土壌汚染対策における形質の変更をしようとする場合、形質変更をしようとする30日前までに都道府県に対して、形質変更する旨の届出をする必要があります。今回は、要措置区域・形質変更時要届出区域について解説した後、土地の形質の変更に係る届出についてご紹介します。

土壌汚染区域の指定(要措置区域・形質変更時要届出区域)

 都道府県知事は、土壌汚染状況調査の結果報告を受けた際に報告を受けた土地を、健康被害のおそれの有無に応じて①要措置区域又は②形質変更時要届出区域に指定します。(以下2つまとめて「要措置区域等」とする)

①要措置区域

要措置区域とは、土壌汚染状況調査の結果汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がある区域のことです。健康被害が生ずるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要となります。

②形質変更時要届出区域

形質変更時要届出区域とは、土壌汚染状況調査の結果汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がない区域のことです。健康被害が生ずるおそれがないため、汚染の除去等の措置は必要ではありません。

下記で詳しくみていきましょう。

要措置区域・形質変更時要届出区域に指定されるまで

土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がない場合は要措置区域・形質変更時要届出区域に指定されません。それではどうなると指定されるのでしょうか。

①土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がある
健康被害のおそれがある場合

土壌汚染の摂取経路があり、健康被害が生じるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域、すなわち要措置区域に指定されます。

②土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がある
→健康被害のおそれがない場合

土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行われた区域を含む)、すなわち形質変更時要届出区域に指定されます。

つまり、要措置区域・形質変更時要届出区域に指定されるのに共通していることは、「土壌溶出量基準・土壌含有量基準を超える有害物質がある」ということです。そこから健康被害があるかないかにより要措置区域又は形質変更時届出区域に指定されます。

形質変更時要届出区域では、土壌汚染の摂取経路がなく健康被害の生ずるおそれがないため、汚染除去等の措置を求められることはありません。ただし、土地の形質の変更を行う場合は、都道府県知事等にあらかじめ届出が必要となります。

土地の形質の変更について

 土地の形質の変更とは、土地の形状を変更する行為全般をいい、いわゆる「掘削」と「盛土」に区別されます。例えば、宅地造成や土地の掘削を伴う工事等のことです。 

①掘削に該当する行為(例)

・道路路盤材の撤去

・建築物や工作物の基礎、縁石、側溝、配管の敷設及び撤去に伴う掘削

・抜根(伐採は含まない)

・電柱の設置、杭打ち、矢板打設、地盤改良工事

・鋤取り等の整地、段切り

・埋蔵文化財調査に伴う掘削

②盛土に該当する行為(例)

・砂利、縁石等の敷設や道路舗装

・土壌の仮置き

③土地の形質の変更に該当しない行為(例)

・原地盤の形質を変更しない行為

(例)路盤材を残したまま、アスファルト部分だけを削り取る行為(なお、この後、再度、アスファルトを敷設する行為も土地の形質の変更に該当しません。)

・港湾、河川などの浚渫

ただし、浚渫土を砂浜等に盛る行為は、盛土に該当します。

一定の規模以上の土地の形質の変更を行う場合の手続きについて| 熊本県 (https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/51/99204.html)より

土壌汚染対策法において土地の形質変更に係る届出について

土壌汚染対策法第4条の規定により、3,000平方メートル以上の土地の形質変更をしようとする場合、形質変更をしようとうする30日前までに、都道府県に対して、形質変更する旨の届出をする必要があります。 

届出の対象となる土地・対象外の土地について

切土区画のみでなく、盛土区画や整地区画も含め、全体の面積が3,000平方メートルを超えれば、原則としてすべてが届出の対象となります。ただし、例外として以下のものは届出の対象外となります。 

①盛土しか行わない場合

②形質変更の深さが最大50センチメートル未満であり、区域外へ土壌の搬出を行わず、土壌の飛散又は流出を伴わない行為

③農業を営むために通常行われるもので、区域外へ土壌を搬出しない行為

④林業の用に供する作業路網の整備で、区域外へ土壌を搬出しない行為

⑤鉱山関係の土地において行われる土地の形質変更

土地の形質変更に係る届出(土壌汚染対策法)について| 茨城県 (https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/haitai/kikaku/kikaku/dotai-todokede.html)より

