土壌汚染の調査義務が発生する場合について

土壌調査には、法的な義務による調査(法定調査)と、自主調査(任意調査)の2種類があります。土壌汚染の調査義務は、平成14年5月に成立・公布された土壌汚染対策法、または各都道府県が定める条例に該当する場合に生じます。土壌汚染対策法により調査義務が生じる条件には、以下の三つがあります。法的に義務付けられているこれらの調査は、対応する土壌汚染対策法の条文によって、それぞれ①3条調査、②4条調査、③5条調査とも呼ばれます。

① 特定有害物質を製造、使用又は処理する施設の使用が廃止された場合(3条)
② 一定規模以上の土地の形質の変更の際に土壌汚染のおそれがあると都道府県知事が認める場合(4条)
③ 土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合(5条)(1)

これらの場合には、原則的に土地の所有者が、必要な届出を提出し、土壌汚染の調査を依頼し、その調査結果を都道府県知事に報告する義務を負います。

環境省『土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)』より

3条調査について

3条調査は、水質汚濁防止法第二条第二項で定義されている有害物質使用特定施設(以下、特定施設と表記)を廃止する際に、行う必要がある調査です。特定施設とは、「特定有害物質をその施設において製造し、使用し、又は処理するもの(土壌汚染対策法第三条第一項)」を指します。特定有害物質は、水質汚濁防止法第二条第二項第一号で「人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定める物質」とされており、土壌汚染対策法施行令によって鉛、砒素、トリクロロエチレン等、26種類の物質が特定有害物質として指定されています(土壌汚染対策法施行令第1条)。特定有害物質は、揮発性有機化合物の第一種特定有害物質、重金属等の第二種特定有害物質、農薬・PCB等の第三種特定有害物質の3種類に分類されています(2)。
26種類の特定有害物質の内訳は、第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)がクロロエチレン(塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン(塩化ビニリデン)、1,2-ジクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペン(D-D)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ベンゼンの12種類、第二種特定有害物質(重金属等)がカドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、シアン化合物、水銀及びその化合物、セレン及びその化合物、鉛及びその化合物、砒素及びその化合物、フッ素及びその化合物、ホウ素及びその化合物の9種類、そして第三種特定有害物質(農薬、PCB)が2-クロロ-4,6-ビス-1,3,5-トリアジン、N,N-ジエチルチオカルバミン酸S-4-クロロベンジル(別名 チオベン カルブ又はベンチオカーブ)、テトラメチルチウラムジスルフィド(別名 チウラム又はチラム)、ポリ塩化ビフェニル(別名 PCB)、有機リン化合物(ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト、ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト及びエチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホス ホネイトに限る)の5種類となります(2)。

4条調査について

3000㎡以上の土地の形質の変更をする際には、各都道府県知事への届出が必要になりますが、その際に土壌汚染のおそれがあると認められた場合には、4条調査が義務付けられます。ここでの「土地の形質の変更」とは、アスファルトの敷設・引きはがし、道路工事、抜根、土壌の仮置き、建物解体に伴う基礎土壌の掘削、整地、埋蔵文化財調査、くい打ち等を指します(3)。掘削や盛り土の別を問わず、上記の土地の形状を変更する行為全般を行う面積の合計が3000㎡以上になる場合には、土地の形質の変更を行う30日前までに届出が必要となります。しかし、「形質変更の対象区域外への土壌の搬出」。「土壌の飛散または流出を伴う土地の形質の変更」、「形質変更に関わる部分の深さが50cm以上」のいずれにも該当しない場合には、作業面積に関わらず、届出の対象外となります。そのため、土壌を搬出しない農作業(耕起や収穫等)や、林業の作業路網の整備などは届出の対象外となります。また、非常災害のために必要な応急措置として行う行為の場合には、届出は必要ありません。

5条調査について

5条調査は、土壌汚染対策法3条および4条の規定にはあてはまらないが、「土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認める場合」に行われます。対象となる土地の監督行政庁が発する調査命令によって、調査の範囲、特定有害物質の種類、報告の期限が定められ、人の健康被害が生ずるのを防ぐために調査および除去等の措置がとられます。
5条調査の対象となるのは、「土壌汚染が存在する蓋然性が高い土地であって、かつ、汚染があるとすればそれが人に摂取される可能性がある土地(4)」で、『土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)』によれば、「① 土壌汚染の蓋然性が高く、かつ、人の暴露の可能性があること」、「② 調査の命令の対象とならない土地でないこと」の条件を満たした土地が対象となります。
「① 土壌汚染の蓋然性が高く、かつ、人の暴露の可能性があること」について、具体的には、地下水経由の観点もしくは直接摂取の観点から判断がなされます。地下水経由の観点からの土壌汚染が明らかであるか、もしくは汚染のおそれがある土地については、当該土壌汚染に起因して現に地下水汚染が生じ、かつ、当該土地の周辺で地下水の飲用利用等がある場合に、5条調査の対象となります。また、直接摂取の観点からの土壌汚染が明らかであるか、もしくは汚染のおそれがある土地については、当該土地が人の立ち入ることができる状態となっている場合に調査の対象となります。
「② 調査の命令の対象とならない土地でないこと」について、義務調査の対象とならない土地には、「汚染の除去等の措置が講じられている土地」と、「操業中の鉱山及びその付属施設の敷地等」が該当します。
なお、土壌汚染状況調査の対象となる土地の基準は、土壌汚染対策法施行令第3条第1号及び第2号によって規定されています。

自主調査と義務調査

以上が、法的な義務による土壌調査の概要ですが、法的な義務がなくても、いくつかの理由から自主調査を行う場合があります。法的な義務に因らない自主調査の主な目的には、土地を担保に金融機関から融資を受けるための正確な担保価格の把握、土地売買の取引成立後のトラブル防止、土地の買い手への安全性のアピール等が挙げられます。特定有害物質を取り扱わない工場や、特定施設には含まれないガソリンスタンド等の跡地を売却する際など、取引成立後に訴訟トラブルになるリスクを無くすため、自主調査を行うケースがあります。一般社団法人土壌環境センターが会員企業100社を対象に行った『土壌汚染状況調査・対策』に関する実態調査結果(令和2年度)」によれば、対象企業が受注した土壌調査5,629件のうち、自主調査は4,673件にも上り、自主調査が土壌調査全体に占める割合は8割以上となっています(5)。

株式会社エコ・テックの土壌汚染調査及び対策工事について

株式会社エコ・テックでは、調査・分析だけでなく対策方法のプランニングや土地の活用方法のご提案まで、土壌汚染の専門家として様々なアドバイスを行っています。土壌汚染にまつわる一連の問題解決に向け、調査から浄化、リサイクルまで、トータルで承ります。全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので、土壌汚染に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。