
解体工事における足場設置の基準と注意点
解体工事では、安全な作業環境を確保するために適切な足場の設置が不可欠です。足場の設置には、労働安全衛生法や建設業法などの規定があり、これに従わないと重大な事故につながる可能性があります。今回は、解体工事における足場設置の基準と注意点についてご紹介します。
・解体工事において足場設置は重要
なぜ解体工事において足場設置は重要なのでしょうか。それは解体工事における足場の事故やトラブルを未然に防ぐためであり、足場の事故やトラブルには、以下のような問題点があります。
①足場の崩壊
設置不良や過積載、支柱の不安定さが原因で足場が倒壊する事故が発生することがあります。特に強風や地盤の沈下により、足場の安全性が損なわれるケースが多いです。
②墜落事故
作業員が足場から転落する事故が頻発しています。適切な手すりや安全帯の使用が不十分な場合や、滑りやすい足場板が原因となることがあります。
③落下物による事故
足場上の工具や資材が落下し、作業員や通行人に危険を及ぼすことがあります。
これらの問題を防ぐためには適切な施工管理と安全対策が不可欠です。
・国が定める安全対策-足場の設置基準-
解体工事の安全対策は法律や規制に基づいて厳格に定められています。国が定める安全対策として、解体業者の労働環境や労働条件の改善を促す内容が、①労働安全衛生法・②労働安全衛生規則・③建設業法によって定められています。
①労働安全衛生法
職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成する目的で制定された法律です。その手段として、「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」・「責任体制の明確化」・「自主的活動の促進の措置」など総合的、計画的な安全衛生対策を推進するとしています。
解体業者に対して快適な職場環境を形成すること、労働条件の改善を促しており、それが作業員の安全と健康を担保することにつながるとされています。
労働安全衛生法では、足場設置に関しても詳細な規定が存在します。
■高さ2m以上の作業には足場を設置
→作業床の高さが2m以上になる場合は、足場を設け安全な作業環境を確保する必要があります。
■手すりや落下防止措置の義務化
→足場には手すり、中さん(腰板)、踊り場を設置し、墜落防止措置を施す必要があります。
■適切な積載荷重の確保
→足場の積載荷重を考慮し、使用する資材や作業者の重量に耐えられるように設計します。
②労働安全衛生規則
労働者の安全と健康を確保し、快適な作業環境を作り出すための規則です。厚生労働省が労働安全衛生法に基づき制定しました。
作業員が安心して働けるよう、安全かつ衛生的な環境づくりを進めることが目的とされています。
労働安全衛生規則では、具体的な足場の設置方法が定められています。
■支柱の間隔は1.85m以内
→単管足場の建地間隔は、桁行方向(長手方向)を1.85m以下、梁間方向(巾方向)を1.5m以下と定められています。
■作業床の幅は40cm以上
→足場の作業床の幅は40cm以上と定められていますが、床材と建地との隙間を12cm未満にすることが必要です。
■足場板の隙間は3cm以下
→足場の隙間を狭くすることで、作業中に部品が落下しにくくしたり、踏み外しの防止にもつながります。
③建設業法
建設業法は、建設業を営む業者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することを目的にされた法律です。許可をもたない業者が解体工事を行うことは違法です。
建設業法では、安全管理や施工計画の適正化が求められています。
■施工計画書の作成
→解体工事では、足場の設置を含む施工計画書を作成し、適切な管理を行うことが義務付けられています。
■有資格者による指導・監督
→足場の設置や点検は、足場の組立て等作業主任者の資格を持つ者が行う必要があります。
これらの基準を守ることで安全な足場を設置できます。
・令和6年4月1日以降の労働安全衛生法改正に伴う法規制
令和6年4月1日の労働安全衛生法改正により、幅が1m以上の箇所において足場を使用する際は、原則本足場を使用し、一側足場を使用できなくなりました。本足場とは、建物の外側に独立して設置される足場のことで、一側足場とは、建物の壁面に沿って片側のみで支えられる足場のことです。
本足場(わく組足場以外)の使用に当たっては、特に「足場用墜落防止設備」としての手すり等及び中さん等の設置、物体の落下による危険を防止するための幅木等の設備の設置が重要となります。
また、この労働安全衛生法改正により、一側足場を使用することができるのは、原則として幅が1m未満の箇所に限られるようになりました。一側足場の使用にあたっては、法律上では足場で規定されている「足場用墜落防止設備」の設置義務はありませんが、高さ2m以上の端部においては、少なくとも手すり等の墜落防止措置が必要となります。また、法的義務はありませんが、可能な限り、中さん、巾木等の設置に努めることが推奨されます。
・足場の種類と特徴
解体工事では、さまざまな種類の足場が使用されます。用途に応じた適切な足場を選ぶことが安全性向上につながります。それでは足場の種類と特徴について以下でみていきましょう。
①単管足場
単管足場は、鉄パイプとクランプを使用して組み立てられる足場で、その柔軟性から狭い場所でも設置可能です。小規模な解体工事、狭い場所での作業に適しています。その反面、強度が低く、大規模解体工事には不向きです。
②枠組足場
枠組足場は、銅管を門型に溶かした枠に基本部材を組み合わせて構成された足場で、強度が高く大規模な解体工事や高所作業に適しています。高い安全性と耐久性力をもちますが、その分設置に時間がかかりコストも高くなります。
③くさび緊結式足場
くさび緊結式足場は、くさびによってパーツを固定し、組立てや解体が容易な足場で、高層建築の解体工事に適しています。組立てや解体が迅速で、コストパフォーマンスが高いですが、重量があるため運搬が大変です。
④吊り足場
吊り足場は、上部から吊り下げて設置する足場で、橋梁や高所の特殊な解体工事で使用されます。地上に足場を設置できない場所でも使用可能ですが、設置が難しくコストも高くなります。
・足場設置時の注意点
足場を安全に設置するためには、いくつかの注意点を抑える必要があります。
①地盤の安定性
足場を設置する場所の地盤が不安定だと、足場が崩壊するリスクがあります。そのため、軟弱地盤では、敷板や銅製ベースを使用して安定させます。またでこぼこがある場合は水平調整を行います。
②強風や天候への対策
解体工事中は、風や雨などの影響を受けやすいため、足場の安全性を高めるための対策が必要です。落下物を防ぐために養生シートや防護ネットを設置する、風速10m/sを超える強風時は足場上での作業を中止すること等で安全性を高めます。
③足場の点検と維持管理
足場は設置後も定期的に点検し、安全性を確保することが重要です。そのため、毎日作業開始前に接続部の緩み、支柱の歪みなどを点検することが求められます。その他にも長期間使用する場合は、1週間に1回以上の定期点検を行う、足場に影響を与える強風・地震等の自然災害後は異常がないか安全確認を行うことも重要です。
・最後に
解体工事における足場設置は、安全性を確保するために不可欠な作業です。労働安全衛生法・労働安全衛生規則・建設業法に基づく基準を守り、適切な施工計画と点検を行うことで、事故を防ぐことができます。また、作業環境に適した足場を選び、気象条件や作業員の安全管理にも十分配慮することが重要です。
・株式会社エコ・テックの解体工事について
株式会社エコ・テックでは、家屋、建物の事前調査から解体計画の作成だけでなく、解体工事の専門家として様々なアドバイスを行っています。
全国(東京・名古屋・大阪・岡山・福岡等)で、無料相談・無料見積もりを実施しておりますので解体工事に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください
参考URL
・足場に関する労働安全衛生法上の規定について | 滋賀労働局・労働基準監督署
(https://jsite.mhlw.go.jp/shiga-roudoukyoku/content/contents/001495778.pdf)