解体工事施工技士とは、国土交通省管轄の国家資格です。500万未満の解体工事を行うための解体工事業の登録及び施工に必要な技術管理者になることができる資格です。しかし、大掛かりな工事を受けることはできません。工事費が500万円を超えてしまっている場合は、建設業許可を得ている会社に依頼しなければならないとされています。解体工事施工技士は、500万円未満の解体工事に対して、管理者としての資格を持つことのできるもので、指定の金額が超えているのに受注すると違反の対象となりますので注意が必要です。また、解体工事施工技士になるためには実務経験が必要であり、解体工事の現場で仕事をしていなければなりません。指定されている学科を卒業している人と、そうでない人では若干実務経験年数が変わってきますが、短くても1年半、長い人は8年の実務経験を積まなければなりません。実務経験を経て資格試験を受けることが可能となります。資格試験はテスト形式であり、合格して登録することができれば、請負金額500万円未満の解体工事を受けられるようになり、簡易な工事であれば業として行うことが可能となります。解体工事施工技士試験は、建設業法施行規則第七条の三第二項の国土交通大臣登録試験であり、解体工事業に係る登録等に関する省令(国土交通省令)第七条第三号の国土交通大臣登録試験です。合格者は、建設リサイクル法に規定された解体工事業の登録及び解体工事現場の施工管理に必要な技術管理者並びに建設業法に規定された解体工事業許可及び解体工事現場の施工管理に必要な主任技術者の資格要件に該当します。
解体工事施工技士資格制度について
①受験資格
- ・原則として解体工事実務経験年数8年以上
- ・学歴・指定学科卒業によって必要実務経験を短縮
-1.学歴が大学もしくは専門学校(4年制)「高度専門士」
必要な解体工事の実務経験年数:指定学科を卒業した者は卒業後1年6ヶ月以上、指定学科以外を卒業した者は卒業後2年6ヶ月以上
-2.学歴が短期大学もしくは高等専門学校(5年制)、専門学校(2年制または3年制)「専門士」
必要な解体工事の実務経験年数:指定学科を卒業した者は卒業後2年6ヶ月以上、指定学科以外を卒業した者は卒業後3年6ヶ月以上
-3.学歴が高等学校もしくは中等教育学校(中高一貫6年)、専門学校(1年制)
必要な解体工事の実務経験年数:指定学科を卒業した者は卒業後3年6ヶ月以上、指定学科以外を卒業した者は卒業後5年6ヶ月以上
-4.学歴がその他
必要な解体工事の実務経験年数:8年以上
※高等学校の指定学科以外を卒業した者には、高等学校卒業程度認定試験規則(平成17年文部科学省令第1号)による試験、旧大学入学資格検定規程(昭和26年文部省令第13号)による検定試験に合格した者を含む
※「指定学科」は国土交通省令(施工技術検定規則〈土木施工管理・建築施工管理〉)に規定する学科
②試験の内容
1.形態:四肢択一式(50問・90分)及び記述式(5問・120分)
2.出題範囲:土木・建築の基礎知識、解体工事施工の計画、解体工事施工管理、解体工法、解体用機器、安全管理、環境保全、副産物・廃棄物対策、関連法規その他
③合格基準
1.試験委員会で合格基準点を決定
2.四股択一式試験の得点、記述式試験の得点及び合計得点にそれぞれ基準点を設定
④資格者登録制度
- ・合格者は、本人の申請によって全解工連の「解体工事施工技士登録者名簿(毎年発行)」に登録。
- ・登録者には全解工連が「登録証」及び「資格者証(携帯用カード)」を交付。
⑤登録更新
・登録の有効期間は5年間
・更新講習を受講することによって更新
・毎年2~3月に、実施予定
現在の技術者制度について
現在の技術者制度には、建築業法に規定する「監督技術者」と「主任技術者」があります。監理技術者と主任技術者ともに工事現場における専任の要件として、公共性のある施設もしくは工作物又は多数の者が利用する施設、工作物に関する重要な建設工事で、請負金額が2,500万円(建築一式の場合は5,000万円)以上で必要となります。また、建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者であり、公共工事における元請の専任技術者については、3ヶ月以上の雇用関係が必要とされています。
①監理技術者について
職務内容
以下のような主任技術者の職務に加えて、一定規模以上の建設工事の施工にあたり、下請人を適切に指導、監督するという総合的な機能を果たし、主任技術者のように直接工事に密接に関与して細かな指示を与えるとともに、さらに工事規模が大きくなることによって複雑化する工事管理と建設業全体の健全な発展に寄与する役割も期待される。
建設業法における技術者制度の概要
元請負工事における下請合計金額:3,000万円以上(建築一式工事は4,500万円以上)
資格要件1:一級国家資格者(1級施工管理技士、1級建築士、技術士)
資格要件2:指定7業種は除く実務経験者(主任技術者として要件を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者)
②主任技術者について
職務内容
・建設工事の施工にあたり、その施工計画を作成し、具体的な工事の工程管理や工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理を行う。
・工事の施工に伴う公衆災害、労働災害等の発生を防止するための安全管理、労務管理も行う。
建設業法における技術者制度の概要
元請負工事における下請合計金額:3,000万円未満(建築一式工事は4,500万円未満)
資格要件1:一級国家資格者(1級施工管理技士、1級建築士、技術士)
資格要件2:二級国家資格者(2級施工管理技士等)
資格要件3:実務経験者(指定学科の大学卒業後3年以上の実務経験、指定学科の高校卒業後5年以上の実務経験、10年以上の実務経験)
解体工事に関する資格
①1級建設機械施工技士(日本建設機械施工協会)
②2級建設機械施工技士第1種~第6種(日本建設機械施工協会)
③1級土木施工管理技士(全国建設研修センター)
④2級土木施工管理技士 土木、薬液注入(全国建設研修センター)
⑤1級建築施工管理技士(建設業振興基金)
⑥2級建築施 管理技士 躯体(建設業振興基金)
⑦技術士 建設、総合技術監理(建設)(日本技術士会)
⑧技能士 とび1級、2級(中央職業能力開発協会(都道府県職業能力開発協会))
⑨解体工事施工技士(全国解体工事業団体連合会)
解体工事施工技士の現場での主な役割は、その解体工事の現場監督や技術管理者の業務を統括することです。「解体工事施工技士」という資格は、現場での作業に必要不可欠な解体工事の施行、管理の知識を証明します。また、一般的な建設工事は、500万円未満の範囲であれば特に許可なく施工工事をすることが可能です。しかし、解体工事の場合は500万円未満の小規模なものであっても、解体工事業者の登録をする必要があります。その登録には、技術管理者として解体工事施工技士の存在が必須となっており、工事の現場に主任技術者を置くことも必須となっていますが、この主任技術者の要件は解体工事施工技士の資格者が満たすことができます。日本における建築物の耐用年数は一般的に30~50年といわれています。現在、高度経済成長期以降に建てられた建築物の多くが更新期となっており、今後20年程は解体工事が増加すると見込まれています。平成28年には建設業法の改正により、「解体工事業」が新設されました。同時に技術者制度も整備され、解体工事業界の重要性が高まっています。