)報告書の作成
2.作業計画の作成
1.)作業の方法及び順序
2.)粉じんの発散の防止方法
3.)労作業者の石綿等の粉塵のばく露を防止する方法
4.)石綿作業主任者の選任
5.)石綿濃度の測定
6.)解体廃棄物等の処理方法
7.)周辺環境対策
3.除去作業準備
1.)養生の実施
2.)仮設工事の実施
3.)設備機器等撤去作業
4.除去作業
レベル1はそのまま解体工事してしまうと、大量のアスベストが飛散する危険性があります。まずはアスベスト撤去作業が必要になるのです。
除去方法の種類
①囲い込み
封じ込め工法とは建物内のアスベストを固定させるための溶剤を吹きかけて外側からアスベストが飛散しないように封じ込めるという方法です。
封じ込め工法の特徴は外側からアスベストを固める作業のため工事期間が短く、アスベストが飛散する可能性も極端に低いことから工事中に近隣にアスベストが蔓延する可能性も避けることができます。また工事費用も比較的抑えられるというメリットがあります。
②封じ込め
囲い込み工法とはアスベストが露出している部分をそのままに、非アスベストをその外側から取り付けてアスベストを完全に密封し飛散を防ぐという方法です。
囲い込み工法の特徴としては封じ込め工法同様に工事期間を短縮できるという点とフォーム工事期間に囲い込み工法を行うことで一定の効果を得られるという利点があります。
しかし、封じ込め工法や囲い込み工法のどちらの場合も工程に違いはありますが、アスベストを完全に除去できるわけではありません。
そのため、またアスベストが露出して飛散する確率はゼロではないという懸念があるため、飛散性が高い場合には除去工法が積極的に進められています。
除去の手順
1.)集塵・排気装置の稼動
2.)抑制剤による湿潤化
3.)抑制剤の効果を確認後、ケレン棒等により吹付けアスベストを掻き落とす
4.)状態に応じて、再度抑制剤を吹付けた後、ワイヤーブラシ当を使用して付着しているアスベストを取り除く
5.)目視により除去が十分に行われたことを確認後、吹付けアスベスト除去面に粉塵飛散防止処理剤を散布する
事後作業
1)施工区画内の清掃
2.)養生・仮設物等の撤去
3.)除去した建材の搬出
4.)後片付け、仕上清掃