アスベスト調査について
建築物等に使用されている建材に石綿が含有しているかの有無を、工事前に調査することを事前調査といいます。調査は石綿含有無しの証明を行うことから始まり、その証明ができない場合は分析調査を行うか、石綿含有とみなすことが基本となります。建築基準法など各種法律に基づき施工された石綿含有建材以外にも、改修や改造、補修などにより、想定できないような場所に石綿が使用されている場合があるため、見落とさないよう、建材等の使用箇所、種類等を網羅的に把握し的確な判断を行う必要があります。
事前調査の対象
①建築時期や規模、用途を問わず、全ての建築物・工作物の解体・リフォーム(改造・補修)工事を行う際は、アスベスト含有建材の有無を調査(事前調査)する必要があります。※建築物等の解体等工事を業者等に依頼しないで、自ら施工する場合も含みます。
②事前調査では、アスベスト含有建材(特定建築材料)の吹付け石綿(レベル1)、断熱材等(レベル2)、成形板等(レベル3)の有無を確認します。
対象となる主な建材
・アスベストを含有する吹付け材
・アスベストを含有する保温材
・アスベストを含有する成形板
・アスベストを含有する仕上塗材
事前調査の主な項目
・アスベスト含有建材の使用の有無
・アスベスト含有建材の種類
・アスベスト含有建材の使用個所
・アスベスト含有建材の量または面積
アスベスト調査の流れ
①書面調査
書面調査では、図面などの書面や聞き取りから情報をできる限り入手し、それらの情報からできる限り多く、石綿の使用の有無に関係する情報を読み取る必要があります。発注者や過去の経緯をよく知る施設管理者や工事業者等の関係者に対するヒアリング等により情報を入手することも重要です。それらにより、工事概要や建 築物等に関する情報のほか、建築物等に使用されている個々の建材を把握するとともに、得られた情報から石綿含有の有無の仮判定を行います。書面調査は、現地での目視による調査(現地調査)を効率的かつ効果的に実施できるよう準備を行うものです。書面調査は、調査対象建築物に係る情報を理解・把握することにより、現地での目視調査の効率性を高めるとともに、石綿含有建材の把握漏れ防止につながるなど、調査の質を高めるものであり、重要な工程です。これらの質と効率を高めるには、建築や建材などの知識が重要となります。
②現地調査(現地による目視調査)
設計図書や竣工図等の書面は石綿含有建材の使用状況に関する情報を網羅しているものではなく、必ずしも建築物の現状を現したものとは限らないことから、書面調査の結果を以て調査を終了せず、石綿の使用状況を網羅的に把握するため、原則として現地で目視調査を行うことが必要とされています。例えば、仕様を満たすため現場判断で設計図書と異なる施工をした場合や、設計図書には残っていない改修が行われている場合があります。そのため、書面調査はあくまで下調べに過ぎず、相違があれば、現地での目視調査の結果が優先されます。
現地での目視調査を踏まえ、建材の石綿含有の有無を判断します。判断は、読み取った建材情報と各種情報との照合による判断、分析による判定、石綿含有みなしと取り扱うことにより行います。石綿含有とみなす場合は、吹付け材や保温材等を作業基準のことなる成形板等や仕上塗材と扱わないよう注意が必要です。石綿含有とみなした場合は、当該解体等工事は石綿含有建材の除去等に該当することはもちろん、当該建材が廃棄物となった際に廃石綿等又は石綿含有産業(一般)廃棄物として扱うことになります。
見落としやすい例
内装等の内側に石綿建材が隠れている例や、一区画のみ石綿建材が使用され見落としやすい例があります。
a 内装仕上げ材(天井ボード、グラスウールやセメント板等)の下に石綿含有吹付け材が存在する例(過去の囲い込み工事等による)
b 石綿含有吹付け材の上からロックウール(石綿含有無し)が吹き付けられる例
c 耐火建築物、鉄骨梁への耐火被覆吹付けロックウール施工時に他部材へ吹きこぼれた例(または、これらを見落とし、天井上吹付けロックウール等の脱落・堆積物を見逃す例)
d 鉄骨造の柱・梁に石綿含有吹付け材が存在しその内装仕上げ材としてモルタル等が使われている例
e 鉄骨造の柱に吹き付けられた石綿含有吹付け材の周囲をブロック等で意匠的に囲われている例
③採取
分析を行うこととなった建材の試料採取については、目的とする分析対象を採取できるよう同一材料と判断される建築材料ごとに、代表試料を選定し、採取しなければなりません。一般に分析は、分析対象の代表性と変動性(均一性)を考慮したものとすべきであり、建材の石綿分析においては、具体的には、現地での目視調査において同一と考えられる範囲を適切に判断し、試料採取において建材にムラがあることを考慮しなければなりません。例えば、吹付け材であれば、色違いの部分や複数回吹付けがなされた場合は、それぞれの施工部位を別の建材と判断する必要があります。また、吹付け材の場合であれば、試料採取は該当する吹付け面積を3等分し、各区分から1個ずつサンプルを採取する必要があります。試料採取箇所の判断を適切に行う観点から、石綿に関し一定の知識を有し、的確な判断ができる者が採取箇所の判断を行うことが重要です。
④分析調査
大防法及び石綿則において、石綿含有ありとみなす場合を除き、石綿含有の有無が不明な場合は分析を行うことが義務づけられています。分析方法は、日本工業規格(JIS)A 1481 規格群をベースとし、その実施に当たっては、厚生労働省の「石綿則に基づく事前調査のアスベスト分析マニュアル」の記載内容を優先する必要がある点に留意する必要があります。これに基づく石綿分析の流れとしては、まず、建材中の石綿の含有の有無を調べるための定性分析を行います。定性分析で石綿が含有していると判定された場合は、含有率を調査するための定量分析を行い、建材中の石綿の含有率(0.1%以下か否か)を確定させます。ただし、定性分析で石綿ありと判定された場合において、定量分析を行わずに、石綿が 0.1%を超えているとして扱うことも可能です。なお、吹付け材については、ばく露防止措置を講ずる際の参考とするための含有率を調査するための定量分析を行うことが望ましいとされています。
⑤報告書の作成
大防法上、特定粉じん排出等作業の届出は発注者に義務づけられており、当該作業に該当するか否か、発注者に報告するための書面を作成することになります。事前調査による記録から、事前調査の結果報告書を作成します。改修工事や今後も建築物等を使用する場合の石綿の除去等については、事前調査の範囲が建築物の工事関連箇所のみとなり、事前調査の報告書も当該箇所のみの結果となります。改修工事等の事前調査の結果が、将来解体等する場合に、調査結果が誤って流用されないよう、調査を実施した範囲、調査対象建材、石綿含有建材の有無と使用箇所について図面や概略図で具体的な場所がわかるように記録を報告書に添付することが必要です。なお、関係者間での情報共有のため、解体の場合であっても、報告書には事前調査の記録を添付することが望ましいです。また、破壊しないと調査できない場所であって解体等が始まる前には調査できなかった場所があった場合については、発注者にあらかじめ報告するため報告書に明記する必要があります。