アスベスト調査における費用の内訳としては、主に以下のものがあります。
・事前調査費用
・分析調査費用
・サンプル採取費用
上記の費用のほかに、調査報告書の作成費用がかかる場合があります。事前調査費用には、図面調査と現地調査の費用が含まれます。図面調査とは、建築された当時の図面を参考にしながら、建材にアスベストが含まれているどうかを調べることです。また、現地調査とは、図面調査の結果を元にして建物の外観や内部を目視で調査することを指します。目視で確認できない場合は分析調査を行います。分析調査費には定性分析と定量分析の費用が含まれます。定性分析とは、建材にアスベストが含まれているかどうかを分析する方法であり、定量分析とは建材にアスベストがどのくらい含まれているかを調べる方法です。そのため、定性分析でアスベストが含まれていることが判明した場合に定量分析を行います。定量分析はX線を利用して行いますが、より正確な分析を行うために建材から試料を採取して分析を行う場合があります。サンプルとしての試料を採取する場合は別途費用がかかります。自治体によってはアスベスト調査に関する補助も行っている場合があるので、必要に応じて利用するとよいです。
事前調査費用
書面調査(第一次スクリーニング):2~3万円(1現場につき)
現場調査(第二次スクリーニング):2~5万円(1現場につき)
事前調査とは、工事前に建築物等に使用されている建材のアスベスト含有の有無を調査することをいいます。調査はアスベスト含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。
事前調査の第1段階は書面による調査(設計図書等の調査)です。図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、アスベストの使用の有無に関係する情報を読み取ります。現地での目視による調査を効率的・効果的に実施できるよう準備を行う必要があります。発注者や建築物の過去の経緯をよく知る施設管理者や工事業者等の関係者にヒアリングすることで、図面から読み取れない情報を得ることも重要です。書面調査は、調査対象建築物に係る情報を理解・把握することにより、現地での目視調査の効率性を高めるとともに、石綿含有建材の把握漏れ防止につながるなど、調査の質も高めるものであり、重要な工程となります。その後、書面調査の情報を元に現地にて目視調査を行います。書面にはのっていない箇所にアスベストが使用されていたり、見落とされがちな箇所もあるので、知識をもった専門家による調査をおすすめします。
分析費用
定性分析:3~6万円(1検体につき)
定量分析(X線回析分析法):3~6万円(1検体につき)
定性分析+定量分析:4~10万円(1検体につき)
アスベストの使用に関して、0.1%の含有を超えた吹付け材や保温材等の使用が禁止されています。その含有量を調べるために定性分析や定量分析といった手法が使用されます。 定性分析とは、吹付け材や保温材等に0,1%を超えたアスベストが含まれているか否かを調べる分析です。偏光顕微鏡法や位相差分散顕微鏡法・X線回析法といった方法によってアスベストの含有量を明らかにしていきます。アスベストの有無を分析した後で、アスベストが使用されていると判断された場合は定量分析を行って、その使用率を計算することになります。
アスベスト粉じん濃度測定費用
敷地内環境(総繊維数);5,000円前後(1カ所につき)
室内環境(総繊維数);5,000円前後(1カ所につき)
アスベスト除去工事現場(総繊維数);5,000円前後(1カ所につき)
分析走査電子顕微鏡法(アスベストの同定):1.5万円前後(1カ所につき)
アスベストの除去作業時やアスベストを使用している建築物の維持管理(室内環境モニタリング)、あるいは解体時などに空気中の繊維状粒子(アスベスト粉じん)の濃度測定を行います。
その他
アスベストの分類により調査費用が異なってきます。アスベストは発じん性によって3段階に分類されます。発じん性とは、外力を与えた際に飛散する度合いのことで、飛散しやすいものほどレベルの数値が低くなります。
レベル1:発じん性が著しく高い(成分分析が必要)
柱や梁、天井にアスベスト含有吹き付け材が吹き付けられていることが多く、この場合レベル1として分類され、作業を慎重に進めなければなりません。このためアスベスト除去費用が高くなりやすく、費用相場は1.5~8万円/㎡程度と考えるとよいです。
レベル2:発じん性が高い(成分分析が必要)
アスベスト含有保温材やアスベスト含有断熱材、アスベスト含有耐火被覆材はレベル2に分類され、建物の内壁や配管、柱に施工されていることが多いです。発じん性が高く、レベル1と同様に慎重に作業を進めなければなりません。解体費用相場は1万円~5万円/㎡程度が目安となります。
レベル3:発じん性が比較的低い(事前調査を行わずアスベスト含有建材として処分可能)
レベル3はその他アスベスト建材で、屋根材やサイディング外壁材にアスベストが採用されているケースが多いです。レベル3はレベル1やレベル2と比べると危険性は低いと言われており、手作業で除去工事が行われることもあります。このため、レベル3のアスベスト除去費用相場は0.3万円/㎡程度となります。30坪程度の住宅の屋根であれば10~20万円程度、外壁であれば20~30万円程度の費用がかかると考えておけばよいです。
アスベスト解体の補助金制度について
国土交通省は、民間建築物に対するアスベストに対して補助金制度を創設しています。 補助金の有無は地方公共団体(市区町村)によって、支給対象や支給額が異なるので、近隣の地方公共団体に確認・相談する必要があります。地方公共団体によって異なりますが、アスベスト解体の調査または除去に対して補助金が支給されます。
【アスベスト調査費用補助対象となる建築物】
・吹付けアスベスト
・アスベスト含有吹付けロックウール
・吹付けバーミキュライト
・吹付けパーライト
【補助金の金額】
1棟あたり25万円
大気汚染防止法及び石綿障害予防規則の改正により、建築物などの解体・改修工事を行う施工業者は、2022年4月1日以降に着工する一定規模以上の解体・改修工事について、アスベストの使用の有無に関する事前調査の結果を、労働基準監督署及び地方公共団体に報告することが義務付けられました。事前調査は、原則全ての解体・改修工事が対象となります。設計図書等の文書による調査と目視による調査の両方を行う必要があります。このうち、建築物において報告義務が生じるのは、解体部分の床面積の合計が80㎡以上の解体工事と、請負金額が税込み100万円以上の改修工事で、これには個人宅のリフォームや解体工事なども含まれます。なお、報告義務が発生しない場合においても、工事発注者に対して書面で調査結果を掲示する必要がある点に注意が必要です。事前調査については、現時点では建築物石綿含有建材調査者または(一社)日本アスベスト調査診断協会の登録者による調査が「望ましい」とされており、2023年10月以降に義務化される予定です。事前調査の結果、石綿が「有り」または「有りとみなす」となった場合は、法令等に基づき、適正な石綿飛散防止、ばく露防止等の措置を講じることが求められます。