届出の要件

届出の要件は、

①一般の土地・・・掘削範囲と盛土範囲の合計面積が3,000平方メートル以上 

②現に有害物質使用特定施設を設置している工場又は事業場の土地・・・掘削範囲と盛土範囲の合計面積が900平方メートル以上

です。また、ここでの有害物質使用特定施設とは、水質汚染防止法第2条第2項に規定する特定施設であって、同項第1号に規定する有害物質(特定有害物質であるものに限る)を製造、使用または処理するもののことです。

届出の期限

届出の期限は、土地の形質の変更に着手する日の30日前までです。ここでの「着手する日」は、土地の形質の変更そのものに着手する日のことで、契約事務や設計等の準備行為は含みません。

届出者

届出を出す、届出者は、「土地の形質の変更をしようとする者」です。具体的には、当該工事の施工に関する計画の内容を決定する、計画決定権者が該当します。土地の所有者と、その土地を借りて開発行為等を行う開発業者等の関係では、開発業者等が該当します。工事の請負の発注者と受注者の関係では、その施行に関する計画の内容を決定する責任を有している者、一般的には発注者が該当します。

土地の形質変更に係る届出の提出書類について

土壌汚染対策法において土地の形質変更に係る届出の提出書類は、以下の通りです。

①土地の形質の変更届出書

②形質変更しようとする場所を明らかにした平面図、立面図、断面図

③形質変更に係る所有者の同意書(届出者が所有者と異なる場合)

④場所を示す近隣図

⑤登記事項証明書(登記簿謄本)

⑥公図

⑦建物・施設配置図

⑧その他、地歴に関する資料等

各都道府県により提出書類が異なる場合があります。土地の形質変更に係る届出を提出する際は、提出する各都道府県にあらかじめ問い合わせをすることを推奨します。

土地の形質変更に係る届出後の調査命令について

 土地の形質変更に係る届出のあった土地が、次の①~⑤のいずれかに該当した場合、都道府県知事が「土壌汚染のおそれ」があると判断し、土壌汚染対策法第4条第3項により、土地所有者等に対して、指定調査機関に土壌汚染状況調査を行わせ、その結果を120日以内に都道府県知事に報告するよう、調査命令が発出されます。 

①土壌の特定有害物質による汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合しないことが明らかである土地

②特定有害物質又は特定有害物質を含む固体もしくは液体が埋められ、飛散し、流出し、又は地下に浸透していた土地

③特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理する施設に係る工場又は事業場の敷地である土地又は敷地であった土地

④特定有害物質又は特定有害物質を含む固体もしくは液体をその施設において貯蔵し、又は保管する施設に係る工場又は事業場の敷地である土地又は敷地であった土地

⑤ ②から④と同等程度に土壌の特定有害物質による汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合しないおそれがある土地

なお、土壌汚染対策法第4条第2項の調査命令が発せられない場合であっても、直ちに、その土地に汚染がないとの認定がされるものではありません。

一定規模以上の土地の形質変更を行う場合の手続き(法第4条)| ひょうごの環境 (https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/jp/mizu_dojo/leg_250/leg_346)より

最後に

土地の形質変更の届出後に調査命令が出ると、指定調査機関に土壌汚染状況調査を頼まなくてはなりません。指定調査機関は、環境省のホームページ(https://www.env.go.jp/water/dojo/kikan/index.html)から探すことができます。

 株式会社エコ・テックの土壌汚染対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

参考URL

土壌汚染対策法について(法律、政令、省令、告知、通知)| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/law/kaisei2009.html)

パンフレット「土壌汚染対策法のしくみ」| 環境省
(
https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/index.html)

・第3章要措置区域の指定| 環境省
(
https://www.env.go.jp/press/files/jp/20572.pdf)

一定の規模以上の土地の形質の変更を行う場合の手続きについて| 熊本県 (https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/51/99204.html)